第6話 また
振り返ればいろいろと見落として...
いや、考えないようにしていたんだ。
"つむぎが私を利用しようとしていること"に...
あのふわふわした喋り方も嘘。
あの優しさの塊みたいな性格も嘘。
私を隠すために地面に押さえつけた時、かなり力を込めて地面に押さえつけられた。
つむぎは上手く隠していたつもりだったんだろうけど思い返せば粗はあった。
それに気づいていないフリして、つむぎに頼ってしまった。
甘えてしまった。
そのツケがきたんだ。
甘えて甘えて、人のせいにして。
痛いだろうな...
でもそのあと楽になれるなら...
葵は死を受け入れることにし、目を瞑った。
それでも涙は止まらない。
「ありがとう、そんで死ね」
つむぎの長い爪が葵の心臓を貫こうとしたその時。
なにかがつむぎの爪を弾いた。
「はぁ!?なに!?」
誰かが私を抱きしめている。
細い...でも力強い。
なんで私なんかを...?
「誰よあんた」
つむぎは冷たい目で葵を抱えた少女を睨んでいる。
「....」
「誰って聞いてんの」
「大丈夫?怪我はな...あるよね」
少女はつむぎを無視して目を瞑ったまま泣いている葵に声をかけた。
葵がゆっくりと目を開くと優しそうな顔の少女が心配そうな顔で見ていた。
「えっ、あっ、えっと....」
「一応無事...ではあるみたいね
あとで治療しようね」
少女は優しく微笑んだ。
「無視すんなよ!!」
つむぎは怒りながら爪を刺してくる。
が、葵を抱えたまま全てひょいひょいと避ける。
「キー!なによあんた!鬱陶しいわね!!」
茹でダコのように怒り狂っている。
「うるさいよ、あなた」
少女はカバンから何かを取りだした。
カメラ?のようだ。
「はーん?貢物ですかー?あたしそんなん貰っても」
「バカな子はやりやすいからいいわね」
「あぁ!?」
ブチ切れたつむぎの爪が少女の額を貫こうとした瞬間
パシャ
少女はつむぎにカメラを向け、シャッターを切った。
すると、つむぎは時間が止まったかのように固まって動かなくなった。
まるで写真を見ているようだ。
「えっ、あの...これ...」
「落ち着いて、あんまり長くは持たないの
安全なとこいこ?」
優しい笑顔、どこまでもついて行きたくなる。
「は、はい」
葵は少女に手を引かれるがまま、ビル街を後にした。
-森→街エリア-
はぁはぁ、結構歩いた...
「さ、ここならそうそう追っかけてこれないと思うよ
自己紹介しよ、自己紹介」
この人元気だ...
「あ、疲れちゃった?ごめんね、ちょっときゅーけいしよっか」
また気を使わせてしまったみたいだ。
5分後
「どう?元気戻った?」
「は、はい
お茶まで貰っちゃって...すみません」
だいぶ落ち着いてきた。
この異常な環境で落ち着くってのもおかしいけどとにかく冷静にはなれそうだ。
「よかったー、わたし"花"
仲良くしてね」
少女は花と名乗った。
歳は1つ上で17歳。
花はいろいろと葵の知らないことも教えてくれた。
だいたいは手紙に書いてあった内容。
しかし、今日が"2日目"だということは初めて知った。
なぜ初日の出来事や、神様から説明を受けた時の記憶が無いのかはわからない。
まぁ目立つ怪我がないまま生きていられたのはよかった。
「ねぇ」
「は、はい!」
「そろそろあなたのこと教えてよ」
話を聞いてばっかりで自分の話をしてなかった。
でも、最近の私の出来事なんて辛いことしか...
「なんでもいいよ、話すと楽になれるよ」
背中を押されているみたい...
「じゃあ、ちょっとだけ...」
「なるほど、大変だったね」
花さんはそういうと私を強く抱き締めてくれた。
あったかい、それでいて優しい。
自然と涙が溢れてくる。
あぁ、私泣いてばっかりだ。
情けないよ...
「苦労したらその後はいい事しかないよ
これからは私が助けてあげる」
「えっ!?」
嬉しい...でもなんで!?
「な、なんでですか!?私つむ...
さっきの子に追われてるのに...
このままだとまきこ...むぐ!?」
話してる途中で花に口を押えられた。
「ぷはっ、なにす」
「めんどうウェルカム
むしろあの子さえフリ払えば葵ちゃんとずっと一緒ってことでしょ?
むしろプラスだよ
私可愛い子好きだし」
にっこにこの笑顔で私の頬をぷにぷにしながら花さんは言った。
どうしよう、つむぎに裏切られたばっかりなのにまた人を信用しようとしてる。
もう誰も信じられないって泣いてたばっかりなのに...
でも、もしかしたら。
もしかしたら花さんはつむぎとは違うのかも...
花さんは私を抱きしめてくれた。
だから
信用してもいいのかも。
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