神様の代行者 ー 殺人資格の専門校 ー
第三十四話 あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは
第三十四話 あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは
刃は指を切り落とした。
「ああああぁぁぁぁぁぁあああああああああっっ!!!!!」
良く晴れた日に、耳を
一人、表情なく切り離された指を見つめる業は、自分の服を引きちぎった。流れ出る血液を服で縛り、止める。そして今度は、反対の指を切り落とす。
「ぐぅぅぅうううううっっ!!!!」
また服を裂いて、止血する。
業はそれを全部の指で行った。手の指が無くなれば、足の指で。指が無くなれば、表面の皮膚だけを切り裂くように刃を滑らせる。
死ぬに死ねない状況に、シュナは歯を食いしばる。もう思考は正しくは働かない。言葉も出ない。耳に入った言葉も、もう理解はできない。
「俺はまだ迷ってる。お前を殺していいのかわからない。お前を殺して、俺の気が張れるのかわからない。だから、すぐにはお前を殺さない。苦しむ声に俺の心が痛んだら、もしかしたら、辞めるかもしれない」
ため息を吐いたのは、≪模倣犯≫だ。微かに聞こえた業の言葉に多少は飽きれつつも、今まで≪刺殺≫のアナウンスが流れなかったわけを知る。
≪
そのために、必要である最小限の動きに徹した。じっくり考え、自分の中の記憶や判断材料を熟成させた。まさか当人が参加しているとは思わなかっただろう。本人とは思わず助けた。微かに直感が働いて、探った。勝手に死なれないように食べ物を与えた。匿おうとした。
そして、今。妹だと判明したシュナの話を聞いても、決めきれないという。それはもう業本人の問題だ。≪模倣犯≫は業を「歪だ」と言った。その通り、業は歪だ。決められない。何が正しいかわからない。自分の選択が間違っていないという確信が持てない。
それは、与えられたものをやるだけの幼少期。自分をみない周囲。引かれたレールを歩むよう強制され、突然切り離された成熟期を送った子どもの成れの果て。
結果として、親と同じ思考を持って育った。
刺され、傷つけられ、もはや痛みを感じなくなったシュナ。ふと、気付く。実の兄が落ちたのを知って、シュナはとても幸せを感じた。『
それは、自分が大好きなシチュエーションではないか。
「……あ、は」
太陽が昇っている。鳥が飛んでいる。自由に。鳥が鳴いている。楽しそうに。青かった空はいつの間にか真っ赤に、緋色に染まっている。
「あは
業はシュナを刺す手を止めた。顔は包帯で隠されているシュナを見る。刺すことをやめても、笑い声は止まない。何がおかしいのかと、問いかけた。
「私は今! 私が一番好きなシチュエーションを体現しているの!! 今までは自分がする側だったのに! ああ、嬉しい!! 嬉しいなぁ!!! ありがとうお兄ちゃん!! ここまで来てくれて!! 私は今、すごく幸せだよ!!! これが欲しかったんだ!! 私はこれを知りたかった!!! ありがとう! ありがとう!! お兄ちゃんは神様だーっ!!!」
「っ」
シュナの口にナイフが突き刺さった。喉を塞がれ、笑い声は響かなくなった。けれどまだ笑っている。その声は、くぐもった音と血に溺れる音となって業の鼓膜を揺らす。
業は、再度刺し続けた。さっきまでよりも深く。その間。シュナの声が頭の中を反芻する。笑い声と、『神様』というワードが。
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