第11話 乙なこと

ガラガラガラ...

揺れる大地と崩れるビル。

その様子を遠くから見ていた花は戦いの終わりを感じていた。

「葵ちゃん...」


倒壊したビルの中。

葵は力なく仰向けに倒れているつむぎを見下ろしていた。

骨折に打撲、その他諸々大怪我多数。

神の奇跡さえ起きなければ助からないだろう。

「はぁ...はぁ...」

いくら自分のことを精神的、肉体的に痛めつけてきたとはいえ、満身創痍のつむぎを見ているのは...

このままひと思いに

「なに悩んでんの」

....

「今更悩むことないよ

あんたにいままでやってきたことの報いだよ」

「でも」

「ない、もう殺してよ」

「....」

"殺して"

そんな言葉を普通に生きてて言われることなんてない。

漫画やアニメ、ドラマではよく見るけどこれは現実だ。

見るのと実際に言われることではこんなに重みが違うなんて。

「うん、分かったよ」

「ありがとう」

こんなお礼いやだなぁ...

葵はつむぎの心臓に手を伸ばし、腕を入れた。

このまま心臓を握り潰せば...

あれ...?もしかしてこれって...




ビルの外では花が葵がでてくるのを今か今かと待っていた。

「だいじょうぶかな〜、遅いな〜」

ガラガラ...

「あ!」

葵がでてきた。

少しふらついているようだ。

「あーおいち...いいっ!?

血まみれっ...」

ニコニコして走ってきた花の顔は一瞬で真っ青になった。

「あっあっあっどどどどうしようどうしよう!

痛くない?それ痛くない!?ねぇ!生きてる!?

いや生きてるよね!?あー!どうしよどうしよ!」

「あ、大丈夫です

見た目の割には傷は浅いので」

「え」

「本当です!なので心配はご無よ...」

「あ!?やっぱり!?あお...」

あ、ダメだ。

「あ...いち...だい....ぶ...」

声が遠くなる。

まだ倒れ...



とある豪邸にて



「神様...あの場合は...」

神様は黙って画面に映った葵をじっと見ている。

「ふーん、そんなことしちゃうんだ...

幸薄めでかわいいだけかと思ってたけど結構エグいね、彼女」

神様は少し驚いた様子で言った。

「あなたと同じくらい歪んでますね」

「ハハッ、君やっぱり失礼だねー

まあ、あの子は負けて死んだ訳だし...

昨日の夜といっしょね〜、死亡者リストに追加して発表しといて」

「わかりました」

「それで宜しい

あ、すっかり忘れてた

あの子にも連絡しておかないとね

どんな顔するかな〜

苦しい顔してくれるかな〜」

「相変わらず性格が悪いですね」

神様はニヤニヤしながら声を整えた。

「あの子は夢の中か〜

うん、自分ながら乙なことをするもんだ

きっと寝覚め最悪だろうなぁ〜

さて...」


《1キルおめでとう》


神は今までで1番いい声で夢の中の葵に囁いた。

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