第14話家族
ミコラス様の屋敷に到着すると家族みんなで出迎えてくれた。
「マリルちゃん、いらっしゃい」
ミコラスさんが笑顔でそばに来ると私をギュッと抱きしめくれた。
「ミ、ミコラス様」
私はどう反応していいかとマリエルさんに助けを求めたが笑顔を返されるばかりで何もしてくれそうにない。
するとミコラスさんが力を抜いて少し離れると優しく話しかけてきた。
「マリルちゃん、これからはうちの子になるんだ名前じゃなくてお父様って呼んでくれ」
ミコラスさんがニコニコと話すと後ろから奥様のアンジェリカ様が怒った顔でこちらに近づいてきた。
やはり私が養子になるのに反対なんだ……
どうしようと体を固くする。
「ちょっとあなた!マリルちゃんには私が先にお母様って呼ばれるのよ!」
「え?」
アンジェリカ様の言葉に思考が止まる。
「あっもちろん他でもいいわよ……ママとかね」
驚く私にアンジェリカ様はウインクすると、ミコラス様と同じように抱きしめてくれた。
「わ、私でいいんですか?私なんかが養子になって……」
思わず涙声になりながら問いかけた。
「あら、マリルちゃんなんかじゃないわ!マリルちゃん#だから__・__#よ!」
アンジェリカ様の優しい言葉に涙が溢れてしまった。
父に殺されかけ母に捨てられた私にもこんなにも優しい家族がまた出来たのだ。
2人は涙を流す私を優しく抱きしめ続けてくれた。
「さぁ積もる話はあとよ!早速契約書にサインしましょ!」
マリエルさんが早く早くと急き立てる。
「お義母様、ご安心ください!私達この話を頂いてからすでにサインは終えてますわ」
アンジェリカ様は準備万端とばかりに手を叩くと執事に書類を持って来させた。
「さすがアンジェリカさん!仕事が早いわね!」
「だって私マリルちゃんに初めて会った時からこんな娘が欲しかったってずっと思っていたんですもの!うちの子は揃いも揃って私に似たガサツな男ばかり……本当にこんな可愛い娘が出来ていいのかしら?」
アンジェリカ様が心配そうにしている。
「私、アンジェリカ様も他のお兄様達も素敵で大好きです」
「もう!もう!本当に可愛い!」
興奮したアンジェリカ様に思いっきり抱きつかれて私は少し気を失いそうになったのは内緒だ。
私が書類にサインするとミコラス様はそれを持ってすぐに役所へと向かい私は晴れてジェイコブ伯爵家の養子となった。
その日の夜は初めての家族との食事会……マリエルさんもいるがお兄様達にも会うとなりまた緊張していた。
会食のドレスなどはアンジェリカ様が一通り用意していてくれていた。
申し訳ないと今まで貯めたお金を払おうとすると怒られてしまった。
「マリルちゃんこれは私の夢でもあるのよ!娘の服を選んだり娘の部屋を飾ったり……あ~楽しかった!」
ま、まぁアンジェリカ様が喜んでいるなら良かった。
でもその代わりに今度一緒に買い物に行くことを条件にされたが……それって条件になるのかな?
そんな私の疑問はお兄様達の到着と共に忘れてしまっていた。
「父さん!母さん!#マリル__いもうと__#は!?」
ミコラス様、改めてお父様のご子息は3人だ。
今飛び込んで来たのは長男のヨハン様23歳、婚約者もいて騎士団に所属している。
ヨハン様は私を見るなり顔を綻ばせた。
その顔を見るからに祝福されているようで安堵する。
「ヨハンお兄様、ジェイコブ家の養子に迎えられたマリルと申します。よろしくお願い致します」
「えー!なんてしっかりした子なんだ!可愛いのにイアンより頭いいんじゃないか?」
ヨハン様は驚いた様子でお父様とお母様を見つめる。
「ふふ、これが私達の娘よ!」
2人のドヤリ顔がおかしかった。
「俺よりと言うより兄さんよりだろ!初めましてマリル、君の兄さんになるイアンだよ」
続いて次男のイアン様が顔を出した。
イアン様は21歳でヨハン様と同じ騎士団所属だ。
ヨハン様もイアン様もご両親のいいとこ取りでかっこいい。
たくましい体つきに頬が赤くなってしまった。
「えっと……イアンお兄様……よろしくお願いします」
恥ずかしくなりながらも兄と呼んでみた。
バタンッ!
するとイアン様が目の前で前のめりに倒れてしまった!
「イ、イアン様!」
慌てて体を揺すって見るとプルプルと震えていた。
「な、なにかありましたか!?どうしよう!」
私が慌てているのに他のみんなは気にするなと無視している。
「大丈夫よ、ただの病気だから」
「え!大変じゃないですか!イアン様掴まってください」
私が手を取って心配するとイアン様はニコニコと喜びながら鼻を押さえていた。
「可愛い妹にお兄様と呼ばれてしまった……死ぬ……」
なんかブツブツと呟いている。
「気持ち悪いから妹から離れな!」
すると後ろからゴツンとイアン様の頭に拳骨を落とす人がいた。
顔を上げるとそこには三男のカイン様がいた。
カイン様は19歳、ヨハン様とイアン様は武闘派な感じだがカイン様は頭脳派。
眼鏡をキリッとかけて髪をキッチリと整えていた。
「ふーん、君が妹になるマリルだね。僕はカインよろしくね」
カイン様は興味無さげに挨拶をした。
「は、はい。マリルと申します、カイン様よろしくお願いいたします」
私も真面目にしっかりと挨拶を返した。
するとカイン様は気に入らなそうに顔を歪めた。
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