第17話

『ユータ早くー』

 青い空だ。見上げた視線を徐々に下げると、原っぱが広がっている。明るい緑に所々黄色や白の点がある。花が咲いているんだろう。ふと見た足元にも白い花が咲いている。視線を原っぱの先に移すと、俺を手招く女の子の姿が見えた。白いワンピースから日に焼けた細い手足が伸びている。見覚えがあるその姿に胸がドキドキする。顔をもっと良く見たくて、そちらに焦点を絞った瞬間、その子はくるりと踵を返しドンドンと先へと走っていく。揺れるおかっぱの頭が小さくなっていく。

『待ってー』

 そう叫んだ俺の声はとても甲高くて幼い。手を見ると、小さくて良く日に焼けていた。

『はーやーくー』

 俺を呼ぶ懐かしい声がする。

『待ってよ、フウ』

 そう言って走り出した瞬間に地面がぐにゃりと柔らかくなった。

『ウワッ! アァー!』

 驚きの声を上げて藻掻く俺の足が、ずぶずぶと地面に飲み込まれていく。

『ヤダ、ヤダヤダヤダ、助けて! フウー! ワタルー!』

 ほとんど泣き叫ぶ俺を嘲笑うように、地面はあっという間に小さな体を飲み込んだ……——

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