3 ボランティアは楽しい

 どのサークルにも決めかねたので明日以降に見学するサークルについて相談していると、座席の横から見知らぬ女性に声をかけられた。


「あなたたち、この大学の学生?」


 リュックサックを背負った背の高い女性で、一見するとハイキングに行く人のようだった。


「そうですけど、あなたは?」

「入るサークルを探しているようだったから、私たちの所を案内しようかなって。少しお時間いい?」


 羽賀さんはどうぞと言って僕の隣の席に移った。羽賀さんが座っていた座席に女性が座り、僕と羽賀さんに向かい合う形になる。



「……私たちのサークルは、言ってみればボランティアの会ね。ボランティアっていっても私的なものじゃなくて、公的な事業に大学生として協力する感じ」

「それはタダ働きという訳じゃないの?」


 活動内容の説明を受けつつ羽賀さんが適宜質問している。女性は上級生のようだが羽賀さんと年齢は同じらしいので敬語を使わずに話している。


「ボランティアは一般的に無償の活動とされるけど活動時の費用はちゃんと役所から受け取るわよ。謝礼金としてお給料は出るけど、大学生の社会勉強も兼ねているから単にアルバイトをするよりは少なくなるわね」

「なるほど。それで具体的にはどんな活動があるの?」

「今のところ主にやっているのは公共料金の支払い遵守を呼びかける活動になるわね。ポスターを作って貼ったり、市の広報誌にコラムを書いたりしてるわ」


 30分ほど説明を受けてサークル活動を楽しんだ上で社会貢献にもなると聞き、僕と羽賀さんはひとまず見学に行ってみることにした。



「もうすぐ19時になるけど、実はこれから会場を借りてバーベキューをやる予定なの。せっかくだから飛び入りで参加してみない?」

「えっ、いいんですか? 羽賀さんはどうします?」

「私もお腹が空いてきたから、行ってみましょう。よろしくお願いします」


 とんとん拍子で話が進んで、僕と羽賀さんは女性に連れられてカフェテリアを出た。せっかくなのでとカフェテリアの代金までおごってもらった。


 乗せられたシャトルバスで10分ほど走って、僕と羽賀さんは街はずれのキャンプ場までたどり着いた。既にバーベキューは始まりかけていて、ボランティアの会の面々に挨拶してから2人とも楽しくおいしい肉や野菜を頂いた。



 バーベキューの終わり頃、僕と羽賀さんは先ほどの女性に再び声をかけられた。


「これから今年度の決起集会を始めるんだけど、海江田君と羽賀さんも参加してみない?」

「面白そうね。海江田君、門限は大丈夫?」

「既に親には連絡してあるので、問題ないです」


 よかった、と女性は言ってそのまま僕と羽賀さんを決起集会の会場へと案内した。

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