第3話

 ソシャゲはスタートダッシュが肝心だ。


 それは終末世界となった今でも変わりないだろう。


 限られた食料、減っていく人的資源、失われていく文明。


 故に、候補として思いついたのは、食料確保、外の情報収集、運営メッセージに書かれていた『能力』の確認、エリカに構ってもらう、こんなところだろうか。


 これは非常に悩ましい問題だ。食料確保と情報収集は終末世界モノの創作で一、二を争うほど重要視される。


 軽く理由を述べるとすれば食料は生きていくのに必要不可欠で、情報は死のリスク全般を減らせるからだろうか。多くの場合、信頼できる仲間を探すのも同じくらい重要だったりするが俺には必要ない。と言うかいてはいけない。


 俺が目指す最強の『証明』とは、文字通り最強のの証明だ。他人と一緒に袋叩きで倒したのでは、敵より強かった証明になどならない。


 仲間を集められるのも強さの内だと思う人間も多いだろうが俺にとっては違う。


 何よりも、エリカが嫌がる上に『能力』的にも向いてないだろうしな。だから絶対にやらない。


 話を戻すと、次は『能力』確認の重要性だろうか。『能力』は変わってしまったこの世界、謂わばゲームに侵食された世界を自分が生き抜き、敵を殺す為に必要な力だ。


 自身が出来る事を把握する事は如何なる物事でも重要だ。これをすることにより、無謀な行動に出る可能性が激減し、仮に無理を通さねばならないときも事前に覚悟を決められ、いざという時に普段以上の力を出しやすくなる。


 精神論も混ざっており信頼性に掛けると思われやすいが、この手のモノは意外とバカに出来なかったりする。


 気力がなければ戦えないし、戦えなければ勝ちなどありえないのだから。


 それに、外を見たとき警官がゾンビのモンスターに向けて発砲していたが、あまり効いてる様子はなかった。


 見間違いでなければ皮膚で弾いていた。ゾンビとなり多少強化されてるとは言え、やられ役の定番であり『コグモ』でも最弱クラスの力しか持たないゴブリンが。


 それを考えるに、創作で稀にある設定と同じく現代兵器が通じない可能性が高そうだ。もはや、『能力』確認は急務と言えるかもしれない。『能力』でしかモンスターに抗えないのかも知れないのだから。


 最後に『エリカに構ってもらう』を挙げた理由は簡単だ。


 俺のモチベUp、以上。


 うむ、どれも悩ましい限りである。全て甲乙付け難く、紙一重の差とはこのことだろう。




「……なんてな」




 こんなの悩むまでもない話だった。


 それなのに優柔不断な俺はグダグダと理屈を並べて結論を後回しにしていたのだ。


 まったく、こんな覚悟で終末世界を生きて行こうなど片腹痛い。俺は『孤高の復讐鬼』エリカ・デュラの『能力』使いだ。それに相応しく在らねばならない。


 今度こそ覚悟を決め、言葉にしてみせよう。もう結論の出ている答えを口にするだけだ。覚悟の決まった俺に怖いモノなど何もないのだから。


 俺の答えとは────




「さぁエリカ! 二人の今後について話し合おうじゃないか!」




 『エリカ(13歳)に話し掛ける』だ。

















「やっぱり駄目か……」




 覚悟を決め手から小一時間後、俺はうつむいて消沈していた。


 常に手を変え品を変え呼び掛けてみたが、会話はどころか何の反応もなかった。無念。




「まぁ、しょうがない」




 恐らくエリカが俺に言葉を返さないのは何か理由があるのだろう。


 理由は、も言われぬ事情があるかもしれないし、単に俺への興味がなくて見てないだけかもしれない、もしかしたら俺の声そのものが届いてないのかもしれない。


 何も分からないが、その内分かる時が来るだろう。それまで待つだけだ。




「……よしっ」




 そうと決まれば気持ちを切り替えて、今はやるべき事をやるだけだ。


 俺は頬を叩いて気合を入れ、残った3つの候補を思い出す。

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