まじない花占術師の秘め事
青木桃子
第1話 玲玲 占い学校に通う
わたしの名前は
わたしは小学校を卒業して、春から日本にある占い学校に通い始めました。
「どうして占い学校なの?」
友だちは聞く。
「わたしのママは花を使って占う
占術師の育成学校は、午前は普通科の授業を受け、午後は占術授業になります。占いにも種類があって、三年間で複数の占いの授業が受けられるのです。
手相、四柱推命、風水、星占い、タロット占い、
花占術コースは占いと
***
「玲玲」
隣の教室から、サラサラの茶色の短髪。わたしを見つけると少し長めの前髪から薄茶色の柔和な切れ長の瞳をのぞかせた。
幼馴染みで
同級生の紫釉くんは台湾で店舗経営している薬屋の息子だ。噂では、やんごとなき一族のため、命が狙われないようにと息子だけ日本に留学させたとか。
占術師の学校には、薬学部もあって、紫釉くんは
「紫釉くん。もう授業が終わったの?」
「うん、玲玲を待っていた」
彼が小学生の頃は美少年とも美少女ともいわれていたが、中学生になり手も足もスラリと伸びてすっかり男の子らしくなった。廊下の壁にもたれかかっていて学生鞄を持ち直すと、茶色の髪がキラキラゆれた。
「じゃあ、一緒に帰ろうか」
「ちょっと、玲玲!」
ふり向くと最近仲良くなった、同じクラスの黒ぶちメガネをかけた鈴木
「なに? あの男の子、玲玲の彼氏さんなの⁉ めちゃくちゃ美形でアイドル級にカッコイイんだけどっ!!」
「
「それは彼氏だよ! いいな。どうやって両想いになったか今度教えてね。幼馴染みで彼氏。理想だよ~。わたしも早くイケメン彼氏がほしいな」
「……じゃあ。紫釉くんを待たせても悪いから、行くね」
寮の門限は十八時、学校から寮に着くまでがささやかなデートだった。田んぼの
台湾人であるわたしの
「お母さんとは連絡が取れているのか?」
「もちろん。ママとは毎日、電話でしゃべっているよ」
紫釉くんはいつも自分よりわたしを心配してくれる。自分だって、両親と離れて暮らして寂しいはずだ。たしか彼には台湾に
「相変わらず、深夜まで勉強しているんだろう。目にクマができている。玲玲は頑張り屋だから、無理すんなよ」
「紫釉くんだって、もっと大変そうな薬学の勉強を頑張っているじゃない」
「僕はいいんだよ。薬屋の息子だから」
彼は包み込むような眼差しでふっと笑い玲玲の頭をポンと触った。
(んきゃー。照れる! どうして紫釉くんったらさりげなくそんなことできるの? 育ちが違うの⁉)
ほぼ日本で育った紫釉くん、いつもこんな感じで優しいのだ。
でも、顔が曇った。
(本当はこのままではいけないと思っている)
――実はわたしには秘め事があった。
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