第11話 想像以上
僕は脳豆を3つ食べて意識を失った。
それから5日も寝ていたらしい。
イルの手厚い看護のお陰で、寝ている間も水分を摂れていたようだ。
それも口移しで…
「イロハさん?熱とかあるのですか?…少し顔が赤くなっているようですが…」
「ああああ、いや…何でもないよ!大丈夫!」
考えているとイルが問いかけて来た。
僕だって…まだ、ほら。思春期なわけで。
こんなに綺麗な女の子に口移しで水飲まされていたって聞くと意識しないわけないじゃないか…。
そう思いながら一瞬、心配そうな顔で覗き込むイルメイダの顔を七羽は見て、目を外した。
もう身体の方は何ともなかったので、前のようにイルメイダと
あれから、凄く身体が軽い。
そして、漲る力。
自分のステータスを確認した。
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宝杖七羽
人間男性
17歳
脳覚醒率9%⇒12%
体力: 33⇒62
魔力: 2 ⇒30
力: 30⇒66
知力: 25⇒55
器用: 20⇒60
敏捷: 26⇒64
能力: 鑑定 身体強化 水魔法 光魔法 火魔法
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わわわ…なんか2~3倍になってる。
オルキルトさんによると常人の脳覚醒率は平均10%くらいって言ってた。
たった2%覚醒しただけで、ステータスがこんなになるなんてびっくりだ。
勿論、魔力はイルとの修行の成果もあるだろうけど。
ちゃんと、前回見た時からどう変化したのかも見えるんだな。
イルはどうなっているんだろう?
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イルメイダ・アーグラエル
エルフ女性
34歳
体力: 15⇒18
魔力: 29⇒33
力: 9 ⇒11
知力: 28⇒29
器用: 13⇒15
敏捷: 20⇒22
能力: 次元箱 弓術+2 水魔法 風魔法 火魔法 精霊術
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多少は上向きになっているみたいだね。
しかし…
オルキルトさんの上司だった、ボルドグル大尉って人。
このRBSで脳覚醒率28%まで到達した人って書いてあったけど…
どんな怪物になったのか、気になるなあ…
また暇がある時にでも、オルキルトさんの日記読んで見よう。そしたら少しは何か書いてあるかもな。
「イロハさん着きました。あの廃墟にゴブリンの巣があると思われます」
「あ?…うん、わかった」
そう、イルと受けた今回の依頼は、ゴブリンが巣くっている廃墟での討伐だ。
これには他のパーティも参加している。
ゴブリンって地球のゲームでは、一番最初に戦う事になるモンスターだけど、聞く所によると中々賢くて、狡猾らしいんだ。
特に女性は出来れば近づかない方が良いらしい。
何故なら、ゴブリン種はオスの産まれる確率が、圧倒的に多いらしくて、そのため子宮を持っている人型や動物を使って繁殖するのだそうだ…
なので、魔狩人協会でも男性パーティを推奨している。
今回参加しているD,Eランクの
僕ら以外の2つは男性のパーティだ。
僕はまだEだけど、イルは一応Cランクだ、このメンバーの誰よりも強いから大丈夫だと思いたい。
「イルメイダ殿。女性は貴方一人だ。ゴブリン達は貴方を
Dランクパーティのリーダーらしき戦士がそう言った。
「問題ないわ。私はCランク。多少、放置されてもゴブリンくらい何とかやってみせます」
「うむ…そう言ってゴブリンの餌食になった者も多い。くれぐれも気を付けてくだされ」
「ええ…」
そう言って、その場にいる者達は頷いた。
◇
廃墟の扉は開いているが、コソコソと動く物体がチラリと見える。
扉付近にいるゴブリンを手慣れた手つきで、静かに倒すDランクパーティ。
近づいても大丈夫と手で合図を送っている。
皆で、静かに廃墟に近寄る。
元は教会か何かを祀っていたいたのだろう、崩れかけた大きな建物だった。
Dランクパーティが中へ入って行くのに、ついて行く6人。
暫くするとDランクパーティが戦闘を開始した。
「ギャギャギャ!」
「ギョ!」
ザン!キン!キン!
ゴブリンの声と武器が交わる音が響き渡る。
「気を付けろ!結構いるぞ!」
パーティの誰かの声が響く。
イルメイダは弓を構え、上から飛び降りて襲って来るゴブリン達を落としていく。
僕も剣を構え、襲って来たゴブリンと剣を交える。
身体が軽いせいか、ゴブリンの攻撃は子供とチャンバラごっこをしているようだった。軽くあしらって床に転げたゴブリンに止めを刺した。
この殺す感覚にはまだ慣れないが、人を襲う魔物だと強く思って剣を立てた。
その後も皆、奮戦しているが、どこから沸いて来るのか数が多い。
イルメイダも矢を使い果たし、細身の剣を抜いている。
僕は襲って来るゴブリンの首を難なく撥ねて行く。
最初にDランクパーティが言ったように、イルメイダにゴブリン達は集まって来ていて、それを守るように僕とEランクパーティ4人。
「クソっ!まだまだ来るぞ!!」
そう叫んだのはDランクパーティリーダーの声だ。
奥からワラワラと出て来る出て来る。
「ちょっと…これは話が違うんじゃないか?」
Eランクの一人がそう言った。
Eランクの4人の息はあがって来ていた。
イルメイダも他以上に襲って来るゴブリンに体力を削られているようだった。
「イル大丈夫?」
「うん。まだ大丈夫」
脳豆効果のお陰なのか、これだけ動いても僕はまだ疲れてはいない。イルを襲って来るゴブリン達を斬りまくった。
「だめだ…もう魔力が!」
「くそう!」
数の多さにEランクパーティは限界だった。
ブン…グシャア!!
すると前から何か大きな物が飛んできて壁にぶち当たる。
「!?」
皆、ソレに目を奪われた。
壁に張り付いているのは、Dランクパーティのリーダーの戦士だった。
激しく壁に当たって床へずるずると落ちて行った。
「危ないイル!」
七羽は、その隙にイルメイダに飛び付こうとしたゴブリン2体を素早く動き、同時に斬り裂いた。
「イロハさん…」
「イル、ぼーっとしないで!」
「うん」
「グオオオオオオオ!」
気が付くと、さっきパーティリーダーが飛ばされて来た方向の部屋から3mほどもあるゴブリンがぬっと出て来た。
「に…逃げよう!!」
「うん、わあああ」
Eランクパーティは逃げ出した。
「イル!僕らもこのまま撤退しよう!」
「う、うん…でも、Dランクの彼らは…」
「撤退が先だ!」
「うん!」
撤退し外へ出ると、すでにゴブリン達に囲まれていた。
「ギギギギギ!」
「ギャッギャ!」
ズンズン…
目の前には約30体ほどのゴブリン達。
後からはデカいゴブリン。
「ど…どうする…」
「おしまいだぁ…」
囲んでいるゴブリン達はやっちまえー!みたいな叫び声をあげているようで、襲っては来ない。
建物から出て来た大きなゴブリンがどんどん近づいて来る。
「襲って来ない?アイツを倒せば、ひょっとしたら…」
「イル、アレを倒せるの!?ってあれもゴブリン?」
「あれは…ホブゴブリンの上級、ゴブリンジェネラルです。一度倒した事あるけど…その時はCランクパーティ5人だった…まさかこんな所にもいるなんて…」
「ジェネラル…つまり将軍って事か…」
どうする?…
あいつを倒す事が出来れば突破口も開けそうだけど…
もう4人のEランクパーティは武器も放り出して逃げたため手には何も持ってないし、魔力も残っていないようで、あてには出来ない。
イルは息を整えているようだけど、肩で息をしているようにも見える。
疲れを感じていない僕がなんとかするしかない。
剣をもう一度握りしめゴブリンジェネラルへ剣を構える。
「グホオオオオオオ!」
こっちの意図が分かったのか、大きな雄たけびをあげた。
意を決して僕は斬り込んだ。
走って素早く横をとって斬り付ける。
ガシッ!!
「硬っ!」
その剣は皮膚を少し傷付けただけだった。
「グウウ…」
一応、血が滲み出ているので効いてはいるようだ。
ゴブリンジェネラルはそこに落ちていた大きな木の枝を拾い上げ、振り回して来た。
身体は大きいが、意外に素早くはない。
これならイケる。
ただ…この剣では致命傷は無理だ。
何か方法を探さないと…
物理でやるのなら致命打を与える事の出来る箇所を探さないと…
それ以外なら……魔法…。
七羽は、振り回してくる大きな枝を躱しながら、何度か切りつけるが、やはりかすり傷程度しかにならない。
イルメイダも戦闘に参加するが、細身の剣では同じ事だった。
が、イルメイダは躱し様に火魔法を使った。
「火球!」
ジッ!
「クホッ!」
「ん?」
少し怯んだように見えた。
そうか、火だ。
人間もそうだけど、大体の生き物は火は警戒する。
そう…もっとも熱い火…炎…ガスバーナーのような…
「イル、次僕が踏み込んだら動かないで!」
「え?…ええ分かりました」
僕は大きく、大きな枝を振り回し終えた瞬間を狙った。
ギリギリでそれを躱して、懐に飛び込んだ。
それを見たイルメイダは、後ろへ飛びのく。
七羽は、手をゴブリンジェネラルへ瞬時に
可燃ガス…ガスバーナー…大きく青く激しい炎…
七羽は、掌にそのイメージを集束する。
掌に青い炎が丸く渦巻く。
「え!?青い炎?」
イルメイダはそう呟き驚く。
七羽の掌に出来た、青い球の炎はまるでガスバーナーのツマミを回したかのように一気に放出される。
ブオオオオオオオオオオオーーーー!
「ギャアアアアアアアアァァーーーーーーーー!!」
ゴブリンジェネラルは大きな声を上げた。
みるみると胸から頭までの皮膚が燃え焦げて行く。
ゴブリンジェネラルはあまりの熱さで両手で顔を隠す。
「グアアアアアアア!グア!」
成功した。
僕の手から勢いよく青い炎が直線的に放たれている。
ゴブリンジェネラルの顔を隠した手はみるみるうちに燃え
そして赤い炎へ包まれ、身体が燃え始めた。
取り囲んでいたゴブリン達もポカンと口をあけてその様子を見ている。
「これが魔法…」
初めてちゃんとした魔法を創り出した
も…もう良いだろう。
魔法を使っていると精神を削られているような感覚が襲う。
多分、これが魔力を消費していく感覚なのだろうと思った。
魔法の意識を消していくと、魔法はシュンと消えた。
「グオオオオオ、ガハアアア!」
藻掻けば藻掻くほど酸素を吸収し、赤い炎はゴブリンジェネラル全身を包んだ。
暫くすると、とうとう藻掻くのをやめ膝から崩れ落ちて倒れたのだった。
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後書き。
どうでしたでしょうか?
七羽の初の戦闘。
まだまだ意欲を持って書きたいので。
読まれた方は、お手数ではありますが。
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