第3話 バズってました
「ダンジョン配信するからカメラとかも買わないといけないよね~」
「ああ、そうだな……って、何普通に俺の部屋でくつろいでるの?!」
「玄関でずっと立ち話するのも疲れるからね。それとも、ダメだった?」
「いや、ダメではないけどさ……」
如月サリナはずっと立っていることに疲れてきたらしく何故か俺の部屋に入り、ベッドの上に腰かけている。
だが、俺も相当甘いのだろう。彼女の上目遣いにはどうしても勝てる気がしない。
彼女も別に悪い人ではないし、これからは共にダンジョン配信者をしていくことになるのだ。部屋に入れるくらいはしても良いのかもしれないな。
俺がそんなことを考えていると、彼女はハッと思い出したようにあることを聞いてくる。
「そう言えば、私がモデルだってこと知らなかったみたいだけど、テレビとか見ないの?」
「あー、ニュースくらいしか見ないかも」
「なるほどね。そりゃ私のことを知らなくても納得だね」
自分から招き入れたわけではないが折角部屋にあがってもらったので何も出さないのは悪い気がした俺は茶をいれて差し出した。
彼女はそれを受け取り、綺麗な姿勢で美味しそうに飲む。
彼女が茶を飲む瞬間でさえも美しく、まるでお姫様のようだった。
「如月さんはずっと姿勢がいいね」
「まあ、モデルの仕事をしていると自然と綺麗な姿勢が体に染みつくんだよね」
「そうなんだ。有名人も大変だね」
「まあね。それと、如月さんじゃなくてサリナって呼んでよ」
「え!? まだ知り合ったばかりなのに?」
「知り合ったばかりだとしてもこれからは一緒に配信する仲間。
「たしかに。じゃあ、わかったよ……サリナ」
「うん、よろしくねユウくん!」
俺は彼女のことをサリナと呼び捨てで呼ぶことになり、サリナは俺のことを勝手にではあるがユウくんと呼ぶことになった。
呼び方を決めたことでサリナは機嫌良さそうに鼻歌を歌いながらスマホで何かを見ていたのだが、急に俺の方にその画面を見せてきた。
そこには、何やらダンジョン内での出来事をまとめた記事が載っていた。
「ユウくん、さっき私に有名人も大変だねって言ったよね」
「え、うん、言ったけどそれがどうかした?」
「もうユウくんもこちら側の人間なんじゃない?」
「それって、どういうこと?」
「この記事をよく見てみなよ」
その記事をよく見ると、何故かダンジョンで戦う俺の姿が載せられていた。
これは、サリナを助けた日の記事じゃん!
え、でもあの時周りにはサリナ以外には誰もいなかったはず。
どういうことだ……?
俺が困惑しているとサリナが何故か嬉しそうに答えを教えてくれる。
「あの日、ダンジョン日本支部の公式チャンネルがダンジョン内を配信していたらしくて、偶然ユウくんが私を守って魔物と戦っているところがダンジョン内に設置されてるカメラに映ってたらしいんだよね。それで、そのとき配信では大盛り上がりだったらしくて記事になったってことだね」
「えええええええええええええええええ!?!?!? そんなことってある!?」
「ネットでも大反響らしいよ。これでユウくんも有名人の仲間入りだね!」
「マジか……」
どうやら俺がサリナを魔物から守ったところが配信で盛り上がりを見せていたらしく、配信のそのシーンだけを切り抜いた動画などもネットに上げられ、拡散されていたようだ。
今、ネットで俺は結構有名な人になりつつあるらしい。
これからサリナと一緒にダンジョン配信者になるんだし、知名度が上がることは決して悪いことではないのかもしれない。
「これは、バズったってやつだね」
「まあ、そうなるんだろうな。俺はネットでどう思われてるんだ?」
「悪い意見は全然見当たらなかったよ。かっこよすぎ! とか、強すぎだろとかそういった意見が多いみたいだったよ」
ネットで悪い意見がほとんどなく、良い意見ばかりだと聞いて俺はホッとした。
これで安心してサリナとダンジョン配信を始めることができる。
もし、ネットで悪い意見が多かったら俺はすぐにはダンジョン配信を始めていなかっただろう。だって、もし俺たちが配信活動を始める前に悪い意味で有名になっていたら初配信の時点で多くのアンチコメントで溢れかえっていたはずだ。
だから、今回のバズり方は俺たちのこれからの配信活動を良い方向へと進めてくれるだろう。
俺が安心したことに気づいたのかサリナはベッドから立ち上がり、俺の前まで来る。
「それじゃあ、早速ダンジョンにでも行ってみる?」
「もう配信始めるの?」
「いや、さすがにまだ始めないよ。でも、配信始める前に何度か二人でダンジョンに潜って連携力を上げておいた方が良くない?」
「たしかにそうかもしれないね。連携力が浅い状態でダンジョンの深くまで潜って魔物にやられたって話もよく聞くし、連携力はできるだけ高めたいね」
俺とサリナは部屋を出て、近くのダンジョンへと向かうことにした。
これが初めての二人で行くダンジョンになる。
上手くいくのか分からない不安も少しはあったが、俺の心の中はそれ以上に二人でどれだけ戦えるのだろうかというワクワクの方が大きかった。
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