第34話 ボス攻略
アラクニッド・デーモンとの、激しい戦闘はすでに30分は続いていた。
背中から産む雑魚蜘蛛は、全てミロクが覇気のオーラで引き寄せ。
お尻から出す強力な粘液糸は、シャルヴルが水魔法で流している。
悉く、技を封じている俺達にアラクニッド・デーモンは苛立ちを隠せず、雄たけびを上げながら、6~8本の鋭く硬い脚爪で攻撃を繰り返す。
徐々にアラクニッド・デーモンのパターンと弱点が皆には見えて来ていた。
まずひとつは、鋭い爪を持つ脚。爪の部分は相当硬いが、胴体に行くにつれて柔らかくなっている。
次に、雑魚を産む背中は比較的に柔らかい殻で出来ている事。物理攻撃をするなら背中が一番良いのだろうが、それを守る様に素早く動くのも事実。
最後に、ミロクが業火の魔剣「業炎烈風刃」で斬られた雑魚蜘蛛の残骸。
死体が消える前のその雑魚の残骸は、内臓の他に蜘蛛糸を出す組織があった。
業炎烈風刃で斬られたその組織は激しく炎上しているのだ。
この魔物の世界で生活している魔狩人達は、初見ならなおさら戦いながら攻略法を見つけようとする。それは、地球でTVゲームのRPGで遊んでいるゲーマー達と一緒だ。
これはゲームではないが、七羽もそれはここまでの短期の戦いの中で見て来た事だ。
つまり、狙って攻撃をするのは、柔らかい背中と、組織のあるお尻付近と言う事。
ガラン、ビクタルはお互いの顔を見合わせてアイコンタクトを取り頷くと、ボス真正面に立ち、挑発を始める。
「おおい!こっちだ蜘蛛さんよお!」
「ワッハッハ!儂みたいに足の遅い男も貫けんのかのぅ!」
アラクニッド・デーモンは挑発に乗り、鋭い爪を二人に集中させる。
その間に、ヴィルトスは魔法を詠唱する。
「業火よ。勇ましいイフリートのような業炎を我が示す武器に宿せ!エンチャント・ファイヤーウェポン!」
ヴィルトスの杖の周りに炎が3つ出現し、イルメイダの細剣、チーヌのポイズンダガー、七羽の剣にそれぞれ飛んで行って、剣先に張り付いたと思うとそれは、一気に柄以外、刃の部分を覆った。
「素早い君達ならこの付与魔法の意味はわかりますよね?」
3人はコクリと頷いた。
そう柔らかい背中を攻撃するのは、七羽、イルメイダ、チーヌに任されたのだ。
盾役のビクタル、ガラン。
雑魚をミロク。
粘膜糸剥がしをシャルヴル。
ヴィルトスが魔法サポートと攻撃で、それを障壁で守るアイネ。
皆が連携を纏めた姿だった。
凄い…まるで何処かの国の伝統芸で使う火剣のようだ…。
そう思いながら七羽は背中を目指して移動する。
イルメイダは、風魔法と精霊術を行使して宙を舞う。
チーヌは類まれな身体能力で一気に差を詰める。
3人は盾の二人が8本の脚を引き寄せている間にアラクニッド・デーモンの後方へ回った。
背中に飛び乗った3人は共に頷く。
同時にやらないと、気づかれてしまい振り落とされる可能性もあるので狙うは渾身の力を込めてやる突き刺す事だ。
ビクタル、ガランは各4本ずつの脚の攻撃を盾や斧の平たい部分で防いだり、受け流したりしているが、徐々にその盾や斧にも疲れが来ていた。
「ぬう…盾がそろそろ逝くか?早くしてくれ…」
「ふん…こちらも斧がそろそろやばくなってきたわい…」
背中に乗った3人は突き刺す場所を確認した。
「「「行くよ。せーの」」」
ザザザン!!ボッ!
「!?、キエーーーーーーー!」
イルメイダとチーヌは、背中から産まれてきそうになった雑魚蜘蛛ごと突き刺した。
雑魚蜘蛛が持っている糸組織に剣の炎が引火し、それが激しく燃えたが、そのまま刃全てをアラクニッド・デーモンの体に押し込む。
同時に、七羽はお尻の上辺りの甲殻の隙間に渾身の力を込めて刃を突き刺した。
それは、アラクニッド・デーモンの糸組織にまで達し、エンチャントの炎が引火する。
アラクニッド・デーモンの臀部から体まで内側から炎が巡った。
「ギエエエエエーーーーーー!!」
凄い奇声を上げて、のた打ち回るアラクニッド・デーモン。
すぐに背中の三人は武器をそのままに、ジャンプして降りた。
後へ左右へ動き回るが、炎が体中の甲殻の隙間から漏れている。
僕達はそれをじっと見ていた。
カリカリカリと動き回るが、徐々にそれも鈍くなり。
とうとう動かなくなってしまった。
「勝ったな…」
ガランがそう呟いた。
暫く見ているとその体が消滅していき、野球ボールくらいの魔石3個と、突き刺さっていた3本の武器が床に落ちた。
「ふう…これ見て見ろよイロハ」
「え?」
ガランがそう言うので目を向けると。
それは、ガランの使う大盾。
表面はすざまじい攻撃を受けたのが一目でわかるくらいボロボロだった。
「うわぁ…」
パキッ!ゴトン。
そう言った傍から、その大盾の4分の1が欠けて地面に落ちた。
「はぁ…」
ガランは、溜息をついて大盾を地面に投げ捨てた。
「それが腕じゃなくて良かったわねガラン。さてと私は、宝箱調べるわよ」
ガランは天井を見て、変顔を残した。
チーヌは念入りに宝箱を調べるが、罠は見つからなかった。
「罠は…ないわね」
「そりゃ、倒した報酬なんだからよぉ。更に追い打ちとかするかね?」
「あらガラン、そう思って死んで行った魔狩人達たくさん私は見て来たわよ?」
「そりゃ、人間とかが仕組んだ奴だろ?ここは俺達世代は知らない迷宮の中だぜ?ミノタの箱ん時もそうだったじゃねえか?」
「あのねぇ。念には念よ。この迷宮と前の迷宮と一緒なんて分からないじゃない。全くぅ」
「あーはいはい。念には念をねー、任せますよぉ、罠師さん」
