第22話 天使の化石

 「やりましたね、博士!」

 「うむ。ついに見つけたぞ。これぞ、まさに天使の化石! わしは確信しておったのだ。地球規模の天変地異によって滅びた先史文明。その時代には、子どもたちは皆『天使の羽』をもっていた。

 その時代の子どもたちはある歳になると一斉に天使の羽をその身につけ、羽ばたいて行ったという! そのことは記録からも明らかなのだ!

 それなのに、頭の硬い年寄りどもめ! わしのことを『もうろくじじい』だの、『妄想癖』だのと好き勝手に抜かしおって! もうろくしとるのはどっちだ!」

 「お、落ち着いてください、博士! こうして、とうとう証拠となる化石を発見したんです。博士の説は証明されたんです! もう誰も博士のことをバカになんてできませんよ」

 「ハ、ハアハア……。す、すまん。つい興奮してしまったな。そうだ。お前の言うとおりだ。ここに、わしの説は証明された。さあ、学会に報告するのだ。この天使の化石を世界中の人間たちに見せつけてやるのだ!」

 「はい!」


 そうして、博士とその助手の発見した『天使の化石』は世界中に公開された。誰もが、その姿に驚いた。

 『羽』と言うには不格好な、四角い箱を背負った子どもの化石。

 それは、先史文明を襲った天変地異に巻き込まれて土のなか深くに埋められ化石となった、ランドセルを背負った小学生……。


 ランドセルは……天使の羽。

                 完 

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