第34話 幼馴染みは◌女 !

【栞side】


 七之助、栞の住む家に栞の幼馴染みが遊びに来た。


「栞、婚約おめでとう !

 ついに栞にも王子様が現れたんだね 」


 わたしの幼馴染みである九十九里浜魔魅まみが御祝いをしてくれました。


 彼女は前の旦那様が働かずにニート化してしまったのだけど、彼女が一生懸命に働いて貯めた貯金をアイドルに貢いで使ってしまい、ついに堪忍袋の緒が切れて離婚してしまった。

 だから、七之助さんとの婚約話しを話しずらかったのだけど、どうやらスピーカーオバサンから聞きつけて御祝いに来てくれたのだけど……


「本当にみずくさいんだからぁ、わたしのことなら気にしなくても良いのに、気を使う処が栞らしいと言えば、らしいんだけどね 」


 そうは言うけど、やっぱり気を使うよ。

 魔魅と俊夫としおくんは幼馴染みで大恋愛をして結婚した時は、こんなことに成るなんて思わなかったもの。


「ニャァ~」「ニャッ ! 」


 サファイアとさくらちゃんが挨拶しながらリビングに入ってきた。


「あら、懐かしい……サファイアちゃん ?

 違うわよね、アレから何年も経っているのだから……

 栞、この黒猫の名前は何て言うの ?

 三毛猫の方は旦那様予定の福岡田さんの飼い猫だと広島のオバサマスピーカーオバサンから聞いているんだけど……確か、ちゃんだったかしら ?」


 さくらちゃんが反論しようとしたのを、サファイアが猫パンチで強引に止めたのは良いんだけど、その結果 二匹はケンカを始めてしまい別の部屋に逃げたサファイアをさくらちゃんが追いかけて行ってしまったわ。


「やっぱり別の猫よね。

 子供の頃に居たサファイアちゃんなら、もし生きていたならお婆ちゃんですものね 」


 いやいや、アレ本人……本猫がサファイアなんですよ、とは言えないので苦笑いするしかなかったわ。



 ♟♞♝♜♛♚


 魔魅が帰った後に、ようやく戻ったサファイアが、


「ア~、ヒドイ目にあった !

 さくらがドジを踏みそうだったから止めて上げたのに、本気で怒るなんてカルシウムが足りないんじゃないの、さくらは !

 肉ばかり食べてないで、お魚も食べないとダメだよ !」


「あ~、あ~、聞こえない 聞こえない。

 ボクは肉食派だから、お魚は好きじゃないんだ。

 いきなり猫パンチをしたサファイアが悪いんじゃないか !」


「まったく、七之助がさくらを甘やかすから悪いんだ !

 今度こそ、ウナギを食べさせて貰うんだからね ! 」


 あらあら、七之助さんに飛び火してしまったわ。


「それよりも、栞ちゃん。

 さっき居たのは魔魅かい ?

 気を付けてよね、アレは完全に覚醒かくせいしてしまったようだね 」


 覚醒って、まさか魔魅も妖怪なのかしら ?


「違うよ、アレは魔女だよ。

 まだ、覚醒したばかりだから、大したことは出来ないけど、使い魔が居たから間違いないよ。

 だから、用心だけはしておくんだね」


「使い魔 ? 妖怪とは違うの 」


 わたしがサファイアに聞くと、


「似て非なる存在だね。

 ボク達、妖怪は それぞれが独立した存在、個性が有って自由だけど、使い魔は基本的に主人マスターに絶対の忠誠心があるんだ。

 魔魅の影にひそんで、此方を覗いているあたり、まだ使い魔の制御は出来ていないみたいだね 」




 ♟♞♝♜♛♚


【魔魅side】


「マミ、マミ、やっぱりアノ屋敷は、お化け屋敷だったよ !」


「そう そう、隠れて居たけど、アタシ達にはバッチリ、バレバレなんだからね! 」


 わたしの影から飛び出して、肩に乗った小さな猫、ポジとネガが教えてくれた。

 この子達は、わたしの使い魔らしい。

 そう、わたしは魔女……まだ見習いだけど。

 他人には絶対に言え無いけど、わたしは処女。

 俊夫と結婚していたけど、俊夫は二次元しか愛せない変態ヲタクだった。


 知らなかったわ。

 男の人が30歳過ぎても童貞なら魔法使いに成ると云う都市伝説は知っていたけど、女も30歳過ぎても処女なら魔女に成るなんて !


 恥ずかし過ぎて、誰にも言えるワケ無いでしょう !

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