第19話 新武器
「うーん、どれがいいかな?」
サリナは並べられている色々な武器を見ながらどの武器が良いのか悩んでいるようだった。
そして、俺も自分の新しい武器を何にするか悩んでいる。
「俺たちって剣を使ってるから次は遠距離武器でも良いような気がするな」
「たしかに。でも、魔物が急に速度を上げて目の前に来たら咄嗟に武器を持ち替えるのは大変だから遠距離にも近距離にも強いような武器がいいなぁ」
「そうだね。しかも、今深層にいるバケモノは速いらしいからな」
遠距離にも使えて近距離にも使える武器か。
本当は弓とか使ってみたかったけど、弓は完全に遠距離専用武器だしな。
そんなことを考えながら店内に並べられている色々な種類の武器を見ていると、奥の方に並べられている武器を見つけた。
そこには、『新商品! 変形武器』と書かれたプレートの下に弓の形をしたもの、銃の形をしたもの、剣の形のものなど色々な武器が置かれていた。見た目は普通の武器と何の変りもないがどこが変形するのだろうか。
「なあサリナ。これ見てくれ」
「何これ! 変形武器? 初めて聞く武器だね」
「少し気になるんだよな」
「変形武器って言うくらいだから、どこかが変形するんだとは思うけど」
「これも試していいんだよな?」
「良いと思うよ」
俺は黒色基調にピンクで桜の柄がデザインされた弓を手に取る。
「その弓のデザイン良いね! 私、桜とか好きだから」
「そうだよな。俺も桜好きだからこのデザイン割と好きかも」
持ってみても普通の弓と何も変わらない感じだな。
俺は目を凝らしながら弓を調べる。
「あ! ユウくん、そこ!」
サリナが俺の持つ弓の持つ部分を指差す。
そこには、黒色の小さなボタンが付いていた。
恐らくこれを押せば、この弓のどこかしらが変形するのだろう。
「ありがとうサリナ。それにしても良く気づいたね」
「本当に偶然だよ」
「押してみるね」
「うん!」
このボタンの位置、よく考えられているな。
戦闘中でもすぐに押せるように弓を持っているときの人差し指のすぐそばに付いている。
俺は人差し指でそのボタンを押す。
「うおぁっ! なんだなんだ!?」
「弓の一部とかじゃなくて全体的に変形してない?」
「本当だ。どうなるんだこれ」
弓は変形していき、最終的にハンドガンサイズの銃へと変形した。
しかも、変形に要した時間はわずか五秒ほどだった。
ハンドガンサイズの銃なら近距離にも対応できる。
これは遠距離と近距離の両方で戦える武器なのかもしれない。もしかすると、俺は凄い武器を見つけてしまったのではないだろうか。
「ええええええええええええええええ!?!?」
隣で見ていたサリナもかなり驚いているようだった。
まあ、こんなの見たら誰だってビックリするよな。
他の武器屋にも今まで何度か足を運んだことはあるが、こんな武器が売られているのは見たことがない。やはり、俺は最高に運が良い。
でも、試しで撃ってみたいな。
「サリナも変形武器にする?」
「そんなカッコいいの見ちゃったら選んじゃうよ」
「だよな。変形武器も色んな種類があるみたいだし、サリナが好きなやつを選べばいいと思うよ」
サリナも変形武器を気に入ったようだった。
俺は弓と銃の両方の性能を持つ変形武器にしたが、サリナはしばらく長考してから斧と狙撃銃の性能を持つ変形武器を選んだようだった。
狙撃銃が斧に変形しているときもサリナは目をキラキラ輝かせていて、まるで欲しかったものを見つけた子供みたいだった。
「試し振りは許可されたけど、試し撃ちはどうなのかな?」
「それは俺も思った。聞いてみる?」
「うん、そうしよう」
サリナも俺と同じく試し撃ちがしたいと思っていたようで、俺たちは武器屋の職人に聞いてみることにした。
作業場にいる男性を呼ぶとすぐに出てきた。
「もう決まったのかい?」
「いや、そうじゃなくてこの変形武器の試し撃ちをさせてもらえたりしないですかね?」
「お! その武器に目をつけるとは見る目があるね! こっちに来な」
男性について行くと、店の奥に試し撃ち専用の射撃場についた。
「ここを使っていいんですか?」
「使っていいも何もここは試し撃ち専用の射撃場だからね。好きに使いな」
「ありがとうございます!」
まずは弓の状態の変形武器を使う。
狙いを良く定めてから、撃つ。
すると、弓矢が狙った場所へと一直線に放たれた。
凄い……。
なんて威力だ。
これに俺の魔法も合わせたら、最強の攻撃が生まれるのでは?
次は銃だ。
ボタンを押し、銃に変形させる。
そして、また狙いを定めてから引き金を引く。
ズドンッという体に響くような深い音を響かせながら銃口から弾が放たれた。
その威力は予想をはるかに上回るものだった。
(これ、ハンドガンの威力じゃないだろ。強すぎる……)
「サリナも試し撃ちしてみたら?」
「そうする」
サリナも狙撃銃と斧の性能を持つ変形武器の試し撃ちをしたのだが、俺の使用した変形武器と同様に高火力だった。
サリナの「すごいすごい!」と嬉しそうに飛び跳ねている姿は見ていてとても可愛かった。
「「これ、買います」」
俺とサリナは声を揃えてそう言った。
支払いを済ませた後は、深層のバケモノをどうすべきか話し合い、他の冒険者やダンジョン配信者にもこの情報を教えることに決めた。
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