第10話 異常事態(3)

 マーヤは地下2階の探検を始めます。

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 地下室は広い貯蔵庫が一つあるわけでは無く、いくつもの地下室が階層を成してイガジャ邸の下に作られています。

 地表に近い部分には浄水と下水の石管が在るけど、地下深くの避難所までは岩が覆っている。


 そもそも、作られた目的が建国の争乱時イガジャ族の中心だったカカリ村が籠城するために必要な物資と村人の収容を考えて作られている。


 ですから多くの村人が生活出来るように、最低限の生活するのに必須の設備が備わっている。

 貯蔵庫の方は今でも使われているので、毎日使用人の出入りが在ります。

 でも、村人の避難場所の方は誰も入らない薄暗い乾燥した洞穴です。


 探検するために用意した物は、予備の松明と地下室の地図です、地図はカークレイ爺様が持ってます。

 暗闇対策はマーヤかポリィーが灯りの魔術を行使します。


 各自で水筒や簡単な食料は持参する事に成ってます。

 マーヤが言い出しっぺなので、皆の分のお菓子や飲み物は別に用意してます。


 ここは何か所かある地下室への出入り口の中で、使用人が不気味な音がすると言っている場所です。

 ここから村人の避難場所へ通じる下り階段が扉の向こうに在ります。


 「魔女っ子隊長、出発前の景気づけじゃ一言頼むぞ。」

 カークレイ爺様の楽しそうな言葉で皆の前へ押しやられてしまいました。


 「エー、今日は不気味な音の原因を探る地下室探検にお付き合い下さってありがとうございます」

 何か話さなければならなくなり、とりあえずお礼を言います。

 前に控える4名は、皆マーヤを注目しています。


 マーヤの左から、アントニー様、ダルトシュ様、魔女のポリィー、カークレイ爺様の順番です。

 何気にすごい部隊では無いでしょうか、魔女が2人、竜騎士が2人、元領主が1人。


 「今日の予定は、此の先の階段から降りた先に在る村人の避難場所を上から順番に最も下の地下3階まで調べて、不気味な音の発生原因を突き止める事です」

 「原因が分れば、冒険は終わりです、音の発生原因をその場で取り除くことが可能なら対処しますが、難しそうなら後日改めて対処する事に成ります」


 「後、地下室へ降りてからに成りますが、暗視と言う魔術を隊員に掛けます」

 「この魔術は暗闇の中で弱い光でも良く見える様になる付与を視力へ行使します」

 「シノビの術(スキル)でも暗視が在りますが、同じものです」


 「魔女っ子殿、暗視の術は他人には掛けられんと思ってたが出来るのか?」

 アントニー様が不思議そうに聞かれます。


 「はい、魔術ですから他人への付与として行使できます」


 「そうか、術(スキル)じゃなくて魔術か」

 ダルトシュ様も何か納得されている様子です。


 「隊列ですが、カー爺様、地下へ入って行く順番をどうしましょ?」


 「そうじゃのう、先頭はアントニーお前がいけ、その後ろが儂じゃ、魔女っ子は儂の後ろじゃ、で魔女っ子の後ろに魔女殿が続き、最後がダルトシュが後ろを守るんじゃ。」


 「「ハッ。」」、「はーい」、「かしこまりました」

 順番が決まった事で、各自最終点検をして、出発する事にしました。

いよいよ地下室探検の始まりです。


 扉を開けると、「ゴーーーッ、ゴゴゴゴッ」と不気味な音が聞こえる様になりました。


 「なかなか不気味な音ですね。」とアントニー様がその音を聞いてつぶやきました。


 「うむ、話には聞いていたが実際に聞くと確かに不気味じゃな。」

 カークレイ爺様迄不気味だと思っているみたいです。


 灯りの魔術を行使して灯りを2つ前後の上に出します。

 「カー爺様、行きましょう原因を探さなくっちゃ」

 後ろからカークレイ爺様へ声を掛けて前へ進むように言います。


 「うむ、そうじゃな、灯りも点いたし、そろそろ行くとしようか。」

 カークレイ爺様の声で、先頭のアントニー様が階段を降り始めました。

 アントニー様に続いてマーヤ達も降ります。


 階段を下りた先は小さな広間が在りました。

 「此処ここは、領兵の待機所跡じゃな、村人が避難している時は此処ここに領兵が何人かめる事に成っとる。」

 「ここから先はスロープに成っとる様じゃ、滑らんように気を付けなければな。」


 「少し待っていただけますか、今から暗視の魔術を皆さんに付与しますね」

 マーヤは皆が広間に降り切ったので、魔術の行使を全員にした。

 無詠唱で行ったので、行使された方は良くわからなかったようだが、魔術の効果が出ると一斉にため息が出た。

 「「オウー。」」、「これはすごいです」、「なんとな。」


 灯りの魔術の明るさを下げても周りが良く見える。


 この広場は一時物置に使われていたのか、農具と思われる古い型のすきや椅子やタンスなどが壁際に並べて置いてある。

 蜘蛛の巣が張ってあるので形が分かる程度だが、全て古そうだ。


 上からの階段が終わる場所から見て対角線の先が下へのスロープの始まる通路に成って居る、ドアは無い。

 平な石を敷き詰めた坂が下へと続いている。


 「カー爺様、何で滑りそうな坂道なの? 階段の方が歩きやすいと思うけど」


 「これも防御の一つじゃよ、下から攻める敵が足を滑らせば、下まで転げ落ちてしまうじゃろ。」


 「この坂滑りそうで怖いわ」


 「斜めに歩いてごらん、壁から壁へと斜めに歩けば少しは歩きやすくなるじゃろ。」


 「真っ直ぐ降りるよりずいぶん降りやすくなったわ、でも滑りそう」


 「では、足の親指に力を入れてごらん靴底が革でも効果的じゃぞ。」


 「不思議に滑りにくくなった気がする、これもシノビの技?」


 「山歩きの技じゃな。」


――――――――――――――――――――――――

 いよいよ地下室の構造が分ってきましたが、音の発生場所と原因は未だ先の様です。

 次回はいよいよ原因と発生場所へ近づきます。

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