第13話
-体育祭8日前-
「ね、明日の球技大会って何するんだろ」
「ソフトボールらしいよ。昨日希月さんが言ってた」
「えーソフトボールかぁ。私やったことない」
現在はスウェーデンリレーの練習中、といっても暇なので五六さんと雑談中だ。
「ソフトボールって言ってもウィンドミルとかスラップとかするわけじゃないだろうしやったことない人でも楽しめると思うよ」
「うぃんどみる?すらっぷ?なにそれ」
「あはは…何でもないよ」
本当に分かっていない様子の五六さんをみて苦笑い。
うちの高校には野球部はあるが、ソフトボール部はない。
因みに、野球部は中堅クラスだ。
甲子園に出たことはないけど、毎年そこそこ上位に食い込むくらいの。
「なんで体育祭の前に球技大会なんてするだろうねー」
「それはマジで分かんない。希月さんに聞けば分かるんじゃない?」
「あー、それな。彩美マジで何でも知ってるかんねー。マジで猫型ロボッ…」
「なんですか?人の悪口ですか?」
「ほわぁ!」
突然の背後からの呼びかけに五六さんは声をあげる。
一方、希月さんは表情一つ変えず五六さんに目を向け続けていた。
「悪口ですか?」
「え、どこが悪口だった?」
「どこがって…だって猫型ロボットってまるで私のスタイルがあんなズングリした者って言ってるようなものじゃないですか」
「「は?」」
俺と五六さんは顔を見合わせ、首をかしげる。
「ちょなんですか。私何かおかしいこと言いました?」
「おかしいも何も…」
「私たちが言ってたのそういうことじゃないもんね」
「…え?」
俺たちの言葉に、今度は希月さんが首をかしげる。
「俺たちは、希月さんって本当に何でも知ってるよねってことを言ってただけだよ」
「そそ。なんて言うんだっけ…生き字引?」
「いやそれはなんか違う気がする」
五六さんにツッコミを入れながら、横目で希月さんを見る。
恥ずかしさに頬を染め、顔をあげられない様子は、なんか…いいなって思った。
「てか、彩美って自分のスタイルにコンプレックスあったのかー?こんな細い身体しやがってぇ」
「ちょ、やめてください!やめ、やめてくださいよー!」
クラスは問題を抱えているが、この二人の間は平和だなとしみじみ感じた。
***
「それでは今日の練習を終わります」
ありがとうございましたー、とバラバラに頭を下げそれぞれが教室へ戻ろうと歩き出す。
「俺たちも帰るか」
「……」
「伊織?」
隣にいる伊織に声をかけるが反応がない。
見ると、伊織は、後方に固まっている集団をじっと見ている。
視線の先に目をやるとは、今最も関わりたくない人達-松村と阪木がいた。
「またあいつ等かよ」
「……ちょっと今回は酷いかも」
「え?」
伊織に言われて、更によく観察する。
ちょうど松村たちの背で、大場君が何をされているかよく見えない。
が、声だけは聞こえてきた。
「おい歌えよ」
「早くしないと先生来るだろ。急げよ」
「で、でも……」
「ま、でも歌い始めたらどうせ先生たちが寄ってくるだろうけどな」
彼ら二人はそう言って醜い笑い声をあげる。
チラリと見えた大場君は恐怖と無力感で縮こまっていた。
「どういう状況?」
「…さっき聞こえたのは、大場君に校歌を大声で歌わせようって」
「バカすぎるだろ…」
あきれてものも言えないとはこのことだ。
どうせ昨日の腹いせだろうが、これは本格的ないじめに発展していると考えてもいいだろう。
「ああ。こりゃ駄目だ」
彼らの行動を見て、自然と言葉が漏れた。
多分、今日の帰りも希月さんと帰るだろう。
その時にでも相談すればいい。
明日、球技大会の日に俺が彼らを同じ目に合わせてやると。
【あとがき】
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