第71話 仲魔と式神 ①

【サファイアside】


 恐れていたことが来てしまった。


「雫っち、連絡を聞いたから直ぐに来たのよネン !

 本当にご主人さまが転生して来たの?

 間違いじゃ無いのよネン ! 」


「久しぶりじゃの、百目鬼どうめき

 息災でなによりじゃ。 近頃は神族の手伝いをしていると聞いていたのじゃが、仕事をサボって来たのではあるまいな ! 」


「きちんと仕事はお休みを申請してきたから問題無いのよネン !

 それよりも、早くご主人さまに逢わせて欲しいのよネン !」


 一見すると普通の女性に見えるけど、額には第三の目があり、腕にも沢山の目が付いている。

 妖怪・百目の進化した妖怪である百目鬼どうめき

 普通、人間に使役出来るような妖怪じゃ無いはずなのに !


「とりあえず、普通の人間に変化するのじゃ。

 今世の主さまには前世の記憶が、ほとんど無いから気をつけるように。

 今から主さまが勤めている料理屋に行くから、不用意な言動は控えるようにするのじゃ 」


 ボクは、おそるおそる聞いてみた。

 好奇心猫を殺す、と云うことわざを知ってはいたけど聞かずにはいられなかったんだ。


「ねえ、雫。 七之助……安倍鷹久には、他にどんな式神がいたの ?

 他の式神がくるなら、七之助の家では手狭に成ると思うんだけど……」


 雫は考えこむようにしていたが、百目鬼は笑いを抑えていた。


「ふむ、後は乙事主おっことぬし玉兎ぎょくとが居るのじゃが、乙事主は山を離れられないじゃろうし、玉兎も現在は月に居るから当分は来ないじゃろう 」


 ……七之助も大概だけど、前世の鷹久はめちゃくちゃじゃないか !

 どちらも妖怪では無く、神獣じゃないか !


「……サファイアは誤解しておるようじゃが、乙事主は、主さまが鷹久と名乗っていた頃は、ただの妖猪だったし、玉兎もかぐや姫を迎えに来た月の従者たちに置いてけ堀にされた月兎の子供だったのを、主さまが保護しただけなのじゃ 」


 それだけだよね、もうお腹いっぱいだよ !


「他にも居ったはおったのじゃが、1000年も経つから生きているのやら、連絡が付かないのう 」


 これ以上、増えないなら我慢出来るかな。

 ストレスでハゲたら七之助に責任を取ってもらおう。


 ガラ ガラ ガラ


「ただいまー」「「ただいまー 」」「ただいま」


 七之助一家が帰って来た。

 夏休みに入ってそうそう、家族で交通博物館に行っていたんだよね。


 一応、護衛には、ぬらりひょんの爺がついて行ったけど、どうやら何事も無かったようで安心し……


「ミームー ! 」


 何か見たことも無い小動物が飛んできた。


「ミーちゃん、待ってぇ~ 」


 小動物を追って八重が続いてきた。


「グレムリンなのネ、日本じゃ珍しい妖怪なのネン !」


 百目鬼の言葉にガックリきてしまった。

『むやみに妖怪を拾ってくるな !』

 と、あれほど注意していたのに !

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