雪崩に巻き込まれたなら

相田田相

第1話

スマホを川に投げた。じゃぼーん。


ついでに退学の決意を固めた。周囲の人間は、その大半が反対を示してきたけれど、言葉のひとつひとつに何ら重みがなく、思えば彼ら、ひたすら敷かれた線路を歩いてきた、ただの木偶だ。


たしかに若さゆえの、軽薄な判断なのかもしれない。しかし、これは僕の人生であって、道があろうとなかろうと、歩くと決めたなら歩く。僕が歩いた道を、後世のだれかが歩けば、それは獣道となり、数が増えれば普遍的となる。そう考えると、僕の行動に正当性が生まれる、ような気がする。


結局のところ、世の中を変えるのは、いつでも変人と呼ばれた人間なのである。そう思いながら、橋の欄干に体をあずけ、流れる川を眺めていた。むろん、傍から見れば、スマホを川に投げたのち、黄昏ている変人だ。これでいい。僕は変人なのだ。


そういった自意識に心を浸していると、うしろから刃物で刺されるような、すさまじい衝撃を受けた。勢いよく走る音がして、何気なく視線を向けると、制服をきた少女が、目前に迫り、とおりこし、飛び立った。無機質な家々、夕日、道行く人、ありとあらゆるものを背景に、少女は空を舞ったのである。


一瞬、重力をものともしない超能力者なのかと、目をこすったけれど、次に目を開いた時には、水しぶきをあげていた。ここまで、この橋について触れなかったが、この橋は至極ちいさい、田舎によくある橋で、川までの距離も至極みじかい。だから、少女は無傷であり、本当に意味不明な行動をしたのである。

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