第12話 愛は地球を救う と言うらしいけど愛だけでは食べていけないよね ! ⑤


 栞さんが俺のことに気がついた。

 パタパタとやって来て、


「副岡田さん、ありがとうございます。

 わざわざ、ウチのサファイアを送って頂いて……


 栞さんの目が俺の肩から顔を出している さくらに気がついた。


「うわぁ~、もしかして この娘が噂のさくらちゃんですか !?

 ものすごい美猫ですね 」


 見なくても判る。

 さくらはめられるのが大好きなんだ。


 普段は他人に愛想なんてしない さくらが、


ニャアーンありがとう、お姉ちゃん !」


 子猫時代から かまってくれる女将には、イヤイヤしてロクに抱かされない さくらが、栞さんに抱かれても嫌がる素振りを見せない。

 女将が見たら悔しがるだろうなぁ。


「サファイアはでさせてはくれても抱っこは嫌がるので嬉しいです。

 さくらちゃんは懐っこいですね 」


 サファイアがジト目で、さくらを見ている。

 もしかして、栞さんを取られて嫉妬しているのかな ?

 そんな風に考えていたら、サファイアと目が合った。


ミャォーンミャォーンそれならオッチャンはボクがもらうね!」


 急に甘えた声を出し始めたサファイアが俺の胸に目掛けてジャンプした。


 ハシッ !


 落とさないように思わず抱きしめると、スリスリと頭を擦り付けて、


ニャオーンニャオーンバイバイ、さくら ウニャァウニャァボクはオッチャンと幸せになるからね!」


 それを見た さくらが慌てて栞さんの腕から脱け出して、俺の方に走り寄ってジャンプした。


 パシッ !


 空いている手で、さくらをキャッチするとサファイアに負けじと顔にスリスリと擦り付けてきた。


ニャアーニャアーニャアーンサファイアに、お兄ちゃんは渡さないよ! 」



 そんな様子を栞さんは、最初は驚き次には羨ましそうに、


「副岡田さんはモテモテですね。

 凄く羨ましいです。

 猫たちに好かれるなんて、副岡田さんは優しいのでしょうね。

 なんて…… 」


 ああ、これは触れない方が良さそうだな。



 ♟♞♝♜♛♚


【栞side】


 婚約破棄、最近のラノベなどで人気のカテゴリーですが、自分に起きるとは思いもしませんでした。

 高校時代からお付き合いをしていた圭一けいいちくんが、わたしの親友の千尋ちひろと浮気していた挙げ句に、わたしは婚約破棄をされてしまった。

 そして、現在お付き合いを始めたまことさんにいたっては二股ふたまた、三股どころか沢山の女性とお付き合いをしていると、近況のスピーカーおばさんから聞いた。


 ハァ、わたしって男運が悪いのかなぁ。

 サファイアの方が、よっぽど男を見る目があるような気がする。

 圭一くんも誠さんもサファイアからは嫌われていた。

 無理に近付いた時には、威嚇いかくさえしていたわ。

 猫に負ける、わたしって……落ち込むなぁ~

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