俺と君の結末はハッピーエンドだって決まっている

赤猫

俺と君の結末はハッピーエンドだって決まっている

死ぬまでにやりたい百の事なんて俺の好きな人は突然言ってそれが書かれたノートを見せてきた。

綺麗な字でたくさんのやりたい事が書かれている。


・ハジメくんと海に遊びに行く!

・ハジメくんと一緒にご飯を食べる!

・ハジメくんとご飯を一緒に作る!

・ハジメくんとゲームする!

などなど沢山書いてある。


「…俺とやりたい事ばっかり書いてあるけど、ユイはやりたい事ないの?」

「だって一人ぼっちでなにかやるのつまらないでしょ?いやいや言っても君は付き合ってくれるし」

「まぁ…一応コイビトですし?」


俺は自分で言っていると、恥ずかしくなってそっぽを向いた。


「素直じゃないねぇー?ハジメくん」

「うるさいうるさい」

「はいはい…ケホッ…」

「大丈夫か?!」


苦しそうに咳をするユイの背中を俺はさすることしか出来ない。

彼女の体は生まれつき弱かった。

外の世界に出る事も許されない、この消毒されている綺麗な部屋にしかいる事しか許されていない。

学校にも行けない通信制の学校で勉強をして過ごしている。

そんな彼女と出会ったのは、病院近くの公園で苦しそうな顔をしている姿を見て慌てて俺が駆け寄った時だ。

病院から脱走したきたと聞いた時はびっくりしたが。


「ごめんね迷惑かけてばっかりで…あのさやっぱり…」

「絶対に嫌だ」

「一緒に何かしたいって時は嫌だって言うのに…そういうのは了承しないんだから…」

「分かったなら大人しく寝ろ…次来る時は先生に外出許可貰えたらちょっとだけだけど出かけるぞ」


俺がそう言うと彼女は嬉しそうに頷いて勢いよく横になった。

俺はクスリとそれを笑って規則正しい寝息が聞こえるまでそばにいた。


・・・・


外に出れるということをユイに伝えるとすごく騒がしくしていた。

看護師さんに怒られていたのが面白かった。

車椅子に座れと言っても歩きたいと言っていた彼女を俺は担いで車椅子に座らせて外に出る。

俺はユイの体が軽くて落としそうになったのは言わない。


「ご飯ちゃんと食べてるのか?」

「えー?なに?どうしたの?」

「別に何となく」

「食べてるよ」

「なら良いよ」


変なのってクスクス笑って俺を見るものだから俺は速度を上げてやった。

楽しそうに「きゃー!」って言っているユイ。


「ジェットコースターに乗ったみたい」

「いつか本当の遊園地行こうな」

「…本当にハジメくん?悪い物でも食べた?」


ガラでも無いことを言った瞬間にこれだ。

彼女は目をパチパチと瞬きさせている。


「慣れてない事言ったらコレだよ…もう二度と言わん!」

「言ってよ!私嬉しいんだから…えへへ、ハジメくんと遊園地…」


ユイは鞄からノートを取り出して新しく遊園地に行くということを書き込んでいた。

そして書き終わったら満面の笑みを向けて俺の方を見る彼女を見て外に連れて正解だったな、って思った。


「あのさ…私、手術受けようかなって思うんだ」


突然彼女は口を開いた。

いつも笑顔で上がっている眉は下がっている。


「しばらく会えなくなるな」


今いる病院では受けられない俺が自転車で行ける距離ではなくて新幹線やらを使って移動しないと行けないレベルの遠い場所だ。

でもそこの病院は評判が良くてとても良い場所だと聞いている。


「偉いよお前はちゃんと勇気出してそういう選択が出来たんだから」


ユイの頭を俺は、撫でる。

鼻をすする音と目を拭うような仕草をしている。


「私が遠くに言っても浮気しないで待っててくれる?」

「待っててやるから泣くなっての」

「う゛ん゛」

「ひっでぇ顔だな」


テッシュを取り出して鼻をかむように促す。

勢いよく鼻をかんで彼女は、笑ってくれた。


・・・・


転院する前もユイは「浮気しないでよ!」と直接言葉でもメッセージでも送ってきた。

何回も何回もその度にしないと言っている。

電話でも言ってくるもんだからそろそろ本気で怒りたい。


「もしもし…今日は部活休みだけど」


コンビニにお菓子を買いに行っている途中で電話がかかってきた。


「外にはいるけど…だーかーら!言ってるだろうが!浮気してませんって!お前一筋だってゾッコンだってーの!」

「ふぅーん…嬉しいこと聞いちゃった」


いつの間にかツーツーという音を出して電話は終了しているのに後ろからはっきりと声が聞こえた。

しっかりと地に足をつけていて頬を少しだけ染めて帽子をかぶった女がいた。


「来ちゃった」

「退院日はまだ先って聞いたんだけど…」

「頑張ってリハビリとかしてたらこうなっちゃった…若いっていいねぇ」

「…言えよ迎えに行きたかったのに…」


先程自分が言っていた事を思い出して恥ずかしくなってきた。

顔が熱をもっている。

ユイはニヤニヤとしている。


「どこ行く?」


彼女は俺の手を握って笑う。


「コンビニ」

「私あずきバーね!食べてみたかったんだよね!あの釘をも打てる硬さのアイス」

「退院してきてそれ食べるのでいいのかよ」

「うん!そのあとはハジメくんの家に遊びに行く!けってーい!」


急に走り出そうとしたものだから俺は慌ててそれを止めた。


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