第31話 フィールドダンジョン
祭壇に現れた迷宮へのゲートを不思議そうに調べるミロクと協会職員達。
「これが迷宮への入り口……」
「ミロクの旦那。俺達が先に入って確かめて来る。で良いよな?」
「ああ…はい。ガラン殿。ただ…」
「む?ただ?まだ何かあるのか?」
「いえ、俺も…あ、失礼。私も同行しますゆえ、ご了承賜ります」
「は?ミロクの旦那も入るのか?」
「ええ。俺…、私も一応、個人Sランク
ミロクはそう言った。
「そのよぉ…、俺とか私とか、どっちでもいいから、普通に喋れよ旦那」
「ああ…すみません。あははは…協会総支配人なのに、魔狩人全盛期時代の言葉がどうも抜けなくてですねぇ…」
このミロクさんって人、優しそうだけどこうやって見ると、ガランさんとそこまで体の大きさ変わらない。
身長も高いし、協会の少し大きな制服着ているけど、拳もしっかりしてて無数の古傷も見える。相当、強いのかも…さっきプライベートが、云々とかイルに言ったけど、鑑定で見てみよう。
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ミロク・ハービンジャー
人間男性
51歳
体力: 123
魔力: 36
筋力: 152
知力: 48
器用: 70
敏捷: 34
能力: 斧術+2 剣術+5 盾術+2 格闘術+2 槍術 弓術 覇気の奥拉
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うおおおお!?
ミロクさんって人間だよね?…何このステータス。
獣人のガランさんより強いじゃないか。
「ミロクさん」
「はい。イロハさん、どうしました?」
「あの…一つ聞いてもいいですか?」
「はい」
「覇気の…なんて言うのかな?…えっと」
「ああ、覇気の
「あ、オーラって読むのか…」
「それがどうかしましたか?」
「あ、覇気の奥拉ってどんなスキルなんですか?」
「はい、お答えしましょう。覇気とはすなわち、他を圧倒する殺気や威圧感ですね。ガラン殿やそちらのビクタル殿もそうですが、盾役としては魔物を挑発して注目を集めなければなりません。覇気のオーラと言うのは、言わば魔物に対して究極の挑発ですね」
そう、ニコニコした笑顔でミロクは答えた。
へぇ…挑発のスキルなんだ?
「イロハ。何でそんな事を聞くんだ?」
「ああ…いえ、ちょっと前に耳にして何だろう?って思ったんで…」
「そうじゃ、そのオーラのスキルは、相当な修行をした者だけが辿り着けるスキルなんじゃよ、儂みたいに何でもぶっ叩いて魔物の注目を集めるのとは訳が違うスキルじゃよ」
僕の問いにそう答えるビクタル。
「俺からも一言。人間ってのは一番弱いやつを倒そうとするやつもいるが、魔物ってのはな、強そうな奴をまず倒しにかかってくるのが定石。人相手ならそのオーラでビビらす事も出来るが、魔物相手なら抜群の効果って事よぉ。俺も早くそのスキルまで辿り着けたいわ」
ガランはそう言って天井を見た。
なんか
僕ら地球人にも、多分、探せばいろいろなスキル持っている人いるんだろうけど。
この極限状態がよくあるこの世界だから、そんなスキルを身に着けるんだろうなぁ…
「ミロクさん、ガランさん、ビクタルさん。有難うございます、勉強になりました」
「いえいえ、何ならコツをガラン殿とビクタル殿にお教えしますよ。ハハハ」
「え!?旦那、覇気使えるのか!?」
「ええ…まぁ…」
「なんじゃと!?長年生きている儂でもまだ出来んのにか!?」
僕が聞いたお陰で、2人もその覇気のオーラについて学べそうだし、聞いてみて良かった。
「さてと、では中へ入る準備をしましょうか?」
ミロクはそう言った。
「準備は大丈夫だ。いつでもいいぜ!ガハハ」
ミロクが皆の顔を見て確認を促す。
皆、頷いたので、一度うんうんと首を縦に振る。
そして、近くに置いてあった箱から自分の装備を取り出して、着替え終わると。
「では、君達後はよろしく」
ミロクはそう職員にそう言った。
ミロクさんの装備も凄かった。
豪華な赤い剣1本とオリハルコン製の剣1本、金属防具もドワーフ製フル装備。
「ミロクの旦那…な…なんか…凄くないか?…」
「現役の頃のこれしかもう持ってなくて、アハハハ」
「その防具…あ奴の作品か…むうう…」
屈強な装備を見て、ガランとビクタルはちょっと引いていた。
豪華な赤い剣を僕は鑑定してみた。
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マジックアイテム:魔剣
ヒヒイロカネ製
特殊技:火炎放射、炎盾
攻撃力 253
器用上昇 10%
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「ゴウエンレツフウジン…?」
