第13話
◆ルーベンside
ピチュン、ピチュン。
部屋にモールとして飾った
寝ぼけ眼で辺りを見渡せば、そこには大きめのベッド、シーツに残る赤い染み、手の中には最愛の相手(の持ち物)。
「なるほど、これが朝チュンか」
〔違う!〕
おおっ、エリカの夢を見て、目覚めたらエリカ(の持ち物)と触れ合っていて、さらにエリカの声が聞けるとは今日は良い一日になりそうだ。
良イ機嫌のまま部屋を見渡せば、多少変色していても昨日とあまり変らない内装だった。うむ、
「おはようエリカ、いい朝だね」
朝から声を掛けてくれて、ありがとう。そんな気持ちも込めてエリカに挨拶をする。
本来なら直接言いたいところだが、昨日確認した通りエリカは照れ屋だ。そんな事をしても困らせてしまうだけだろう。
ならば、エリカが俺に慣れてくれるまで待つだけさ。これも甲斐性だろう。だから、例のごとく俺の呼び掛けに無反応でも悲しくなんてない(涙)。
「あっ、しまった」
目から零れる汗を拭っていると昨日の自分の愚かさに気付く。
偶然、今回は大丈夫だったが血の匂いに引き寄せられたモンスターに部屋を荒らされる恐れがあった。俺の努力の結晶を、だ。
いくら体にダメージを受けないとは言え、気を抜いて可能性そのものを考えてなかったのは不味い、反省しよう。
今回荒らされなかった理由は、デパートのそこら中で血の匂いが充満していて特に気にされなかったとかだろうか? 石像だのゾンビだのに嗅覚が備わっているのかは疑問だが。
せめて、次からはカーテンを閉めて扉に簡易バリケードでも作るか。
〔……ルーベン、何処から何処まで見たのか答えなさい〕
今後の対策を考えていると、エリカから質問された。
今までの俺を突き放すような冷たい声音とは違い、決して逃げることは許さないと言外に伝わってくる緊張と威圧を孕んだ声で。
ここで言葉を間違えれば、俺達の関係は崩壊する。そんな予感が過ぎるほどエリカは強い口調だった。
一瞬、嫉妬心から昨日のクソアマの裸をどこまで見たのかを聞きたいのかと思ったが、それなら昨日の時点でエリカも把握しているだろう。
万が一、嫉妬心からの質問だったら俺は萌え死んでしまうがな。
まぁ、何かの事情で把握していなかったにしろ、薬局に行った段階で俺は『裏切り』の誤解を解くため、やることを事前に説明していた。お咎めがあるのなら、その時に受けてなければおかしい。
故に、これはあり得ない。
ならば、エリカが他に気にするような事がある筈だ。けれど分からない、もしかして【
思考が迷走し始めた時、ある可能性に思い至る。
いや、むしろ
もうエリカをかなり待たせてしまっている、俺に迷っている時間などなかった。
たとえ馬鹿な事を言ってエリカに怒られるよりも、何も答えられず呆れられる方が嫌だ。その一心で重くなった唇を無理矢理動かす。
「井戸で
俺は寝ている時に見た夢の事を話した。
普通に考えれば、エリカが俺の見た夢を知ってる筈がないので「ふざけるな」と一喝される内容だ。しかし、今の世界は『ふざけてる』内容が実現された世界だ。今回の可能性を完全に否定することは出来ない。
それに俺は自分で言ったではないか、「俺とエリカは一心同体」だと。他の誰が相手でも否定しただろうが、俺とエリカの間柄ならば有り得る。
何故ならエリカが見せたくないと思ったとしても、無意識の内に俺が求めてしまうからだ。俺が知ることの出来ていない
〔やっぱり、そうだったのね〕
俺に、そう
あれだけ求めていたエリカとの初会話は、重苦しい空気のまま幕を閉じた。
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