第18話 九十九神 ①


 部屋のかたづけをしていると、興奮した栞さんが俺の部屋にやって来た。


「七之助さん、七之助さん、黙っていたなんて水くさいじゃないですか !

 サファイアとさくらちゃんが猫魈と猫又だなんて、初めて知りましたよ !

 あ~~ 可愛い ! こんな妹が欲しかったんです、わたし 」


 栞さんに抱えられた、人に化けたサファイアとさくらは、グッタリしていた。


 変身したところを見られたのかな、ドジっ娘だなぁ~、サファイアもさくらも。


「ブー ブー、ドジっ娘なんかじゃないよ !

 栞ちゃんにも、ボク達の正体を教えてあげたら、こう成ったんだよ ! 」


 サファイアが心外だとばかりに抗議した。


 まあ、婚約者に成る女性に秘密を作らなくて良く成ったのはありがたいことだな。

 まてよ、


「なあ、サファイア。

 香さんや遼さんは、サファイアの正体のことは知っているのか ? 」


 栞さんに正体を打ち明けるくらいなら知っていても おかしくは無いよな。


「…………」


 サファイアは考えるような仕草をしながら、


「もしかしたら、気がついているかも知れない。

 遼も香ちゃんも勘が良いし頭も良いから、ボクの正体に気づいても知らないフリをしていてもおかしくは無いよ 」


 偶然だけど俺にバレたんだから、サファイアがドジを踏んでバレている可能性もあるからな。


 ジィーーー


 何かの視線を感じて周りを見るが、何も居ない。


「サファイア !」


「さくら、うん居るね 」


 さくらとサファイアも何かの視線に気がついたようだ。

 …………オバケじゃ無いよね。

 神社からもらってきた御守りを握りしめながら、うろ覚えの御経おきょうを唱えていた。


「……七之助、神様の御守りを握りながら仏様の御経を唱えるとは斬新だね。

 安心して良いよ、オバケじゃ無くて妖怪だから 」


 なにか、サファイアにバカにされた気がするけど、


「妖怪だって ! 何か妖怪 ? 」


「風邪をひきそうな寒いギャグなんか言っていると栞ちゃんから愛想尽かされても知らないよ ! 」


 サファイアの嫌みに栞さんを見たら愛想笑いをしていた。


「 ゴメンナサイ、おやじギャグは なるべく言わないようにしますね 」


「『なるべく』かい、七之助 !」


 サファイアの奴、突っ込みの才能があるな。


ズッ~~ル~いズルいよ、サファイア !

 お兄ちゃんとの付き合いは、ボクの方が長いのに ! 」


 そう言いながら抱きつく さくらをでていたら、栞さんもサファイアを引き寄せてナデナデしていた。


「フフフ、子供が居たら こんなに楽しい日常が繰り返されるんですね。

 わたし、お爺ちゃんとお婆ちゃんに可愛がってもらいましたけど、両親が忙しくて家族みずいらずでの家庭にあこがれていたんですよ 」


 嬉しそうに、優しくサファイアを撫でている栞さんを見て頑張ろうと思っていた。


 ジィーーーー !


 やっぱり視線を感じる。

 妖怪って、鬼◌郎の妖怪しか知らないぞ !

 ぬらりひょん とかだったら嫌だなぁ~

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