第83話 サファイアの憂鬱

【サファイアside】


 よく考えてみると、一番悪いのは七之助だよね。

 相手を考えないで、たらし込む七之助が悪い !


 エアコンの効いた部屋で八重や十八番、七之助の父親を見守りながら人心地ついたボクは、勝手に七之助のバックに潜り込んでいた、カラーハムスターのチュー吉、ハム子、ホシ美を取り押さえていた。

 都会シティ狩人ハンターなのさ、ボクは。


「サファイアやさくらの姉御あねごたちばかりズルいや !

 俺達だってバカンスくらいしたいのに !」


 チュー吉が文句を言うけど無視することにした。


 太陽がさんさんと照らす外に出ていくのは人間くらいだね。

 ボクらは犬猫は、涼しい所でお昼寝するのが賢い選択と云うものだよ。


 落ち着くと、雫もさくらも深く考え過ぎな気がしてきた。


 いくらなんでも閻魔大王の曾孫が現世の人の命を狙うなんてありえないよね。


「それが、そうでもないのよネン !

 人間に忖度そんたくがあるように、地獄の住人も閻魔大王の曾孫に忖度して、天国へのキップを狙っている亡者や鬼がいると云う情報をもらったのよネン 」


 空間に裂け目が出来てから部屋に侵入しようとしてきた人物は百目鬼どうめきだった。


「亡者なら天国に行きたいのは理解するけど、どうして地獄の獄卒の鬼が天国に行きたがるのさ ? 」


「地獄にも女の鬼は居るけど、男の鬼より精神的にも肉体的にも強くて尻に敷かれる鬼夫婦ばかりだから、若い鬼は天国の天女に憧れているのよネン !

 見た目にだまされるなんて、男ってアホなのよネン 」


 百目鬼の話しだと天女を、か弱い美人だと信じている若い鬼たち。

 そんなことより、七之助や栞ちゃんのことが心配だよ !

 護衛に雫やさくらが居るにしても、万が一があるからね。


「 そちらに関しても大丈夫だと思うネン !

 閻魔大王も心配して地獄から助っ人を連れて来たから、、ご主人様を守るのネン !


 百目鬼の目には青白い炎が灯っていた。


 ……七之助の前世、いったい何があったのか非常に気に成るけど、知ったら絶対に巻き込まれる奴だ、これ !



 Cat has nine lives好奇心は猫をも殺す


 イギリスのことわざで、『過剰な好奇心は身を滅ぼす』が日本に定着しているけど、かしこいボクは、そんなを犯したりはしないさ !



 それがフラグだと気がついたのは、だいぶ後のことに成るとは…… 七之助のアホー !



 ♟♞♝♜♛♚


 一方、その頃……


【七之助side】


 母さんのお墓参りが終わると急に寒気がしてきたと同時に一緒に追いてきた、雫とさくらが急に警戒を始めた。


「主さま、早く車の中に非難するのじゃ !

 車には、鹿島神宮の神 武甕槌大神タケミカヅチ神の御守りが有るから地獄の住人は近付けないハズ !

 ここは、妾とさくらに任せるのじゃ ! 」


 雫の剣幕けんまくされて車の中に入ると、辺りが急に暗く成り嫌な気配がし始めて、沢山の異形な者達に囲まれていることに気がついた。


 あれは、いったい……


「地獄の餓鬼ガキです。

 結界も張りましたので、絶対に外には出ないでくださいね」


 犬、猿、キジを連れたが居た。


「君は何者なのですか ? 」


 俺の質問に彼女は嬉しそうに笑いながら、


「わたしは、…………



 彼女の正体を知った俺も栞さんも一瞬、固まってしまった。

 伝説は本当だったんだ……

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