第2話 いつから書いてない?


 そう、きっかけは去年の夏の公募だった。2万字のホラーを書こうと躍起になっていたあの夏がきっかけという元凶というか。それまで公募といったら6000字程度のショートショートしか挑戦したことなかったのに、いきなり2万字。しかも見切り発車で書き始めて、何度も軌道修正してあっという間に〆切。でぎながっだ・・ってほろほろ泣いて心が折れた。もうあの物語のことは考えたくない。


 書きたい気持ちが膨れ上がって抑えられない。下り坂を羽が生えた気分でワ―ッて走っているように、書きたい気持ちのままキーボードを叩いている。文章を書いている時の私は、大人になりたがっている子供で、少ない語彙をかき集めて精いっぱい書いている。

 書きたい気持ちがどこから湧くのかはわからない。読んでいるから書きたくなるのか?書きたくなるから読んでいるのか。文章を書き始めたのは中学生の頃、それまでは姉と並んで絵を描いていた。しかし不真面目な私は、手のデッサンにこりごりして、誰でも手を出せる文章の世界へ渡った。当時読んでいた宮部みゆきの影響も大きいと思われる。私の価値観を育てたのは、宮部みゆきと伊坂幸太郎と森見登美彦だ。

 

 問題は、書きたい気持ちに実力が比例しないことである。物語が完成させられないのだ。事件は解決しないし、主人公は救われない。去年の夏、絶対に書くと心に決めた公募に間に合わず、私の自信は砕け散った。以来、新しい物語を書き始めても書き上げられない恐怖が付きまとうようになった。

 書くのはたまらなく楽しいからこそ「こんなに楽しいのに、完成しないゴミになったらどうしよう」とゾッとする瞬間がある。恐れながら書くのはストレスで、段々本当に書かなくなってしまう。頓挫恐怖症だ。


 いつから書いていない?いやいや、書いてはいるんだよ書いては。書き上げられてないだけで・・。思えば公募にチャレンジし始めた時に、一作目をつるっと書き上げられたのが僥倖だったのだ。そもそも書けない方が珍しくないんだ。中学生の時に書き始めて、高校生の時にようやく演劇部の脚本を最後まで書けた。まとも小説など書けた試しが無かったのに、〆切の強制力で命を燃やしたら書けたのだ。


 〆切の強制力は凄まじい。間に合わなかったところで誰にも迷惑はかけないし(公募なんで)、間に合ったところで世界は何も変わらないけど、それでも凄まじい。凄まじい分、間に合わなかった時の心のダメージは大きい。まるで紙くずにでもなった気分だ。紙くずが紙くずに完成しな文章を書き連ねております。ああ、エブリスタの妄想コンも間に合わなかったなぁ。


 noteで毎日エッセイを上げるようになったのは、物語じゃない日記のような文章ならいくらでも書けると思ったから。実際、昨日で100日連続投稿をなしえて、フォロワーも60人になった。このペースで続けて行けばきっともっと増えていく。描いたものが面白いかは読んだ人にしかわからないが、続けることは自信につながる。

 エッセイでも、書き続けていればいつか書く実力が身に付くだろうか?羽が生えた気分で下り坂を駆けて、そのまま飛んでいけるだろうか?


 そこんところに焦点を当てて、こちらでのエッセイも続けていきたい。


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