第24話 なんか妖怪 ④


【栞side】


 猫語、猫の言葉が理解できたわ!

 七之助さんとサファイアやさくらちゃんの やり取りがテレビの副音声みたいに聞こえてきた。


 わたしが、ひそかに喜んでいると、


「ニャアー! ニャアー ! ニャアー! 」


 とルビーの声が聞こえてきた。


「おおっーと、いけねぇ~。

 ここに来た用事を忘れるところだった !

 実は、ルビーを預かって欲しくて、ここに来たんだった 」


 お爺ちゃんが、悪い悪いと手で拝みながら苦笑いをしていた。


「遼、アンタ、ボケたんじゃないの ?

 わたし、介護なんて嫌だから、自分で老人ホームを見つけてよ! 」


「人の事をいえるのかよ、香!

 忘れていたのは、お前さんだって一緒だろう 」


 お爺ちゃんとお婆ちゃんが、何時ものケンカを始めてしまった。


 もうー、恥ずかしいんだから !

 七之助さんの前なのに、ふたり共 大人気ないんだから困ってしまうわ。


 玄関の方に行くと、ゲージに入れられたルビーが、わたしを見るなり助けを求めるように強く鳴き始めていた。


「はいはい、今 出してあげるからね、ルビー 」


「ニャァオ ! ニャァオ ! ニャァオ ! 」


 アレ ! ルビーの声が普通の猫の鳴き声にしか聞こえてこないわ 。


 疑問に思っていると、


「そりゃそうだよ、栞ちゃん。

 ルビーは、ただの白猫だからね、人間の栞ちゃんには、言葉がつうじなくて当然さ ! 」


 黒猫姿のサファイアが教えてくれたわ。


「それよりもルビーが、

『早く出してよ、お姉ちゃん ! 』

 と鳴いているよ、栞ちゃん 」


 わたしがゲージのトビラを開けると、すぐにサファイアの元に近づき、サイレントニャア?で何かを話している。


「はいはい、わかったよ、ルビー。

 栞ちゃん、ボクはルビーを家の中の案内をするから、後は よろしくねぇ~ 」


 サファイアがルビーを連れて部屋の奥の方に行ってしまった。

 ウゥ~、残念。 普通の猫の言葉がわからないなんて。


 そういえば、お爺ちゃんが、

『ルビーを預かって欲しい』

 と言っていたけど、ふたりで旅行にでも行くのかしら。


 茶の間に戻ると、わたしが戻るのを待っていたのか、お爺ちゃんが話し始めた。


「栞、しばらくの間は本屋のアルバイトは来ないで欲しい。

 最近、須々木野すすきののボンボンが、お前に会いに本屋に入り浸っているんだ。

 俺達のところにも来て、


『栞さんは、何処に行ったんですか ?

 教えてください ! 』


 と、あまりにシツコイから栞は婚約者と同棲していることを話したら激昂げきこうしてなぁ~。


『僕は、そんな婚約者なんて認めない !』


 なんて本屋で騒ぎ始めた上に香が、


『アンタに認めてもらう必要なんて、あるわけないでしょう !

 アンタみたいなボンクラにウチの栞は、やらないわよ ! 』


 なんて言うもんだから、収集がつかなく成るから香を連れて避難して来たんだ 」




 わたしが本屋を休んでいる間に、そんな事に成っているなんて……


「それなら本屋さんは休むのですか ? 」


 七之助さんが お爺ちゃんに聞くと、


「ああ、本屋なら大丈夫だ。

 俺達の友達ダチ夫婦に頼んだから安心してくれ。

 代わりに俺達が、隼人はやと夫婦が営業している喫茶店の面倒を見ることになった 」


「隼人と云うと綾小路あやのこうじのおじさまのこと ?

 それよりも、お爺ちゃんもお婆ちゃんも喫茶店のコーヒーなんて、いれることが出来るの ?」


 本屋の方は、綾小路のおじさまと美妃みきさんなら安心して任せられるけど、素人が喫茶店の営業なんて心配だわ。


「栞、喫茶店の方は隼人さん達夫婦の孫のひとみちゃんが居るから大丈夫よ。

 それよりも、栞は自分の幸せを考えなさい。

 七之助さん、栞をよろしくお願いします 」


 お婆ちゃん……ありがとう。


「隼人なんて名前、忘れていたぜ !

 アイツには、タコ坊主と云うアダ名で充分通じるだろう、七之助 ! 」


「タコ坊主って、『キャット・ティル猫の尻尾』のタコ坊主さんですか ? 」


 七之助さんが驚いているのも仕方がないわね。

 皆、喫茶店の常連客は『タコ坊主さん』としか、隼人おじさまを呼ばないから。


 でも、隼人おじさまが居るなら本屋の方は安心だわ。

 プロレスラーや格闘家みたいな見た目の隼人おじさまに文句を言うことなんて、誠さんには無理でしょうね。


 本屋の仕事は、アルバイトの埼玉三姉妹さいたま さんしまいの愛さん、舞さん、美衣みいさんが居るから大丈夫。
















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