チーヌが宝箱を開けて中身を外に取り出していく。
先ずは金塊が10本。
宝石が大小10個。
そして、槍が2本、大盾、鎧が出て来た。
「おーーー!この大盾、俺様が貰って良いか?さっき無くなったしよぉ」
ガランはその大盾に飛びついた。
「まあ、待ちなさいよ。盾持ちはあんただけなんだから皆も文句言わないだろうけどさ。まずはイロハ君の鑑定でしょうが?」
「ああ…つい、済まん…」
チーヌにそう言われ、大盾から離れるガラン。
「はい。じゃあ鑑定しますね」
先ずはその大盾から。
黒光りしていて、表面はギザギザ模様になっていて、なんとなくツルッとした質感で受け流すのには良さそうな素材だった。
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マジックアイテム:アラクニッド・ラージシールド
アラクネ甲殻製
防御力 67
重量軽減 -41%
魔力変形
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「って出ましたね、重量軽減ってあるんで軽いって事なんじゃないですかね。後魔力変形ってなんでしょうかね?」
ガランはその盾を持ち上げる。
「うお!軽い…」
「確かにさっきそこに並べる時、あたいでも苦じゃないくらい軽かったわね…」
チーヌはそう呟いた。
ガランは魔力を盾に込めた。
ジャキン!
「うおおお!」
「うわ…なんか凄いですねその盾…」
ガランが魔力を込めた瞬間。
その盾の表面のギザギザの部分がなんと、せり出して無数の刃のように、せり立ったのだ。
「こりゃあ良いぜぇ!ガハハ。シールドバッシュするためにあるようなもんだぜ!」
シールドバッシュと言う技は、盾持ち技で、盾でタックルして相手を怯ませたりする技である。
次は柄の部分には滑らないように溝があるものの、切先までツルツルの素材で爪楊枝のような形をしていた。
槍2本を七羽は鑑定する。
この2本の槍は一見、同じ物に見えるが違った。
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マジックアイテム:アラクニッド・ニードル
アラクネ甲殻製
攻撃力 70
重量軽減 -36%
魔力変形
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マジックアイテム:アラクニッド・ニードル
アラクネ甲殻製
攻撃力 67
重量軽減 -29%
敏捷 +6%
魔力変形
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七羽は2本の槍を鑑定し、声を出して内容を伝えた。
「へぇ…同じ槍なのに、性能が違うのね」
チーヌは顎に右手を添えてそう言った。
七羽が槍一つを手に取り、魔力を流すと。
シャキン!
爪楊枝みたいに切先まで真っすぐだったその槍はその姿を少し変えた。
槍先が十字にせり出て、鋭利な返しが出て来たのだ。
「わお!それはつまり…突き刺した後にその返しを内部で展開して、引く事で肉を抉り取るって感じかしら?」
「そんな感じでしょうかね?…想像するだけでグロそうだ…」
チーヌの推測に七羽はそう答えた。
そして、もう片方も同じように変形したのだった。
すると、無口なシャルヴルさんが前に出て、指を差した。
「え?あ…シャルヴルさんこれが欲しいんですか?」
コクリと首を縦に振った。
どうやら、説明後者の方の槍が欲しいみたいだ。
確かに2番目に鑑定した方が、ステータス敏捷がアップするからそっちの方が良い物に見える。
大盾はすでにガランさんが自分の物のように変形を楽しんでいる。
槍使いは今の所シャルヴルさんしかいないので、2本とも渡した。
シャルヴルさんは兜で表情も分からないけど、なんとなく喜んでいるように見えた。
さて、最後に黒光りしているこの鎧だ。
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マジックアイテム:アラクニッド・ライトアーマー
アラクネ甲殻製
防御力 61
重量軽減 -42%
物理受け流し率 +20%
魔法受け流し率 +4%
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このように出た。
「軽くて丈夫そうですねコレ、誰に渡しましょうか?欲しい人手を上げて?」
七羽がそう言うと。
チーヌ、イルメイダが手を上げた。
「ミロクさんは要らないのですか?」
「俺…いや私は、ほぼ引退した身なのでそれは現役の方に渡しますよ」
「そうですか…」
「じゃあ、あたいとイルメイダちゃん、イロハ君でジャンケンしましょうか?」
「そうですね。イロハさんもいれてジャンケンしましょう!」
チーヌとイルメイダはそう言って手を出した。
「じゃあ」
3人でジャンケンをして、勝ったのはチーヌさんだった。
「やった!おー軽い軽い」
マジックアイテム分配はこれで終わった。
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後書き。
やっと投稿できました…
次話は多分、来年になるかもしれませんが…
ファンの皆様、まだまだ七羽の冒険は続きますのでよろしくお願いいたします。
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