バツ3の看取り夫人と呼ばれていますので捨て置いてくださいませ
夢見るライオン/ビーズログ文庫
一、三人目の夫①
ルーベリア国、王都。
大通りを黒
その馬車に一人で乗っているのは、
クロネリアは馬車の小窓から外を
「これが王都なのね。なんて
大通りには
その通りを
多くの家族連れが足を止め、楽しげに品物を選んでいる姿が目に付いた。
「世の中にはこんなに豊かで幸せな暮らしをしている人たちがいるのね……」
男爵令嬢のクロネリアも一応貴族の身分ではあるものの、
社交界も
反対側の窓から
何事だろうと外を見ると、たくさんの花で
沿道で立ち止まった人々が「おめでとう!」と声をかけている。
馬車には真っ白なウエディングドレスを着た女性とタキシード姿の男性が座っていた。
そして幸せそうに沿道からの祝福に手を
ルーベリア国の
「あんな風に……私も結婚できるのだと夢見ていたのに……」
それはすでに
クロネリアはすでに二人の夫を
そしてこれから三度目の夫の
しかしそれは他の
そんなクロネリアに付けられたあだ名は『
これから
ってきたのだ。
*****
クロネリアの父、ローセンブラート
領地を
借金まみれで屋敷すら担保に取られているというのに、夫人を三人も持ち、派手な暮らしはやめられない。すでに
しかし、そんな
年老いて余命
そして、その妻として白羽の矢が立ったのは、父の代理で
クロネリアには当時、同じ田舎に住む
しかし借金を帳消しにする上、多額の
そんな始まりから、なぜか二人の夫を看取ることになり、今度は三度目の看取り結婚に向かう運命となって、今ここにいる。
夢も希望も、もはやクロネリアには残っていなかった。
多額の結納金を目当てに、これからも看取り結婚を続ける運命なのだ。
絶望して
「私にできることなどほとんどないけれど、望んでくださる方がいるのなら
まだ十八だというのに、二人の夫を看取ったせいか達観したようなクロネリアだった。
そして三人目の夫は、なんと王都に住む
田舎の貧乏貴族の娘が一生会うこともないような身分の相手だ。
大喜びの父とは反対に、クロネリアは不安でいっぱいだった。
けれど公爵に
少女の
「私にできるのは、死にゆく人を静かに看取ることだけ……」
ぽつりと
「着きましたよ、お
「ありがとうございます」
クロネリアは礼を言って賃金を渡すと、去っていく馬車を見送ってから目の前の公爵邸を見上げた。
「これが……公爵様のお屋敷……」
それは想像したこともないような広さの屋敷だった。
大きな門の前には門番が二人立っていて、その奥には木々の広がる森のようなものが見えている。その森に
「あの……。今日お訪ねする約束をしております、クロネリア・ローセンブラートと申します。お取り次ぎ願えますか?」
クロネリアは門番の一人に
門番は
「クロネリア様? 公爵様にお
「お一人でございますか? 従者や
二人は
「あ、いえ。従者などいません。馬車は街馬車に乗ってきたので……」
田舎の貧乏貴族のクロネリアにとっては当たり前のことだが、王都に暮らす公爵邸ではありえないことだったらしい。
門番たちはしばし
「こちらの馬車でお屋敷までお進みください」
「あ、ありがとうございます」
信じられないことに、門から屋敷まで別の馬車で連れて行ってくれるらしい。
実際に乗せられてみて、とても歩ける
重いトランクを持って歩いていたら、
実家や今までの看取り相手と比べても、けた違いの大金持ちだった。
森を抜け、広大な庭園と数々の
クロネリアが馬車から降りると、先に
「ようこそスペンサー公爵邸へ、奥様」
みなが口々に言って頭を下げている。
これまでの結婚ではこんな出迎えを受けたことはなく、すっかり
結婚といっても看取り夫人なのだ。
ウエディングドレスを着ているわけでもなく、クロネリアにとっては一番上等のドレスだが、メイドより地味な紺の
ずいぶん
「私はスペンサー家の執事長、ゴードと申します。荷物はお部屋にお持ちしましょう。
一番奥で出迎えてくれた
大邸宅の中は、夢の国かと思うほど
(すごい……。これが公爵という身分の方のお屋敷なのね……)
父から今回の看取り相手は別格だと聞いていたが、それにしても想像以上だった。
廊下には
だが小さな両開きのドアが一つだけの実家と違って、この大邸宅の両開きのドアは延々と続いている。どれほど大きな広間なのか、クロネリアには考えもつかない。
その大広間の奥に謁見の間があるらしい。
クロネリアの実家には、そんな
公爵様ともなると、
前の二つの看取り先は
「どうぞ、クロネリア様」
執事長に通された謁見の間には、二人の人物が待っていた。
左右の大きな窓から日が差し込み、壁には
そして奥の台座に背もたれの高い
領民の謁見でもなく、形だけでも公爵夫人となるクロネリアへの対応なのだろう。
一人は背が高く、
自分とは別世界の人なのだと思わせる
もう一人は耳にかかる長さの
子ども用の
二人とも
「イリス様、クロネリア様をお連れしました」
執事長が告げると、黒髪の男性が低く重厚な声で「うむ。下がってよい」と答えた。
この男性が言葉を発するだけで、ぴりりとした
これまで会った男性貴族の中で一番美しく、そして一番冷たい印象を受けた。
執事長が
(この方は……公爵様……ではないわよね)
まだ看取りが必要な年でもなく、
クロネリアは
「お初にお目にかかります。クロネリア・ローセンブラートでございます」
クロネリアが挨拶して顔を上げると、イリスと呼ばれた黒髪の男性が
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