第2話 恋患い・前編 ②
「……はい、大丈夫です。これは見ても呪われませんよ。ウイルス等の心配もありません。私の眉間の第六チャクラに何の反応もありませんから、どうぞ開いてみてください」
「そ、そう……じゃあ、写真から見ましょうか。これだな……」
マウスをクリックし、ジュンジは写真を開く。緊張するノブオはごくりと固唾をのんだ。
一枚目の写真は、楽しそうな笑顔の、四十代後半くらいの女性たち五人が写っていた。
旅行の記念写真のようで、後ろに三人が立ち、前の二人は少し腰をかがめている。
後列三人の右側の人物、その人の肩に手を置くような形で、緑がかる黒い人影は確かに写っていた。
その他に写真は十枚ほど添付されているが、その全てに人影は写っている。
そして気になるのは、人影は一人の同じ女性のそばに、何らかの形で写っているということだ。
その女性以外に、他に人物がいてもそちらの方には行かずに、確実に一人の、その女性を狙うかのように人影は写っているのだ。
「これは不気味だな……この女性にとり憑く、悪霊ってことか?」
ノブオは、メガネの大きなレンズを上げ下げしながら、写真を眺めている。
「どうでしょうか? 悪霊かどうかまではわかりませんね……ジュンジさん、動画を再生してください」
サノッチに促され、ジュンジは動画を再生する。
夏の遊園地での、カップルのデートの様子を記録したもののようだ。女性は先ほどの写真に写っていた人と同じ人物で、四十代後半くらいの女性である。
どうやら、彼氏が彼女を撮影しているらしい。
メリーゴーランドに乗ったり、ソフトクリームを食べたりと、彼氏目線の楽しげなデート風景が続く。
その後、場面が観覧車に移ったとき、異変は起きた。
「あっ、ここ!! 今、ここに映りましたよね!?」
「え!? どこ? どこだったよ!?」
「本当ですね! ノブオさん、確かに写っていましたよ! ジュンジさん、Replayしてください」
Replay……
観覧車で撮影者の男性と、対面に座り楽しげに会話する女性。その女性のすぐ脇に一瞬、緑黒い人影が現れるのだが……
「おい……この人影、女性の首に手をかけて、絞めようとしてないか!? しかも耳を舐めようとしているよな!?」
ジュンジがいいところで静止した画面を、血走る目で食い入るように見詰めるノブオは声を上げた。
「言われてみれば、首を絞めようとしているようにも見えますけど……いや、さすがに耳を舐めようとはしてないでしょ。きっと、ささやいているんですよ! 何かを彼女に伝えようとして」
ジュンジはノブオの発言をやんわり否定した。そして、サノッチは二人に提案する。
「写真にも動画にも、緑黒い人影は写っている……この人影は同じ者ということでしょうか? 彼女を助けるにしても、これだけではどうすることもできません。どうでしょう? 一度、彼女にはこちらの事務所へ来ていただいて、お話をうかがってみるというのは?」
「そうですね。直接、話してみないとわからないだろうし……いいですよね? ノブオさん」
「おう、そうだな。じゃあジュンジ、メールの返信してくれるか」
はい、はい……と応じつつ、ジュンジはすでに返信を打ち始めていた。
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