小さなエルフの子 マーヤ

迷子のハッチ

魔術師、異世界をソロで往く 過去編第三部 神聖同盟の国々を往く

第1章 イタロ・カカリ村

第0話 始まりの物語

 小さなエルフの子マーヤの物語です。

 魔術師、異世界をソロで往く 過去編第三部のお話ですが第二部の合間を縫っての更新となります。

 更新速度は遅めで不定期になりますので、最初にお詫び申し上げておきます。

――――――――――――――――――――――――

 マーヤはここイタロ・カカリ村の領主館の1室に住んでいる。

 父は死んだと聞かされた、母は遠く離れた王都ウルーシュにいる。


 マーヤは走る。


 領主館から竜騎士学園へ下る階段を、一段飛ばしにかける。

 階段の終わりにある門を抜ければ、竜騎士学園の飛竜舎裏だ。

 門番はマーヤが来るのを見て門を開けてくれている。


 門番に「ありがとうー」とあいさつして、止まることなく走りぬける。

 門番も「ちこくするなよー」と返してくる。


 飛竜舎の先にある飛行場の更に先に、竜騎士学園がある。

 その学園の屋根の上に見える、白い箱型の建物へ向かって走る。


 運動場にもなる飛行場のはしをさらに速さを増してかけける。

 飛竜学園の建物は1階だけで長く伸び、飛行場の終わる城壁まで伸びている。


 飛竜学園の領主館側は崖との間が通路になっている。

 裏へぬけると、広い庭園とその中に点在する豪華な屋敷がある。


 豪勢な屋敷は全部で5つあるのだが、マーヤのいる崖側からは庭園の木々に遮られて屋根しか見えない。

 庭園と白い建物の間は、ツツジやナナカマドなどの低木の木々で区切られている。


 崖沿いの道は庭園を突っ切って道が続いている。

 その通路の先に白い建物への通用門がある。


 マーヤの目的地はまだ見えない。

 通用門を警備している領兵に挨拶をして開けてもらう。

 「おはよう!」


 「おはよう、魔女候補殿、病院内は静かにな!」

 毎朝のやり取りで顔見知りの領兵からいつもの注意が飛んで来る。


 「はーい」

 元気な返事は何時もと同じ、でも速さを抑えて心もち静かに早歩きする。

 領主館の崖沿いを、白く四角い3階建ての病院との間の道を足早に歩く。


 病院の裏は小さめの庭園で、木造の2階建ての建物がある。

 木造の建物を囲う茨の垣根、垣根沿いにある道を急ぎ足で歩く。


 「どうしよう、遅刻しちゃうよ!」


 マーヤはこの先で待ち構えている光景を想像してげんなりする。

 「アンナ先生遅刻に厳しいからなぁ」


 息遣いきずかいも荒く、垣根かきねを急ぎ足で歩き終わると、ゆるい坂道に出る。

 坂道の下、左側に見えるのが目的地の魔女学園だ。


 坂道は止まれなくなるので急ぎ歩きのまま降りて行く。

 坂道の途中で学園側へ飛び下りる、1ヒロ(1.5m)位の高さだがマーヤの背より高い。


 飛び降りた途端、大声で叱られた。

 「こりゃ! 魔女っ子! ちゃんと門から入らんかい!」


 坂道を降りた先には裏門と言えど、魔女学園の門がある。

 大声でマーヤを叱ったロープ姿の老女は、魔女学園の園長先生も兼ねた大魔女様だ。


 「ゲッ、何でいるのかなぁ」

 聞こえない様に小声で愚痴ぐちってもこの状況はくつがえせない。


 「ごめんなさい」

 と直ぐに謝って裏門へ引き返す。

 見つかっては仕方ない、謝罪して、一度裏門から出て入り直す。


 「おはようございます、 おばば様」


 魔女学園もある、この魔女の城郭じょうかくぬし、大魔女のおばば様はお怒りの様です。


 「痛い! 痛い! 痛い!」

 容赦なくマーヤの長い耳を着ているロープのフードの上から、適格てっかくまみ上げてくる。


 「取りつくろっても、今更遅いわ! 遅刻の罰はアンナから受けるが好いが、不法侵入の罰は今下す!」

 引っ張る耳を摘まむ指先にねじりを入れて更に痛くしてきた。


 「ゴブリンじゃ! 大鬼オークじゃ!」

 つい、思った事が出てしまった。


 「口も悪いようじゃの」

 耳を更に上へと引っ張り上げられた。


 痛みでもう声も出ない、涙が目からあふれる。


 「良いか、魔女っ子、悪さをするなら、何度でも耳を引っ張ってやるぞ」

 「反省したのなら、門からの出入りを忘れるな!」

 コクコクと顔を上下に動かすと痛いので、まぶたで涙をきだしながら分かったと合図する。


 やっとまんだ耳を放してくれました。


 痛む耳を手を差し入れておおいながら、涙目でおばば様にうなずきます。


 おばば様からのお仕置きを受けた後、トボトボと教室へ入ります。

 勿論待っているのはアンナ先生からのお説教です。


 「2年生初日から遅刻とは、良い度胸をしてるな!」

 怒髪冠を衝くどはつかんむりをつくと言うかフードが揺れています。


 教室の同級生は「またか」と思っているようで、あきれた顔をしています。

 マーヤは、アンナ先生のお説教を受けながら、同級生の顔を見て寮生活の彼女達をうらやましいなぁと思った。


 何せ、寮に暮らしていれば、集団生活の中で起きるのも、朝食も、教室に来るのもみんな一緒。

 だから遅刻しても一緒に怒られるので、アンナ先生も5人を一度にお説教すのは苦手みたいだ。


 拳骨を頭に受けて、耳と頭のダブルパンチに涙があふれます。

 拳骨でやっとお説教が終わって席に着けます。


 「みんな、おはよう」声がやっと聞こえる位のかすれ声であいさつします。

 「「「「「おはようマーヤ」」」」」みんなの元気な声が帰ってきます。


 マーヤを含めてみんな今日(9月1日)から2年生、同級生は5人でマーヤを入れて6人のクラスです。

 教壇きょうだんのアンナ先生を囲むように半円に席に座っています。


 机は2人掛け、みんなに向かい合う先生の左側からマーヤ、カタリナ、マルーシャ、ロスティナ、リルュブ、カトルーシャの順になる。


 ちなみに左からの順番は身長の低い順となっている。


 魔女学園では制服は白いフード付きロープ、先生も学生も同じです。

 教室の中では名前を呼び合いますが、外では名前は呼びません。


――――――――――――――――――――――――

 過去編第3部小さなエルフの子マーヤ、始まります。

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