名も無き陣と名も無い人に起こる悲劇

bbキャンセル君

俺の陣の話をしようか

名無しの陣。

相手の存在を消す能力を持つ生き物。

陣は陣使いの精神を参照して生きている。

思想、怒りなど全て伝わる。

だから・・・・

例えば俺があいつを殺したい。そう軽く思うだけでも

陣は素直に動く。

例えるならすぐに手が出る奴みたいな存在だ。


そうだ一つ俺の罪を聞いてくれ。

俺はまだ陣の使い方があまり上手くなかった時に

一回やらかした事がある。


昔友達とつまらない事で喧嘩したんだ。

就職が決まった友達と決まらない俺。

イライラと焦りが募っていた中、友人が気を利かせて

大丈夫だよ。お前なら出来る!

そう悪気の無い笑顔で励ますように言う彼だが、残念な事にそれは煽りにしか聞こえなかった。


拳をギュッと強く握りしめ声を荒げた。

「ふざけるな!嫌みか?!俺を笑ってんのかよ!?ああそうだよな。お前は気が楽だよな!!でもこっちは全部落ちたんだ!!お前に何が分かるんだよ!!?」

そんなつもりじゃあ・・・と否定をする。

その後に申し訳なさそうにごめんと謝られた。

オレンジの夕日が妖しく揺れる。まるで先の未来を見通した様に。

留まりもしないどす黒い感情が頂点に達する。

死ねばいいのに。


そう無意識に思った時、ハッと我に返り青ざめる。

「待て!!違う!!今のは!!」

陣に停止の命令を命じる。

が陣は無慈悲にも姿を現し、すぐに命令を遂行した。

急に叫ぶ俺の事だけを心配そうに見つめ

どうしたんだ?

と聞かれた時

彼の姿と今までの記憶が一瞬で消えた。


あ・・・ああぁ・・・・あ・・・れ?


思い出せない。

何かを忘れてる。

スマホを取り出し、予定表を確認する。

真奈川 祐二まながわ ゆうじと遊ぶという事が書いてあるのを見て

涙がポタポタと落ちる。


ごめん。ごめん。ごめんなさい。

俺が犯した罪は許されないだろう。

この世界から真奈川 祐二という存在が消えた。

誰も、彼の姿を思い出す事はない。


親も、知り合いも、俺でさえも忘れかけたんだから。


陣は怒りと後悔を食べた。

また一段と強くなった陣とその反面、何かを失った俺。


ごめんな。

これは乗り越えられない出来事なんだわ。




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名も無き陣と名も無い人に起こる悲劇 bbキャンセル君 @aiumi

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