第28話
◆エリカside
私は目の前で起きた出来事が信じられなかった。
らしくもなく、
落ち着け、話を聞け、これらを何度言っても無駄だった。
確かに途中で、泥は直接触れなければ大丈夫だと言った私も悪いかもしれないが、私を好きだと言うなら少しくらい言う事を聞いてくれても良いのではないだろうか。
しかも
それどころか、一応私のパートナーを言うだけはあって、私が初めて
…………と、そんな風に思ってる時期が私にもありました。
改築が大詰めになった時、一人の客が来たのだ。招かれざる客が。
その客は私の
類は友を呼ぶ、一瞬そんな考えが頭を過るが
もしや、
初めて生き返った時に匹敵するほど混乱してる私は、頭を抱えた。
もう、訳が分からない。
◆ルーベンside
「あれ? あの人、リコリスって言ったよな」
エリカの言葉に舞い上がり進めたリフォームが終わった後、他の事を考える余裕ができた俺は愉快なご近所さんの名前を思い返す。
よくよく考えると容姿もゲームの【リコリス】そのままだった。日本人離れした髪や瞳もアニメの実写のような安っぽい色ではなく、ナチュラルな美しさを誇っていた。もちろん、エリカの方が何百倍も美しいが。
〔……やっと気付いたの?〕
「っ!?」
もしや、俺が内心でリコリスの容姿を褒めたことがバレたのか!?
会話は大歓迎だし多少のトラブルは人間関係を楽しむスパイスになると思うが、楽しめる部分とそうでない部分がある。
今回のは間違いなく楽しめないほうだ。俺は慌ててエリカに弁明を開始する。
「エリカ!? ち、違うんだ、これは浮気じゃなくてだな……」
〔何の話よ、本当に私の話を聞かないわね。リコリスのことよ〕
ピシャリ、と話を切られて冷静になる。
あっ、リコリスの事か。後ろめたい気持ちがあるせいか、突っ走ってしまった。
でも、どういうことなのか。俺は来るとしたらリコリスではなく、ユーザーである『ゆるふわ』が来ると思っていた。
なのに彼女はリコリスと名乗った挙げ句、『ゆるふわ』を知らないと言い切ったのだ。もしやボスは特別扱いでキャラクターがそのまま出てくるのか?
それとも逆に俺が特別なのか?
「訳が分からない」
〔やっと私の気持ちが理解できたようね〕
混乱する俺は、慈悲深い
それはそうと、エリカの気持ちとは? 俺ほどエリカを理解している人間(?)もいない筈なのに何の事か分からん。
「女神エリカよ。どうか無知蒙昧たる、この身に教えを授けては頂けないでしょうか」
〔苦しゅうないわ、良きに計らってあげる〕
ふふんっ、と得意気なエリカの声が聞こえる。稀に出る、こういう年相応なところは普段と違った可愛らしさがあって素晴らしい。
普段は普段で可愛く美しいのだが色々な面を出してくれると、それだけ心を許してもらえてると思えるのし、新しい面を知れた新鮮な喜びもあるのでどんどん出してもらいたい所存だ。あとエリカニウムも摂取できる。
〔アンタ達は知らないだろうけど、条件を満たした時に私達『能力』は『
えっ!? エリカって俺を乗っ取れるの?
なら俺が死ぬ時に乗っ取ってもらえばエリカだけは助かるのか、それって最高のシステムじゃん。
そう思うも、条件とやらが分からない事には何とも言えない。というか前も思ったけど『いと』って何?
〔そうでもしないと『能力』は力を使われるだけの奴隷になっちゃうから当然よね。ついでに条件については詳しく言えないわ!〕
なるほど、まぁエリカにはエリカの事情があるだろうし、言えない事についてはスルーしよう。
それより伝えなきゃいけないことは───
「俺が死んだら乗っ取ってくれ」
〔なんで、そうなるのよ!?〕
あと『いと』って何?
そう、ついでに聞きたかったが後にしよう。エリカへの説明が先だ。せっかくエリカが求めてくれたからな。
「死んだら乗っ取ってくれって言ったのは、そうすればエリカだけは助かるし、俺もエリカの一部となれるからだ」
〔ああ、いつもの
「エリカが俺にする事なら怖いと思わないし、エリカの為になら何でもするよ。それも愛の『証明』の一つだと思ってるからな」
これは本心だ。そこに恐怖も絶望も存在せず、むしろエリカが生きてくれるなら希望すら得られる。
自己犠牲などという高尚な精神のつもりはない。これは徹頭徹尾、俺がそうしたいからであり自己満足を追求した結果に得た答えである。もちろん二人とも生きているのが一番だけどな。
俺が最近辿り着いた答えを言うとエリカに思わぬ言葉を掛けられた。
〔この大バカ! 『証明』できなかったら死ねって言いたいのよ。私が最強だって証明してくれるんでしょ? 言った事は守りなさいよね〕
俺は何度もエリカに誓っていたのだ、最強の『証明』を。それなのに自身の力不足を理由に両立を諦め、エリカに『裏切り』を責められる事もない死という安易な逃げ道へ走るつもりだった。
うっかり死んだ時の保険を掛けるという意味合いも勿論あったが、それでも死ぬまで両立を目指すべきだったのだ。どうやら俺の視野は余程狭くなっていたらしい。
「……エリカには敵わないな」
〔当然でしょ? なんたって私は最強らしいから〕
まさに、その通りだ。
そして現状、エリカの最強を『証明』できるのは俺だけだ。ならば証明しよう、この世の全てが認めるまで。
俺がエリカの偉大さに改めて感服していると、扉から盛大な爆発音が聞こえてくる。きっと、リコリスが戻ってきたのだろう。
〔来たみたいよ、私の最強に異を唱える敵が。それで、どうするの?〕
まさか、逃げるの? 言外にそう告げるような、そして俺に発破をかけるような挑発を言うエリカ。
無論、そんな事はしない。立て籠もりも奇襲も一切無しだ。正面から打ち破ってやる。
「決まってる、『証明』しに行くんだ。ついでに
〔そっ、なら行ってらっしゃい。帰ってきたら話の続きをしてあげる〕
「楽しみにしてる。エリカが待っててくれるなら、俺は何だって出来るから」
扉の
「俺がエリカの最強を『証明』してやる」
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