爪先の冷える夜ばかり

秋来たり嵩む毛布と綿布団地層に喩ふ私は化石


アスファルト上で枝ごと干せていくナナカマドのごと、世界よ滅べ。


丑三つはハチミツの旬ミルクティー亜麻色にして3回混ぜる

『 眠れない夜の対処法 』


闘牛の憑いた日でした。花も葉も実もワンピースもみんな赤、赤。


サボテンの幽霊を見たみぞれ降る夏の跡地に透明なやつ


立冬に息白くする練習として加湿器の試運転する


加湿器の霧にヴィオラが住んでいることを誰にも教えられない


水槽は置けない代わり加湿器で部屋をブクブク言わせてるんだ


ハンドクリーム塗った手でも持てるモノこそ真に手に入れたモノかも


冬になるほどに透明になる記号摂氏の数字冷やすマイナス

『 マイナス 』


毛布出る。冬には冬のあたたかさ。濃い藍色の夜の色して。


粉砂糖降らせすべてを冬景色に変える魔法の所作として 今


どこからが命であろうみっしりの月色の粒を奥歯で数え


からいのはいのちでしょうか月色の粒を奥歯で数えはりはり

『 卵 』  数の子


年明けの病院やはり混んでいて鍋焼きうどんしみしみと食う


ドロップのごとき湯たんぽ蹴っ飛ばしハッカを舐めたようなツマサキ


ケータイを刃物に見立て胸を刺す。爪先のほうがよほど冷たい。


足元で雪、片栗粉の音で鳴く「春になったらとろみがつく」と


天国か地獄を借景一冬の遺物の雪が河原を埋める

 未だショベルカーが掻いて積むほどある残雪を見て

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