3-3:ゲット
第七層のモンスターは強かったけど、なんだかんだ言ってあたしは階層ボスを倒していた。
「剣舞!」
スキル発動と同時に周りに桜の花びらが舞うようなエフェクトが発生して、踊るかのように剣を振りボスモンスターであるデーモンスフィンクスを切り刻む。
【呪い】の魔法を持つこいつは、常に相手を状態異常にするけど、天性騎士のあたしには状態異常を無効化する事が出来る。
更に毒や麻痺、混乱と言ったモノも回避できるからデーモンスフィンクスにとってはあたしは天敵となる。
漸っ!
漸漸漸っ!!!!
踊るかのごとく攻撃をし、蝶の様に相手の攻撃をかわし、そしてとうとうあたしはデーモンスフィンクスを倒す。
『ぐろぉおおおおぉぉぉぉぉっ!』
どさっ!
パーンッ!!
倒れると同時にバラバラになって消えて行くデーモンスフィンクス。
通常のスフィンクスよりずっと強いけど、もうあたしの敵ではない。
あたしは剣を鞘に納める。
するとアイテムがドロップしたようだ。
「お、なんか落したな」
あたしがドロップアイテムを拾おうとしたらナビさんが通知してきた。
―― 経験値が一定の数値に達しました。天性騎士レベル100になりました。上位職にジョブチェンジ出来ます。上位職にジョブチェンしますか? ――
来たぁーっ!!
とうとう天性騎士レベル100になった!!
これで騎士系最後の職業、神性騎士に成れる!!
この神性騎士は神の力を宿した騎士で、騎士系の最強職業。
後は神性騎士のレベルをあげればステータスもどんどんと上がり、最強の騎士に成れる。
「なるなるなります!」
―― 上級職業、神性騎士にジョブチェンジをします ――
ナビさんのその声におなじみの足元に魔法陣が輝き出し、あたしの身体が動かなくなる。
そして光が全てを包み込み、パッと光ってその光が拡散して神性騎士の姿のあたしが現れる。
「ほほぉ~、これが神性騎士ね? なんか金色の目立つ鎧に背中にこれって…… 羽じゃなくて後光?」
女神が鎧を着込んだ姿と言えば分かるだろうか?
そんな姿のあたしの後ろになんかうっすらと明るい輪っかが輝いている。
一応振り向くとその様子が見れるけど、背中にくっつくのではなく浮いているようになっているのでぶんぶん体を動かしても剝がれる事無くくっついてくる。
まあそれはいいんだけど、この姿かなり目立つな……
「うーん、もっと目立たない感じに出来ないのかな?」
―― メイン職業を他のものにして神性騎士をサブの職業に登録すれば目立たない格好になります ――
あたしの疑問にナビさんは即座に解決方法を提案してくれる。
なるほど、スキルやステータスはそのまま使えるからメインだった騎士系をサブにすればいいのか。
あたしは早速言われた通りメインを「影の実力者」にしてサブに「悟る者」と「神性騎士」を登録すると・……
―― イレギュラーが発生しました。系統違いの職業の登録によるバグが発生しました。安全の為直ちにログアウトしてください。繰り返します、イレギュラーが…… ――
「はいっ!? 今更イレギュラーって、今まで大丈夫だったじゃないの!?」
ナビさんのその警告に驚くあたし。
だって今までそんな事は無かった。
一体何が?
慌ててシステムを呼び出し、その設定を見てみる。
目の前にウィンドウが開いて設定について色々と出て来るけど、系統違いの職業選択した為かあちらこちらのスキルが赤くなってアラートが表示されている。
これってどう言う事?
そう思い画面の端を見るといつの間にか更新がされていてVer、が上がっているぅ!?
「まさか、バージョンアップによるバグ修正が今頃効いて来た? でもそうするとあたしのキャラってどうなっちゃうのよ!?」
まずい、今まで出来たから色々とアクロバット的な事やっていたけど運営さんがその問題点に気付いたか?
そうすると最悪あたしのこのキャラが凍結か何か喰らって動けなくなるのか?
そんな、せっかくここまでレベル上げとか頑張って来たというのに!!
―― 系統違いによるスキル及びステータスの使用が出来ないため、統合及び廃止をします。これにより最適化されたスキル及びステータスに変更となりますが宜しいでしょうか? ――
ナビさんが自己修復する為にそう提案をしてくる。
もしこれがうまく行けば失うスキルやステータスの優位性が無くなるかもしれないけどせっかくここまで育てたキャラクターがダメになるよりはましだ。
「もうそれしかないわね、お願いやって」
―― 了解を得ました。これよりスキルの統廃合、ステータスの調整に入ります。しばらく動けなくなりますがログアウトせずにこのままお待ちください ――
ナビさんはそう言って早速スキルの統廃合、ステータスの調整を始める。
せっかく使えるスキルとか有ったけど、仕方ない。
あたしは大人しくナビさんのそれが終わるのを待つ。
―― 使用が出来なくなったスキルを確認します。廃棄するスキル同等のスキル検索、合致するものが無いので合計スキルと同等のスキル取得、攻撃系の最強特別スキル『覇王』を取得しました。同様に闇系の特別スキル『深淵なる者』と取得しました。同様に『天空の加護』を取得しました…… ――
ん?
なんか聞いた事の無いようなスキルがどんどん取得されている?
