第03話 実家に戻ったのでまずはお掃除でもしましょう、と思ったのですが
これまでダズと暮らしていたお屋敷から手ぶらで実家に戻った私を、父はなにも言わずに迎えてくれました。
その日は疲れていたこともありかつての自室で休ませてもらったのですが、さすがにこれ以上はなんの説明もしないわけにはいきません。
翌朝、私は忙しい身である父にわざわざ時間を作っていただき、そこでダズの方から婚約破棄をされたことと、彼には既に親しい間柄の伯爵令嬢のお相手がいることを伝えました。
話を聞き終えた父はただ一言、「慰謝料の方はどうなっている?」とだけ尋ねてきましたが、私がきちんと彼に請求する旨を伝えると「そうか、ならいい」とそれっきり沈黙してしまいました。
そんなわけで、手持ちぶさたになってしまった私は室内の掃除でもしようとホウキを手に取ったところ、父に静止されました。
「メリエッダ、なにをしようとしている? 掃除なら使用人がいるじゃないか」
「いえ、今日からはまたこの家でしばらくお節介にならせていただくのですから、私も働かないといけません。商会の仕事は邪魔にならない程度のお手伝いがやっとですが、お掃除でしたらダズ様のところで毎日やっていましたからお役に立てると思って」
「毎日だと? レイドリー男爵には常勤のメイドを数名雇えるだけの金を渡していたはずだぞ」
「ええ確かにメイド・オブ・オール・ワークの方なら一名おりましたよ。ただ彼女一人で屋敷中の雑務をさせるのは不憫に思ったので、私も一緒にお仕事していたんです」
「なんだそれは。わたしはお前が向こうのお屋敷でも苦労をさせないために、わざわざ余分に金を出していたんだぞ。まさかレイドリー男爵はその金を別に使っていたのではないだろうな?」
言われてみれば、当初レイドリー家のお屋敷を訪れた際にはなかった調度品などがある日を堺に突然増えていたようにも思えます。
また、外で食事を楽しまれる機会も多く、料理の手間が省けて助かるとあの使用人の方も言っていました。
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