第8話 まぜろよ

「まずあのこをどうにかする為に作戦立てよっか」

葵の手を握りながら花が提案した。

「えっと...それって」

「大丈夫!殺さな...

えーっと殺めたり...

難しいな〜、なんて言えばユルく聞こえるかな...」

どうやら気を使ってくれているようだが、物騒な言葉が全部漏れていることに気づいていない。

「あ、気...遣わなくて大丈夫です...

それに...覚悟はし...てます」

花はえっ!?っと驚いた顔をした。


「いやいや!そこまで覚悟ガンギマリにならなくていいよ!

私もそこまでやろうとは思ってないし!

ちょ〜っと再起不の...

追っかけてこないようにするくらい...みたいな?」

(やっぱり野蛮だこの人...!)

人差し指どうしを合わせてモジモジしながら言ってるけど言葉も発想も物騒だ。

「それにかわいいかわいい葵ちゃんを危険な目には合わせたくないし...

できるなら葵ちゃんの手は綺麗なままでいて欲しいんだよね」

え?なんて????

「いや、まあこの話は後に置いとこうか」

あとでするんだ...

「まず君の能力を教えてもらおうかな」



「なるほどね」

私自身、理解力が乏しい方だと思う。

現代文とかで作者の意図や登場人物の心情に寄り添えない方だ。

なんなら所々読み飛ばす派だ。

だから答えに辿り着いたり、理解したりできないししない。

でも花さんは違った。

しっかり文字を文字としてではなく言葉として読み、感じとる。

そして裏に隠された意味や言葉に込められた意図を読み取る。

何気ない『嫉妬』という文字から色々と連想して言葉に繋げてくれる。

たぶん頭のいい人っていうのはこういう人のことを言うんだろう。

花はその理解力、考察力で花の手紙から能力の詳細を教えてくれた。


「えっとね、葵ちゃんの能力は『嫉妬』と『慈心』って名前らしいよ

神様って厨二病なのかな、気取りすぎでしょ」

嫉妬と羨望?

ぜんっぜん分からない。

言葉のチョイス的に陰キャじゃん...

「まあ簡単に言えば奪う力と与える力だね」

「え?ど、どうしてそうなるんですか?」

訳が分からない。

いくらなんでも突飛すぎる。

余計に意味がわからない。

「この答えに行き着いたのは葵ちゃんの内面を知ったからだよ

例を出すと...」



難しかった。

私の能力と私の内面を解説してくれたのに難しかった...

私ってめんどくさいんだ...


簡単にいうと『羨ましい(恵まれている)と思った相手からなんでも奪える能力が嫉妬』で『不幸(可哀想)だと思った相手になんでも与えられる能力が慈心』らしい。


嫉妬はともかく、慈心って...

お高く止まってるみたいで嫌だ。

でも心のどこかではそんなこと思ってたのかなぁ。

「まあ、大体そんなかんじだって覚えてたらいいよ

あの神様のことだから大体チート与えられてるって認識でいいと思うし」

チート...

いよいよマンガやアニメの世界でしか聞けないような単語がでてきた。

ここにいる人たちも同じような能力もってるのかな。

「花さんにもチー」

「あるよ、『鏡』っていう跳ね返したり真似たりする能力と『カメラ』」

まさか言い終わる前に答えてくれるなんて思ってなかった。

なんなら「それは教えられないかな」って拒否されると思ってた。

「カメラはさっき見たよね?シャッターを切ると相手の動きを止められるの

便利でしょ〜」

結構大きな秘密だと思うんだけど...

なんでさらっと教えてくれるんだろう。

「能力を教えたのは信頼してるから...だよ

これが私の信頼の証

あと葵ちゃんかわいいし!」

また言ってる...

まさか本気じゃないよね...

でも信頼してくれてるのは嬉しいなぁ。

私もその信頼を裏切らないようにしないと!

「ありがとうございます!

私も花さ」

「ごめん、痛いかも!」

話している途中で花さんに突き飛ばされた。

え!?なんで!?なんで突きとば...

目線をさっきまで私のいたところに戻すと大きな針が刺さっていた。

コンクリートに刺さってる...

「花さ」

「葵ちゃん!気をつけて」

花さんの視線の先にはあの人がいた。


私を裏切った人。


「なーーーに話してんの?私もまぜろよ」


つむぎの酷く冷たい目は、私だけをじっと見ていた。

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