第55話 玉龍と迷子の迷子の八重ちゃん ②
弟の
よく人から、十八番を兄、八重を妹に見られていたからだった。
「由利子お姉ちゃん、わたしは 福岡田八重と言います。
ハンカチ、ありがとうございます 」
お姉ちゃんと呼ばれた由利子はワナワナと震えて目を伏せてしまった。
八重は、そんな由利子を不思議に思いながら、小首を傾けながら顔を覗き込もうとして、
「由利子お姉ちゃん ? 」
「うわぁぁぁ~~わ ! なんて可愛いいんだ ! 」
思わず、八重を抱きしめてしまった由利子は感動していた。
なにせ、『お姉ちゃん 』なんて呼ばれたのは、遥かに昔だっ 💥ボカッ !
「余計なナレーションはするな、ヘタレ作者め ! 」
由利子は誰かに怒鳴っていた。
『雉も鳴かずば撃たれまい』
思い出して作者は余計なことを言わないようにしようと誓ったのだった。
「どうしたの、由利子お姉ちゃん ? 」
由利子は感激したのか、八重を抱き抱え、
「可愛いーい ♬ 可愛いーい ♬ 自分の娘くらい、可愛いーい♬ 」
「アワワワワッ ! お目目が回るよぉ~ !」
「お母ちゃん、何を騒いでいるのじゃ ? 」
由利子について来た娘の
「はっ 、スマン、私とした事が嬉しくて つい、大丈夫か、八重ちゃん? 」
「ハワワワワッ…………」
八重は、すっかり目を回していた。
呆れたように、母親である由利子を見詰めながら由利凛は、
「お母ちゃん、いくら可愛いからといって子供を拐うのは犯罪になるのじゃ !
まだ未遂だから、早く子供を離してあげるのじゃ! 」
「違ーーう ! 冤罪だ、由利凛。
母親を疑うのか、娘のクセに !
お母ちゃん、情け無くて涙が出てくるわ ! 」
「冗談、冗談なのじゃ、お母ちゃん!
妾のジョークなのじゃ ! 」
その様子を見ていた十八番は、世の中には いろいろな家庭があることを知るのであった。
「それで、その子たちは、どうしたのじゃ ?」
「あっ、そうだ。 由利凛、この子たちは迷子らしいんだ。
親御さんたちも、今頃は探していると思うんだが、手掛かりは名前くらいしか無いんだ。
この子たちの名前は、家名が『ふくおかだ』で名前が『やえ』と『エース』らしいんだが、判るだろうか、由利凛 」
「珍しい家名だから直ぐに判ると思うのじゃ !
ちょっと家まで行ってデータバンクを調べて見るから、お母ちゃんは 子供たちを見ていて欲しいのじゃ ! 」
大江戸グループの情報管理部に勤めている
馬を連れていなければ、ファミリーレストランにでも入ったのだが、流石に馬の入店は認めてはもらえないだろう。
♟♝♞♜♚♛
「アワワッ、まだお目目がグルグルしているよぉ~ 」
「ごめんなさい、八重ちゃん」
「ううん、もう大丈夫だよ、由利子お姉ちゃん 」
にぱぁ ♬
バキューン !
グサッ !
由利子は八重の笑顔に胸を撃ち抜かれていた。
「ハァ ハァ ハァ 、何という破壊力なんだ ! 」
「大丈夫、お母さん ? 」
心配そうにしている娘の恵利凛に由利子は、
「きっ 気を付けて、恵利凛。
八重たんの笑顔は、最終兵器並みの破壊力たぞ ! 」
「『たん』? 変なお母さん。
八重ちゃんや十八番くんは、アイスは好きかな ? 」
「だーい好き !」
「大好きです 」
「そう、それじゃぁ、食べてね 」
恵利凛は、スーパーの袋からアイスを取り出すと八重と十八番に渡したあとに由利子にも渡してから自分でも食べようとして、なんとなく八重たちを見た。
「わあーい、ありがとう、お姉ちゃん ♬」
にぱぁ ♪
ズキューン !
改心の一撃。
恵利凛は、…………タラシ込まれてしまった。
「だから言ったのに 」
「……こんなことに成るなんて、」
♟♝♞♜♚♛
「おおー、やっぱり八重ちゃんは可愛いのう~ 」
そんな八重や十八番の姿を一反木綿に乗った ぬらりひょんが上空から最新式のビデオカメラで撮影していた。
そう、心配症な妖怪たちは、遠くから八重たちを見守っていたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます