第6話  大海の水も一滴から。巨大バケツで、ジョバァァァア。2

 荒い呼吸音と、金属の擦れる音。

街の生活音のオーケストラは終わり、緊張感の独唱に変わる。

 嫌でも生き物として認識してしまうほどの生々しい質感。現実が喉を刺す。

ここで得た何かと失うナニか、善と悪が絡み合い、融けて、固まって、また溶けて。

そうして出来た鋭いナイフが、今、緊張で張った糸を切る。


 放たれた青白い光の弾は、真っ直ぐ直線を描き、ゴブリンの眉間に触れる。

「パンッ」と弾けた音と共に噴き出した赤い液体は弧を描き辺りを濡らす。  

レベルの上がる音とゴブリンの胴体の倒れる音が重なる。



            異世界が始まった気がする。




            __ゴブリン一体撃破完了__


 「うぉ⁉︎ よっしゃぁ!まず一匹〜〜!!」

魔法スゲェ!!なんか感動…。魔力残量もまだまだあるし、どんどん撃ちたい!

てか、一発なんだな、もっと何発か撃ち込まないとダメかと思ってたんだが。


 「おぉ少年、魔法使えたのか。これは心強い。さっきはすまん、気が立ってたもんで。」


このおじさん悪い人じゃなさそう。確かにこんな状況じゃしょうがないよね。


 「大丈夫っすよ!それより今はこれに集中しましょ!」

相手とのレベル差は三以上ついているから余裕もって油断せずやれば大丈夫!な、はず…


 「わかった、、ありがとう。俺は フィート。「フィート・グラムトル」。よろしく。」


フィートさんか、覚えておこう。これからもお世話にねる予感がする、、、


 「僕は、歩っていいます!よろしくおねがいします!もう一発【魔力弾】行きますね‼︎」

 

            _____我が敵を穿て_____ 【魔力弾】


            __ゴブリン一体討伐__ 



「おお、また一発か、すごいな。こっちのでけぇのは任せてくれ。歩はそっちのを頼む!」


レッドゴブリンの方は、怖かったから助かる〜


 「分かりました!お任せを!」

よし!もう一踏ん張り!気ぃ引き締めていくか!!


 「野郎ども!!気合い入れろ!!!」  「うぉぉお!!!」


うん、みんな覇気が戻ってる。あっちは大丈夫そうだな。


 「よし、さっきと同じように。狙いをつけて。」


            _____我が敵を穿て_____ 【魔力弾】


            __ゴブリン一体撃破完了__



 「オラァァア!!これで終わりだ‼︎」  ____切り裂け____ 【鬼人一閃】


剣が一瞬光ったと思ったその瞬間、レッドゴブリンの上半身と下半身がずれ落ちた。


 「なにそれ!!!✨かっこいい!!」


 「ん?これか、これは、俺のスキルアクションの【鬼人一閃】だ。お前の【魔力弾】もそうじゃないのか?」

こいつもしかして、知らずに?でも理解はしてそうだが、、まあ、いいか。



 「そうなのか、、後で『有識者』に聞いてみよ。」 ボソボソ

スキルアクションか、、なんか響きが既にかっこいい、、。


 「ん?なんか言ったか?」


 「いや、なんでもないです。それより、【鬼人一閃】かっこよかったです!!」

声で出た⁉︎ 気をつけないと、、変な人って思われる〜。


 「そうか?歩の【魔力弾】もなかなかかっこよかったぜ!!」

こいつ、ちょっと変なやつなのか、?それとも訳ありか?ちょっと探っていかないとだな。

【鬼人一閃】なんて剣使ってるやつならみんな使えるし、、、、

この歳で初見は、なんかおかしいよな?


 「いえいえ、それほどでも…//」

褒められちった!!褒められちった!!!!魔法最高!!!!!!!


〔報告します。条件達成により新しいスキル『記録者』を獲得しました。説明は後ほどの方がいいですか?〕


 「えっ?まじ?やった!今すぐd…うん、後でお願い。」

スキルゲットだぜ!!でも、デザートはラストまで取っとかないとね!


 「歩?どうした?ゴブリン三体のドロップ品はお前のだぞ。いらねぇのか?」

そういやー 歩の【魔力弾】威力まあまあ良かったよな、、これからが楽しみだな。


 「あ、いります、いります。「ゴブリンの『コア』と「ゴブリンの棍棒」ゲットだぜ!!」

これ全部でいくらかな〜?あのおばあちゃんのとこ行ってみないとだな〜。



 見回りに行った男の人が安全確認したと報告がみんなの耳に届いた頃

街はすっかり、緊張は溶け、壊れた柵を直したり、ゴブリンの死体を片付けたり、

宴の準備を始めてる。


噴水の周りにもう屋台が⁉︎ 早すぎだろ、、まあ、不安を払拭するためには必要か。


 「さてさて、片付けの時間だな。まあ、今回はすぐ終わりそうだな。一週間もしないうちに元通りになんだろ。歩のお陰でな!!」バシバシ   「坊主!!ありがとうな!!」


みんなで歩に感謝の一斉砲火を浴びせる。一人は物理的に。


 「痛いですよ〜、フィートさん〜」

感謝されるのも悪くないな。と思う歩なのであった。


 「いやぁ〜ほんと助かった。そう言えば、魔力だいぶ消費したんじゃねぇの?今日のところは休んどきな、功労者様っ!」


 「痛いですって〜、そうさせていただきますかね。じゃあまた明日。」

そういえば、さっきから筋肉痛的な気怠さがあるような。


 「おう!しっかり休めよ。」


 「はいー!!」

お言葉に甘えちゃお〜、片付けめんどくさそうだし。


          「「この街の英雄に乾杯〜〜!!!!」」

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