第28話 唯一親友と呼べる男
今日からいよいよ高校生活が始まる。
俺は新たな制服に着替え、洗面所に立つ。
心を高鳴らせながら、《鑑定眼》で自分のステータスを確認した。
【幸城 真乙】
職業:
レベル:20
HP(体力):165 /165
MP(魔力):100/100
ATK(攻撃力):260
VIT(防御力):750
AGI(敏捷力):90
DEX(命中力):100
INT(知力): 80
CHA(魅力):20
SBP: 0
スキル
《鉄壁Lv.10》《鑑定眼Lv.7》《不屈の闘志Lv.9》《毒耐性Lv.6》《剣術Lv.6》《盾術Lv.8》《隠蔽Lv.7》《不屈の精神Lv.5》《シールドアタックLv.7》《狡猾Lv.4》《統率Lv.5》《隠密Lv.3》《索敵Lv.2》
《アイテムボックス》
魔法習得
《
《
《
《
ユニークスキル
《
称号:
うん、ようやくレベル20になったぞ。
まぁ技能スキル《鉄壁》がカンストしているから、事実上はとっくの前に超えているんだけどね。
香帆さんとパーティを組むようになり、「中界層」で頑張っていることもあってか、《索敵》スキルを習得した。
そしてレベル20になったことで新しい魔法 《
この魔法は任意の場所に炎の壁を召喚し、防御しながら攻撃を与える効果がある。
また範囲内に居る敵を閉じ込めるたり、足止めにも使うことが可能だ。
ちなみに新たに得た称号、『
美桜の話では補正が付く称号は効果継続されるため、そのまま残されていることが多いらしい。
「――ここまで頑張ってきたんだ。今日から二度目の青春をリベンジしてやるぞ!」
俺は意気込み、黄昏高校へと向かった。
昨日、入学式が終わり、クラスメイトと顔合わせをしている。
勿論、前周と変わらない面々だった。
俺が片思いしている美少女『野咲 杏奈』さんがいて、思わずテンションが上がってしまう。
本当は声を掛けたかったけど、俺の母親も同席していたので声を掛けづらく、その日は控えるようにした。
そういえば、彼女の両親らしき姿は見られなかった気がする。
さらに俺の嫌いな『渡瀬 玲矢』もいて、幼馴染ポジをいいことに相変わらず野咲さんと親し気に話している様子を見て少しイラっとした。
まぁ今に見てろよってやつだ……。
その野咲さんも俺と何度か目が合うも、特に変わった反応は見られない。
てっきり中三の夏休みで出会った件は忘れていると思った。
いや違う。
どうやら俺だと気づいてないようだ。
無理もない。
あの頃、まだ100キロのデブちんだったからな。
お互い名前を名乗り合ったとはいえ、今の痩せマッチョの俺とまさか同一人物とは想像もつくまい。
自分から「俺でーす!」と言うのも恥ずかしいので、彼女が気づくまで黙っておくことにした。
「――幸城君、俺らとダベらね?」
教室に入ると、早速クラスメイトの男子に声を掛けられる。
すらりとした高身長の短髪で如何にもスポーツ万能そうな陽キャだ。
こいつのことはよく覚えている。
『
だから女子にも非常にモテていた記憶がある。
その大野の隣に『
制服をラフに着こなした一見不良っぽく見える、前髪が長いクール系のイケメン男。
こいつもよく覚えているぞ。
一見、頭悪そうだけど常に成績がトップで運動もそつなくこなせるから、大野と同様にモテまくっていたんだ。
そんな学年一位二位のトップが自ら、この俺に声を掛けてくるとは……。
前周じゃ歯牙にもかけられなかったってのに……複雑な気分だ。
はっきり言って、俺はこいつらのことが嫌いだ。
別に何かされたわけじゃない。てか完全に空気扱いだったからな。
俺が嫌う理由は、こいつらがあの女とよくつるんでいたからだ。
――『
サイドポニーテルが似合う今時風の女子。
スレンダーな体形で、顔もそこそこ可愛くて割とイケている。
秋月は、後に野咲さんを虐めるようになる言わば「主犯格」の女だ。
中学から大野と工藤とも仲が良く他の女子達と結託して、野咲さんを虐めていた。
理由は秋月が彼女の幼馴染である『渡瀬 玲矢』のことが、ずっと好きで嫉妬からではないだろうかという噂だった。
その秋月も俺の方を見つめながら愛想よく笑っている。
この女も前周じゃ相手にすらしなかったのにな……。
別に俺は誘いに乗っても構わないと考えた。
こいつらと仲良くなって、内側から野咲さんの虐めを阻止するという方法もある。
だがここで《狡猾Lv.4》が働いたのか、
仮に奴らと友達になって、無事に野咲さんの虐めを回避したとしても、俺の功績は表沙汰になることは永久にないだろう。
そして、幼馴染という最強属性と補正を持つ、『渡瀬』だけが美味しい思いをする。
前周と同様、Z世代のラブコメ主人公ばりに何も努力することもなく。
なら俺が
俺の目標は、あくまで二度目の青春をリベンジすること!
