PHANTOM 赫焉のネメシス
そたまんplus
プロローグ「仕事だ。起きろ相棒。」
その日、巨大な隕石が地球に落ちた。それだけなら良かったのだが、その隕石は生きていた。
訂正する、それは隕石ではなかった。
それは······怪獣だ。
人類が怪獣どもに対抗するために開発された鉄の塊、それが
「仕事だ。起きろ相棒。」
〈メインシステム起動─
搭乗者確認─完了
型式番号─EFP-S5-03
識別呼称─HAVOC-H801
駆動チェック─完了
カメラアイ起動─
オートフォーカスシステム作動
バランス制御用ジャイロセンサ起動
操作モードをマニュアルに変更〉
ヘルメットに内蔵されている無線機から声が上がる。
『送信した座標にてパンドラ降下。識別はA1-R型と断定、搭乗者は出撃して下さい。』
「チェック完了。発進する。」
自衛隊基地の門を潜り怪獣が降下した座標まで向かう。俺の後ろには同じ部隊のファントムが隊列を組み重い音を立てて後ろを着いてくる。部隊内ファントムは俺含め9機だ。
格納庫から出ると目に入るのは荒廃した都市。要塞の外は怪獣によって破壊され尽くしていて、とても生活出来る環境では無くなっている。そんな景色を眺め移動しながら数十分。巨大な動く物体を見つけた。間違える筈がない。怪獣だ。
「目標座標付近に到着。怪獣確認。A班は俺と共に奴を引き付け指定座標まで誘導、B班は奴の側面から迎撃しA班の援護、C班は指定座標に先回りしてくれ。各班行動開始。」
部隊各員から承諾の返事を聞きこちらも行動に入る。
目標怪獣は一体。今までの怪獣の平均より小さい方だが、しかしそれでもファントムの約3倍もの大きさがある。油断は禁物だ。
怪獣の頭にチャージランチャーの標準を合わせ発射。少し揺れただけで効いた感じはしない。だが注意はこちらに向いた。すかさずもう1発。他の仲間も同じ場所にレーザーを撃ち込む。
奴は完全に敵と認識したようだ。足元の瓦礫を持ち上げこちらに投擲するが、スラスターで機体速度を上げ回避する。
「A班移動開始!攻撃を休めるなよ!」
怪獣の方を向いたまま指定座標に移動を開始。奴も追ってきている。動き自体は遅い。B班もこれに加勢し怪獣に弾幕を張る。
『こちらC班。指定座標に到着。準備完了しました。』
「了解。C班はそのまま、合図が来るまで待機してくれ。」
ファントムの装備はチャージランチャーだけでは無い。しかし拠点の外は危険で資源調達は困難を極める。そのためエネルギー兵器であるチャージランチャーは使い勝手が良かった。だが、この装備だけでは怪獣を倒すことは出来そうにない。怪獣と戦うには資源の節約も考えた作戦にしなければならない。
怪獣を連れ回し指定座標の開けた場所まで誘い込む。
「A班、B班は退避!」
その合図を皮切りに攻撃を中止し、俺や仲間は一斉に怪獣から離れる。
「C班、今だ!」
怪獣の足元にあった地雷が起動、大爆発が起きる。こんなものを直で受ければ怪獣とて無事では済まされない筈だ。
「各班追撃開始!」
まだ黒煙で姿も見えないが、怪獣がいると思われる場所にレーザーの雨を降らせる。
煙が飛散し始めた頃、攻撃を辞める。怪獣はもう動きを見せない。
「作戦終了。怪獣を運搬をする。」
運搬作業をし始めた時、異変は起こった。
強烈な咆哮。それまでビクともしなかった怪獣が起き上がり。大きな口を開け中が光る。
「全員回避だ!」
咄嗟に叫ぶが間に合わない。怪獣から放たれた高出力の光が辺り一帯を焼き尽くす。
それに巻き込まれ回避し切れず吹き飛ばされる。体が突然の衝撃で悲鳴を上げ、苦痛に顔が歪む。機体はエラーの警告音をうるさく発信し装備も使い物にならなくなった。
「被害状況は!?」
すぐ本部に連絡する。
『全機ロスト!残っているのは大尉だけです!』
無線機から出た言葉は無慈悲なものだった。悲しむ暇もなく怪獣から2射目が来る。
「だったらッ!」
スラスターを全開にし突撃。怪獣にしがみつく。
「ハッ...ここまでだな、相棒。」
自爆装置を起動。2度目の大爆発をくらって、今度こそ怪獣が吹き飛ぶ。
後にその場所に残されたのはパンドラの残骸と大尉の乗っていたファントムの成れの果てだった。
しかしそこにコックピットブロックと大尉の死体らしきものは見つからなかった。
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