第25話 暗殺者JKとダンジョン探索
仲間を探していた俺は、美桜の進めで友人である異世界の“帰還者”、「水越 香帆」というヤンキー系金髪JKとパーティを組むことになった。
前周のトラウマもあり、この手のギャルとの交流は避けるようにしていたが、ああ見ても香帆は美桜と組んでいたとされる勇者パーティのメンバーだ。
あの姉が信頼し背中を預けていたほどの凄腕の
ならば相当な実力者だろうと思い、俺からも胸を借りる思いでお願いした。
週末、『
「さっきからなぁに、あたしのこと見てるの、マオッチ?」
「……すみません、香帆さん。俺ぇ、間近で『エルフ』を見たの初めてで……」
「敬語は不要って言ったよぉ。あたしは『転生者』だからね。冒険者モードになると、この姿になっちゃうの。こう見ても貴族出の『ハイエルフ』なんだから。コスプレじゃないよん」
そう、香帆はエルフ族の姿をしていた。
尖端が尖った長い両耳、カラコンのような空色の瞳だ。
色白と金髪も相俟って、特にダンジョンでは違和感なく似合っている。
そして深紅色のフード付きマントを身に纏い、漆黒の光沢を発し体の曲線美に沿って密着させた
如何にも動きやすさを意識した、
「アゼイリア工房の
「……ああ天堂ね。あたしらとは違う『
なんだろう……香帆さんって人の好き嫌いが激しいのだろうか?
言動はとても軽そうなのに、どこか姉ちゃんと通ずるモノがある。
「ところでマオッチ、普段の天堂を知ってるの? 黄昏高に行ったことある?」
「い、いや……姉ちゃんから聞いてね、ハハハ。その姿の香帆さんも異世界風で呼んだほうがいい?」
「香帆でいいよぉ。向こうの名前だと『ファロスリエン(狩人の乙女)』だけど、なんか長ったらしいでしょ? 前のパーティからは『リエン』って略して呼ばれていたけどね……ここは現実世界だし」
「じゃあ、香帆さんで……」
俺は言いながら密かに《鑑定眼》を発動し、彼女のステータスを確認する
【水越 香帆】
職業:暗殺者
レベル:32
称号:
レベル32?
勇者パーティのメンバーだった割には低すぎないか?
いや違う……カンストした《偽装》スキルを駆使して、あえてそう見せているんだ。
実際は美桜並みの高レベルに違いない。
それから俺と香帆は、度々に出現するモンスターを斃しながら下層へと進んでいく。
――21階、「中界層」に辿り着いた。
ごつごつした岩壁だらけの洞窟だった「初界層」と異なり、足場から天井に至るまで石のブロックで整備されている奇妙な空間だ。
所々に大きな石柱で地下を支えているようであり、壁には親切に蝋燭が設置され進路方向を灯している。
「……随分と清潔なところだな? 誰かが整備しているの?」
「そういう風に造って見せているんだよぉ。『
このメイン・ダンジョンは生きていると聞いているけど、ガチなのだと改めて思った。
少し進むと、早速モンスターが5匹ほど現れた。
大蜥蜴の姿をした二足歩行で移動する亜種族。
手には刀剣や槍と円型盾を装備した戦士風の装い。
俺にはもう、どういうモンスターなのか既にわかっているけど念のため鑑定してみる。
ATK(攻撃力):148
VIT(防御力):185
AGI(敏捷力):85
DEX(命中力):75
INT(知力):25
装備
・
・
「レベル25のリザードマンが5匹ね。まだ21階なのに……ふ~ん、どうやらマオッチは『
香帆も自分の《鑑定眼》で覗いた感想を呟いた。
思い当たる節がある俺は戸惑うことなく首肯する。
「うん。なんかそれっぽいんだよな……俺ってそういう体質なのかな?」
「さぁねぇ。どうする? あたしがやる?」
「いや、せっかくのパーティなんだし、
「わかった、いいよん」
許可を得て、俺はじりじりと距離と詰めてくる、5匹のリザードマン達と対峙した。
「出し惜しみはなしだ――《
片腕を翳し、ユニークスキルを発動する。
掌から淡く輝く幾何学模様が描かれた「魔法陣の盾」を出現させた。
よし早速、覚えた魔法を使ってみるか。
【――迸る力の解放、燃え滾る脈動の熱火、《
まずは補助強化魔法で一時的に肉体を強化する。
【――我を導く情熱となり燃焼せよ、《
さらに瞬時に移動速度を向上させ、そのままリザードマン達に突撃を開始した。
それはただ闇雲に突っ込むためではない。
あくまで先制攻撃目的だ。
「拡大しろ、《
俺は高速に移動しながら、前方を埋め尽くす程に《
思わぬ攻撃にリザードマン達は一斉に驚愕し戦慄した。
唯一の逃げ場所である後方に退こうとするが――もう遅い。
俺は雪崩込む勢いで敵との距離を詰め、《
リザードマン達は圧倒的な巨大な壁によって圧し潰される形で地面へと倒れ伏せる。
予め《
最後に
モンスターの殲滅を確認した俺は《
彼女は「何事?」と言わんばかりに口をポカーンと開けて唖然としている。
俺……なんかやらかしたのかな?
まぁいいや。
「地面に落ちている『
「……いや、マオッチが斃したんだから全部あげるよ。美桜からも聞いていたけど本当、凄いねぇ。レベル15とは思えない規格外だわぁ」
「そ、そう? まぁ鍛えているからね……けど仲間がいると思うと、安心して力が発揮できるよ」
「まぁねぇ。あたしがマオッチの背中を守ってあげるから安心してね――」
香帆は軽い口調で言いながら懐から何かを取り出し、高速の動きで俺に向けて投げつけた。
いや、正確には俺の背後にいた何かだ。
「グェッ!」
振り返ると、ドサッと斃れるモンスターの姿があった。
とても巨大な吸血蝙蝠のようだ。
額の真ん中にナイフが深々と突き刺さっている。
「――ジャイアントバッド、レベル28か。ずっとリザードマン達の後方で潜んでいたみたいねぇ。こいつに噛まれたら
「こんな大きなモンスターが潜んでいたなんて……まったく気付かなかった」
「大抵のジャイアントバッドは高レベルの《隠密》スキルを持っているからねぇ。あたしのように《索敵》スキルがカンストしていれば容易に発見できるけど」
さ、流石は勇者パーティの
実際の実力が計り知れない分、凄く頼もしく思える。
それにやっぱり仲間っていいなぁ……。
俺は『
また新しいモンスターが出現し、その度に殲滅してやった。
黒い犬の姿をした野獣、ヘルハウンドだ。
高レベルだと口から炎を吐くとか。
こいつも集団性のモンスターであり4匹もいた。
今度はユニークスキルに頼らず、雷光剣を使用してみる。
斬りつけたモンスターの1匹を魔力付与が発動し体を痺れさせ、他の3匹を《
怯んだ隙に致命傷を与え、俺が撃ち漏らしたヘルハウンドは香帆がいつの間にか斃していた。
そんな作業を繰り返すこと、23階辺り――。
「マオッチ、頑張るねぇ。レベル上がった?」
「うん、おかげでレベル17に上がったよ。格上モンスターを斃すと上がりやすいから助かるよ」
「そっ、良かったぁ。ねぇ少し休憩しょっか?」
「うん、いいよ」
「……なら、せっかく二人っきりだし、あたしといい事する?」
「えっ?」
何、この
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