無能な渡瀬から彼女を奪い、恋人として付き合うことにあるんだ。
とはいえ、まだ何もしてない大野と工藤を邪険にするのも何か間違っている。
「……ごめん。ちょっと先約があってね。あとでいい?」
「ああ、そうか。わかったよ、んじゃまた~」
「またな~」
大野と工藤は俺から離れて行く。
そのまま、秋月達と合流し楽しそうに会話を弾ませていた。
相変わらずのリア充グループだ。
俺は軽く溜息を吐き、窓際の方に視線を向ける。
野咲さん以外にも、気になる奴がいたからだ。
そいつは窓際の席で、独りぽつんと外を眺めていた。
かなり細身で、肩にかかるほどの長い髪をサイドで分けた男子。
どこか知性的で涼しげな容姿は一見して悪くなさそうだが、その全身からは『負』のオーラを漲らせ漂わせている。
誰にも馴染めない孤高の存在。
俗にいう「陰キャぼっち」だ。
しかし、そいつは前周の高校生活で唯一、俺が親友と呼べた男。
――『
通称『ヤッス』。
ヤッスは見た目の割にはヘイトの塊のような男で、大野や工藤といった陽キャグループをとにかく毛嫌いしていた。
いつもああして独りでいることが多かったんだ。
当時の俺も独りだったので、ヤッスから声を掛けてくれてそこから仲良くなった。
はっきり言ってマニアックな変態だけど、気のいい奴で常に一緒にいたっけ。
だけど俺が大学に進学して上京してから、ヤッスは変わった。
自宅で引き籠るようになり、30歳まで引きニート生活だ。
そして俺がタイムリープする頃には、生活支援職員の訪問を受けて無理矢理連れ出されそうなっていると、ヤッス本人からヘルプメールが届いていた。
今思えば、ヤッスは社畜の俺よりも悲惨な人生を送っていたと思う。
だから俺は野咲さんだけじゃなく、親友の人生も変えてあげたい。
俺はヤッスに近づいた。
「よぉ、ヤッ……いや安永くん。俺と友達になってくれないか?」
そうストレートに言ってみる。
いきなり声を掛けられたヤッスは双眸を見開き、一瞬だけ驚いた表情を浮かべた。
「……この僕がキミのような爽やかリア充そうな奴と? ハッ、冗談がキツいねぇ。悪いがキミと友達契約する気なんてないよ」
出たぞ、ヤッスのヘイト発言。
しかも人見知りの癖に厨二病なんだ。
俺のオタクも、ヤッスから影響を受けていることが多い。
「なら俺の姉ちゃんを紹介してやる。この学校の二年なんだ。美人でおっぱい大きいぞ」
「――なんだって?」
ヤッスはぴくりと眉を吊り上げ、やたら食いついてきた。
こいつは未来でも姉ちゃんにぞっこんで、自称『おっぱいソムリエ』だと豪語している。
俺はこっそりとスマホで美桜の画像を見せた。
「な、なんだ……この尊い女神は!? バスト90、いや93のGカップ。大きさ形は素より張りと弾力性に優れているとみたぞ! なんて素晴らしんだ、キミのお姉さんは!」
なんで制服姿の画像だけでそこまでわかるんだよ?
改めてやべぇな、こいつ……。
「言っとくけど、俺の友達として紹介するだけだからな。姉ちゃん、男嫌いだから付き合うとかは無理ゲーだぞ」
「わかっているさ。僕とて身の程くらいわきまえているつもりだ。無謀な陽キャのリア充共とは違うのだよ――いいだろう、確か幸城君と言ったね。僕と契約しようではないか!」
素直に友達になろうって言えよ。
俺はヤッスと固い握手を交わした。
「よろしくな、安永君……いや、ヤッスと呼ばせてもらうぜ。俺のことは『ユッキ』でいいからな」
未来でも互いにそう呼び合っていたからな。
あの頃と形は違うけど、こうして再びヤッスと友達になることができた。
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