第25話 一時、帰球
8人は酒場で数時間、親交を深め合った後、各自宿屋の自分の部屋へ戻った。
部屋に戻る前に、僕は、次元箱を行使できるイルに預けていた、リュックサックをイルから受け取って部屋へ入った。このリュックの中には宝石や金銭と、オルキルトさんの大事な本が3冊入っている。
解散したのは夕刻前だったせいで、まだまだ今日と言う時間はある。
寝る前にオルキルトさんの本を読んだ。
ここまで旅をしてきて中々、本を読む時間もなかった。
まず手にしたのは、オルキルトさんが
オルキルトさんって、地球では「エルド・アトランティス」の兵士もしながら、この自分がRBSで創造した門の世界「アラウザルゲート」を楽しんでいたようだった。
それはびっしりと細かく書いてあった。
この世界と住人との出会いや、仲間との冒険など一日一日の生活が綴ってあった。
そこで目を引いたのは、旅の途中でのログアウト。つまり地球へ戻る事も書かれていたのだ。
それによると、別にエルフの世界樹の部屋に戻らなくても、地球に帰還出来ると言う物だった。
その場所をしっかりと記憶し、地球へ帰る動作を行い。またこの世界へ入る時もしっかりと意識するだけでその場所へ戻る事が出来たと言う事だった。
今、僕の脳は12%覚醒している。
最初にRBSを血で解放した時の脳覚醒は8%だった。
まあ、17歳だし…脳もまだ若いと言う事なのだろう。
あれから最初の本にあった1つの脳豆と、世界樹の上にあった本の中のやつで3つの脳豆を食べて、一気に脳を覚醒化させた。昏睡して危なかったみたいだけど、ちゃんと生きてここに居る。
オルキルトさんもここに書いている時は、12%の覚醒だったみたいだ。
でもこれは、地球人で言えばそこまで珍しい事ではない。
地球で言われているのは、人間は大体約10%前後の能力を発揮していると仮説されているので、12%脳が覚醒している人も、中にはいるのではないだろうか?と思う。
でも12%と言えば、ある意味。今、地球にいる人類の中では相当良い方だと僕は思っている。何故なら…あの感覚だ。脳豆を見つけて1個食べたあの日から、五感の感覚の鋭さが違うのがわかったからだ。
僕みたいな平々凡々な普通以下の高校生ではなく。スポーツ万能で頭も良い、文武両道みたいな人って、多分だけど脳が他の人よりも覚醒しているんだろう。
僕の場合、ある意味、それを無理やり脳豆で引き上げてるに過ぎない。
でも下手したら今の僕だったら、オリンピック選手にでもなれそうなくらい、脳と体が出来上がっているわけで…
そこで本題に入るわけだけど。
僕は脳が覚醒したおかげで、五感もそうだけど、記憶力も凄く良い。
一度見た景色が、頭の中で鮮明に残っている。
なので、ここで地球に帰る事も容易に出来るのも体感で分かるんだ。
地球に一度帰った時から約2週間ほど経っている。
そう、僕がこの世界と地球の時差設定してあり、地球の1日は、この世界では7日だ。
つまり、地球ではまだ2日しか経っていない事になる。
流石に、爺ちゃん婆ちゃんには心配させないように、帰れそうな時は帰った方が良いと思っている。
2日前、僕にとっては2週間ほど前になるけど…強盗がほなみちゃんの家に入ってから、多分、4人のグループLINEはコメントの嵐になっているだろう…何の言葉も返さないのも気になるし、今日は少し地球へ戻ろうと思った。
僕は設定画面を出した。
地球と、この世界の時差は、両方の時差前後10日まで弄る事が出来るはずだ。
今回は、念のため地球3にして、アラウザルゲートを1にした。
これで、地球に3日いても、アラウザルゲート世界は1日しか経過しない事になる。
そして地球へ帰還するよう念じたのだった。
◇
目を開けると、そこは地球の僕の部屋だ。
門の置物が淡く光っていたが、徐々にそれは無くなった。
充電器をさしっぱなしの携帯を見るとLINEが98と表示されていた。
直ぐにグループLINEを開き目を通して返信した。
スコッ。
返信した直ぐ後に、浩平からのコメントが入った。
駿河浩平:≪お?七羽、やっとLINE見たのかよ!≫
おいおい…浩平のヤツ何言ってんだか…見てないってあれから2~3日くらいしか経ってないじゃないか?…
宝杖七羽:≪ああ。ごめんごめん、親戚の家、田舎で電波届きにくいから気にしてなかったわ。≫
と、コメントを打った。
柏原桜子:≪あ、ななっち、お帰り!≫
相沢ほなみ:≪宝杖くんお帰り≫
2人からもコメントが来た。
宝杖七羽:≪みんな、ただいま。≫
駿河浩平:≪まだ朝だし、昼からみんなで「a round10」に遊びいかね?≫
柏原桜子:≪私はOK!≫
相沢ほなみ:≪私も宝杖くんが行くなら行こうかな?≫
駿河浩平:≪ほなみちゃん…それちょっと傷つくなあ…俺だけだったら行かないやつ?w≫
相沢ほなみ:≪あ!いえ、そう言う意味で言ったんじゃないの、ごめんごめん≫
駿河浩平:≪冗談よ、ほなみちゃん。みんなOKなら、みんなが知ってるほなみちゃん家集合なー≫
いや…いきなりそう決められても…
あっちの世界で明日から長旅になりそうなんだけどな…
まあ、3日設定してあるから大丈夫は大丈夫なんだけど。
それに、ほなみちゃんもあの事件から落ち込んでないか心配なのもあるし、元気づけてあげるのも良いかも知れない。
宝杖七羽:≪分かった、良いよ。また3日後に違う親戚の家にも行かないと行けないから、明日までなら時間あるし≫
駿河浩平:≪決まりだな!じゃあ、11時にほなみちゃん家で!≫
時間を見ると朝の9時半だった。
◇
僕は、相沢さんの家の前に5分前についた。
前に来た時も思ったけど、相変わらず立派な家だ。
相沢さんの親の職業とか知らないけど、医者とか弁護士とかなのかな?