そしてスキル表示していたウィンドウの赤くなっていたスキルが次々と消えていく。
どんどん統廃合されていって、今まで保有しているスキルが大体三分の一くらいにまで減ってしまった。
―― 続いてステータス補正に入ります。現職業及びサブ職業に適合したステータスに変更いたします ――
そう言ってなにやらステータス画面がごにょごにょと動き、適正職業が提示されるけど、ことごとくそれらが消えて行き上位職業しか表示されなくなっている。
ああ、さらば私が獲得した職業たち。
これで冒険者引退後の街で錬金術師でもやろうとしたスローライフも出来なくなる。
多分このゲームをやり続ける限り冒険者しか出来なくなるのだろうなぁ……
「でも系統を『やり直しシステム』で戻して、もう一回職業を取得すれば……」
―― 統廃合の整理が終わりました。Ver、アップにより『やり直しシステム』が使用できなくなりました。今後は初期設定で選んだ職業しか選択できなくなりました ――
「うげっ! マジッ!?」
―― マジです。しかしながら既に取得された職業はその上位職業に過去の職業のスキルやステータスは含まれますので以前獲得済みであればそのまま使用できます ――
何と!
それじゃぁ見かけは上位職だけど下位の職業のスキルやステータスはそのまま使えるから、今までの苦労は無駄じゃなかったんだ!
「あっぶなぁ~、もし以前取得した職業やスキル、ステータスが使えなくなったらこのゲームやめようかとと思っちゃったよ。でもこれなら今まで通りに遊べるかな…… って、なんじゃこりゃぁ!?」
あたしは自分の姿を見て驚く。
先ほどはメイン職業を「陰の実力者」にしてサブ職業に「神性騎士」と「悟る者」にしていたのに、「陰の実力者」の黒マントに黒づくめと言う格好からだいぶ明るい色になっている。
それだけじゃなく、なんか胸が大きくなって下が見えずらい。
「こ、これって……」
―― 適合する職業が無かったので、全ての系統が統合された状態になっています。ステータス補正による身体の変化もありましたが、今までのステータス値を確実に超える状態になっています ――
ナビさんに言われて体を動かしてみる。
全てのステータスが上がっているので、感覚がちょっと違うけど、なんかしなやかに動ける。
さらに女性としてもかなりフォルムも何も向上しているようで、完全に大人の女性状態。
服装もやたらと露出が増えた黒を基調路した所々明るい色も入った感じでもの凄くセクシーな感じ。
何なんだ何なんだこれは?
―― 職業ギルガメッシュとなりました。全ての職業の王となります ――
「はいっ?」
聞いた事が無いその職業。
何それ全ての職業の王って何?
「あの、全ての職業って何?」
―― マジカリングワールド内で取得できるすべての職業スキルが使えます。項目が多すぎる為、最上級スキルに集約されました。また、ステータスも最上級状態となり、ベータ版にて試作されたギルガメッシュが最適となり、保管されていたデータを引用しての職業を使用する事となります ーー
なんじゃそりゃぁ!?
全部って、しかもベータ版のデーターって事は通常のデーターには存在しない職業てことじゃん!!
え、ええぇ?
だとすると今のあたしって……
「マジカリングワールド最新版で存在しない職業?」
―― はい、そうなります。しかしながら試作データーであるベータ版は現マジカリングワールド内でも使用可能ですのでゲームの継続は出来ます ――
いや、ゲームが続行できるってのは良いとして、これってどうなって……
「ぶっ! なにこれ!!!!」
何気にすぐ横にまだ開かれているウィンドウを見て噴き出す。
ステータス画面だったけど、HPが99999、MPが99999になっている。
更にそのステータス値だけど、全部同じく99999になっている。
つまり表示される数値のすべて最大値になっている!!
「こんな、これってこの世界じゃ最強どころかどんなボスモンスターにも負けない数値…… これじゃぁ神か!?」
―― 職業ギルガメッシュはベータ版で神にも等しい能力を持っていた為凍結された職業です。しかしながら現在保有している職業に相当する職業が無い為既存のデーターを検索、最適職業の引用をしました。問題がありませんか? ――
いや問題だらけだけど、これであたしはこの世界で神同然の力を得た事になる。
「問題…… 無い! これで行こう!!」
―― 了解いたしました。職業ギルガメッシュを取得。最適化を終了いたします。引き続きマジカリングワールドをお楽しみください ――
ナビさんはそう言って静かになった。
「ぐふ、全ての職業の最強…… しかもこのステータス。いよぉっしぃーっ! あたしの時代が来たぁーっッ!!!!」
思わず小躍りしたくなるほどうれしい。
もうチートなんてもんじゃない。
これでやりたい事が何でもできる。
「マジカリングワールド、最高じゃん!!」
そう浮かれていたあたしの足元で何かがぶつかる。
気付いてそれを見るとさっき倒したデーモンスフィンクスのドロップアイテムだ。
あたしはそれを拾い上げて鑑定をすると拾い上げた途端呪いがかかって来た。
でもその呪いは即座に解除される。
「『魂喰らいの剣』? なになにこれで相手を攻撃するとそのダメージ分HPとMPを奪い取れる? 何このチートアイテム!!」
今装備しているのは錬成で作った剣だけど、攻撃力が補正される効果がある。
それだけでも強力なアイテムだけど、この剣は更にとんでもない。
「よっし、装備っと!」
ウィンドウを開いて装備する。
これで更にとんでもないキャラになっていく。
「ぐふふふふふ、じゃぁ早速試し切りしたいから下の階に行こうか?」
そう言うあたしの前に階下に行く扉が現れるのだった。
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