七羽は、鑑定した名前を口で呟いた。
「お?イロハ殿、よくこの武器の名前分かりましたね。確か、ドワーフの国に行って鑑定して貰った時そんな名前だった」
「イロハ…すげえのか?あの赤い剣?」
ガランがそう聞いてきた。
「ええ…武器に魔剣の名前がついているので相当良い物かもしれません。火炎放射と炎盾って特殊技が出せるようですが…」
「イロハ殿…君は相当な鑑定スキルを持っているんですね?ドワーフの鑑定で名前や大体の攻撃力までは分かっても、そこまではっきりは分からなかったのに…」
「ああ…その鑑定スキルのお陰で迷宮遺跡を開放する事が出来るんですよ僕。ははは…」
「なるほどぉ」
そう、確かエルフのエルグラン宮殿の長に会いに行った時。
あれと一緒で、魔剣って名称が付いているマジックアイテムは特殊な技が出せるんだなきっと。
「魔剣…ミロクの旦那…それは迷宮で手に入れたのか?いや…それはないか?」
「いやぁ、現役の時、大きな盗賊の討伐をした時に、そこの頭領が持っていた物ですね~、頭領自体は大した事なかったのですが、この剣にはちょっと手こずりましたからねぇ」
「戦利品ってわけか…良いなぁ…」
ガランは羨ましそうだった。
「それはそうと、ガラン殿、早く迷宮に入りましょうか?」
「お…おう、そうだった!」
僕ら8人にミロクを加え、9人は迷宮のゲートへ入る最後の意思確認を終え、ガランから先にゲートの中へ入って行った。
◇
迷宮入り口ゲートから転送された先は、背には壁があり、前方には木々や起伏の激しい丘や草原などが広がっていた。
「これ…迷宮の中だよな?」
「不思議な場所ですね。これが迷宮…ワクワクしますね」
ガランに続いてミロクがそう言う。
「こうなると地図を書くってわけには行かなそうね…」
チーヌが困り顔でそう言った。
「とりあえず、進むしかないな、行こうぜ!」
ガランはそう言って先頭を歩き出す。
不思議な所だ。
風も時折吹いているし。
太陽はないのにそこそこ明るい。
足元は土や芝生を普通に感じる。
迷宮タイプってのは迷路のようになっていたけど、フィールドタイプってこういう事なんだ。
「とりあえず歩きやすそうな場所を選んで進む事にしようぜ」
ガランがそう言うと皆は頷いた。
暫く歩くと、大きなサソリのような甲殻類の魔物に出くわした。
9人はそれらを苦労なく屠って行く。
先へどんどん進むと、大きな谷が現れた。
「うわぁ…深そうね…」
イルが少し遠目で見てそう言った。
「あそこに向こうに渡れそうな場所があるわい」
ビクタルが指を差す方向を皆がみる。
「アレを渡るのかぁ?…」
ガランがそう言った場所は、谷に橋が架かっているかのような場所。
仕方なくそこへ皆で向かうと、近づくにつれそれは見えて来た。
深い谷に一本だけ陸地が向こう側へ続いていたのだ。
幅は5mほどで向こうまでは200mくらいと言った所だろうか?
谷からは風が吹きあがって来ている。
「コレ…渡っている途中に崩れたりしないよなぁ?…」
「ガラン。仕方なかろう…別の場所へ向かって谷だったら結局戻って来んと行かんしな。ほれ、お主先頭行くのが好きなんじゃろう?」
「むう…」
渋々とガランはその橋を先頭で進んで行く。
真ん中付近に差し掛かった時。
ブーーーーンン。
「ん?何の音じゃ?」
大きなハチの大軍がこっちにやって来るのが見えた。
「おいおいおい…こんなとこでジャイアント・ワスプかよ」
あっと言う間に数十匹のハチの魔物に取り囲まれた一行。
「後方は、俺…私に任せろ!」
ミロクはそう言って、アイネやヴィルトスを守ろうと豪炎烈風刃で火炎を放射した。
ヴィルトスも火炎魔法で応戦し、七羽もガスバーナー魔法で一気に蹴散らす。
イルメイダは、脳豆を食べて身体能力も上がっており、風魔法を乗せた矢で確実に一匹ずつ仕留めて行っていた。
ガランとビクタル、チーヌも近くに襲って来たものから確実に仕留めている。
ガスバーナーを振りまきながら、シャルヴル立ち回りを見ていた七羽。
手から水魔法で作り出した粘液のような物を飛ばし、数匹捉えて引っ張り、槍で仕留めて行くと言う、まるでスパイダーマンのようだった。
「くそ!また来たぞ。切りがねえ…向こうまで走るぞ!」
「おう!」
「うん分かった」
「はい」
皆は応戦しながら向こう岸を目指し走った。
向こう岸まで着くと、広く陣形を整えて応戦した。
足場が安定すると、牙とお尻の針で襲って来るワスプは、どうってことはなかった。
100匹を超えるワスプは叩き落とされ、数匹は逃げてしまった。
「ふう…片付いたか?…こりゃあ…迷路タイプの迷宮の方が楽のような気がするなぁ…」
「ほんとガランの言う通りね…はぁ…はぁ…」
ガランとチーヌは汗を拭ってそう言った。
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