そう遠目で相沢さんの家を眺めながら歩いていると、相沢さんは玄関の門の前に出て来ていた。
「あ、宝杖くん!」
「あ…相沢さん、他の二人は?」
「ううん、まだ。さすが宝杖くん、時間前にはぴったりね」
「ははは、僕はバイトとか待ち合わせとかには、ちゃんと5分前に着くように行くようにしているからね」
七羽は照れながらそう言った。
「おーい!」
少し遠い所から声が聞こえた。
声のする方を見ると、ワンブロック先くらいに浩平と桜がいるのが見えた。
その隣を子供が二人走って行く。
その時。僕は違和感を覚えた。
浩平と桜がワンブロック先のそこまで大きくはない十字路を歩いて来る。
その筋の道路から浩平達の歩いてくる十字路へ向かう車の音を感知した。
子供達がその筋へ走って行く速度と、止まれの文字を無視する勢いで近づく車の音。
僕の頭の中では、本能的に凄い勢いでソレを計算された。
「ちょ!」
「え?宝杖くん!」
七羽は走り出していた。
走って来る七羽に、浩平と桜子は微笑みながら手を振る。
その二人の隣を飛んでもない速度で疾走し、追い抜いていく。
追いついた七羽は、子供二人のうち一人の背中の服を掴み、後ろへ引き込む。
ドサッと子供は後ろに尻もちをついて倒れた。
先にいる子供と、車が交差点で接触しようとした時。
七羽は踏み込んで、大きく前に飛び込み、子供ともども前に吹っ飛ぶ。
車の運転手は驚いて急ブレーキをかけて十字路を少し進んだ所で止まった。
「七羽!?」
「ななっち!!」
2人が十字路へ近づくと。
七羽の手の中には子供が何が起こったのか分からないような顔でじっとしていて。
七羽は立ち上がった。
「危なかったね」
「あ…有難うございました!」
子供はそう言って頭を下げた。
もう一人の子供も近くに来てお礼をもう一度言って、歩いて去って行った。
「七羽…今の車来ていたの分かっていたのか?」
「ああ…うん」
「ええ?ななっちあんな所からどうやって?…」
「ああ、、ほら…そこのミラーでね」
2人は角に設置してあるミラーを見た。
「そ…そうなんだ…」
「あそこからコレ見えるの??」
2人は疑問に思っていたが、とりあえずは納得して貰えたようだった。
車の運転手は降りて来て、七羽に感謝と謝罪を言って来た。
子供を捕まえて背中から着地したため、服はボロボロになり所々擦り傷にもなっていた。
運転手は病院に連れて行くと何度も言われたけど、大丈夫だとこっちも何度も断った。
すると、財布にあったお金を全て僕に握らせて、謝罪して車を走らせて行った。
「宝杖くん!!大丈夫?」
ほなみちゃんがそう言って走ってやって来た。
「うわぁ…痛そう…早く家に入って、手当しなきゃ!」
「ああ。うん…」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後書き。
最近寒くなってきましたね。
皆様、寒暖差に気を付けてくださいね!
最近、小説家になろう様の方でも重複投稿するようにしました。
後、私の処女作「ブルースフィア」も、小説家になろう様でも、再投稿し、また大人気になってます。
処女作の方がいろいろと早い展開で物語が進むので読みやすいのかな?…
どちらもよろしくお願いいたします。
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