ボロボロの山小屋




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なんというか、怖いけど怖くない?みたいな話です。




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私は26歳のアパレル関係の仕事をしていました。職場の上司とお付き合いをしていると思ったのですが、どうやら不倫だったらしく、いきなり奥さんが出てきて別れさせられ仕事も辞めざるを得なくなりました。百歩譲って別れるのは別に良かったんですけど、仕事辞めなきゃいけなかったのが辛かったです。奥さん、私の勤めてる会社の親会社の重役で、小娘一人くらい窓際部署に飛ばすの全然楽勝って感じで、自主退職に追い込まれました。


憧れの業界だったのに、悔しくて悔しくて、なんかもう全部どうでも良くなって山に行きました。地元に割と高い山があるので、最後に綺麗な朝焼けを見て、睡眠薬飲んで死のうと思ったんです。


元々登山が趣味だったので準備が凄く楽しくて、さあ!死ぬぞ〜っ!って逆にハイになりながら登ったんですが、急に大雨が降ってきて慌てて山小屋に避難しました。人間死ぬ覚悟が出来ても不快なシーンに遭遇するとそれを本能的に避けちゃうみたいですね。雨は全然止まなくて、山小屋はちょっと雨漏りしてるけど出るに出られないから着替えて寝ちゃいました。その夜私を揺らして起こして声を掛けて来た人?が居たんです。




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「いらんもんくれんかね、おいてってくれんかね」


って、とても低いくぐもった声でした。でも何故かそれが女だと思ったんです。女の勘ですかね。私は寝起きがかなり悪いので全然目を開けられないまま「置いてかれたのは私だよ、あんたも女ならこの悔しさわかるでしょ。〇〇も××も(上司と奥さんの名前です)私をいらないもの扱いして。本当にいらないのはアイツらだよ!バカ!死んじまえ!」ってぶつぶつ言って、私はまた眠りに付きました。


意識が落ちる直前に「キーッ!キャキャキャ!」って猿が笑うみたいな声がしました。




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翌朝起きてみると山小屋の雨漏りはもっとひどくなっていて、小屋の中はぐしょぐしょになっていました。でも、わたしとその周りだけは濡れてなかったんです。ちょうど上から大きな猿が覆い被さったみたいな形に床が渇いていて不思議でした。なんだか冷静になって、すごく怖くなってしまって、急いで山を降りてホテルに帰って、そのまま何日か延泊しました。





前の職場の同僚から聞いたんですけど、上司と奥さん、旅行に行ってそれきり行方不明らしいんです。連れてかれたんですかね。






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