第48話:母とお泊りと行衣
花火大会が終わり、ちゃこ先輩の家族に皆で事情を説明しに行った所、土下座で謝られてしまった。
「「この度は本当にすみませんでした!!」」
「え、えと。頭を上げて下さい!」
「いいえ! うちの娘の不注意で佐伯さんに御迷惑をおかけするなんて!!」
「だから、それはちゃこ先輩が悪い訳じゃ無くあそこに
「ですが、佐伯さんのご両親に何と謝れば」
ご両親が申し訳なさそうな顔をしている。
「その心配は無いですよ……」
「「「!?」」」
ここに居るはずのない声が聞こえて振り返る。
「母さん!?」
「「えぇ!?」」
「何だ、大怪我したって連絡が来たから慌てて来たのに、ピンピンしてるじゃない」
「いや、まぁ何針か縫ったけどね」
「大丈夫よ、母さんも昔盲腸で縫ったことあるし」
「それは違くない? まぁ無事には変わりないんだけどさ。誰から連絡が来たの?」
「真白ちゃんと檸檬ちゃん、あんまり心配かけないようにね」
「そっか、後でお礼言わないとな」
「わかってるじゃない」
「それで、お二方頭を上げて下さい」
母さんの言葉にちゃこ先輩のご両親が頭を上げる。
「すみません、私達の不注意で、お宅の息子さんを傷付けさせてしまい……」
「それでしたら大丈夫ですよ、聞いてた感じだと不可抗力みたいですし、ウチの息子も可愛い女の子守れて本望でしょうから、ねぇ~」
ニヤニヤと笑って来る母さん、真白達とすし屋に行って以降、よく息子いじりをしやがる。
「そうだね、ちゃこ先輩が無事なら本望ですよ」
「と、いう事で、ウチの息子は何とも思って無いので気にしないで下さい」
「わ、わかりました……」
勢いだけで押し切りやがった……。
「という事で翔。私は明日の朝一で仕事があるので帰るから! 明日父さんが朝から来てくれるから警察はその時に行ってね」
そう言ってさっさと帰って行った。
「「「…………」」」
「と、ともかく。母さんもああ言っていたので、気にしないで下さい」
「「わ、わかりました……」」
◇◆◇◆◇◆◇◆
それから色々と遅くなったので、泊まる事になり。ご厚意で通された部屋に戻ると雨音が来ていた。
「おー終わったか、どうだった?」
「いきなり母さんが着てびっくりしたよ」
「は?」
「様子見に来たんだって、明日の仕事あるから速攻帰ったけど」
「何というか、豪快だな……」
「あぁ、元気にしてたけど心配させちゃっただろうからなぁ……」
「ともかく良かったじゃねーか、それで、俺は風呂に行くけど……翔は入れるのか?」
「いーや、入れない、という事で後で洗面所で頭を洗うわ、手伝ってくれ」
「そうか……ふむ、わかった――後でな」
少し何かを考えた雨音は、そのままお風呂へ向かって行った。
「さて、暇だな……身体はボディーシートでどうにかなるけど……頭が整髪料使ってるから気持ち悪いんだよなぁ……」
雨音が帰ってくるまで暇なのでスマホのソシャゲを始める、デイリー消化だけはやっておかないと……。
「——♪♬♫♬~」
テーマソングを鼻歌交じりに画面をタップしていく、そろそろ雨音が帰って来るかな?
――コンコン。
「はーい! 雨音かな? 入ってどうぞ~」
「お、お邪魔しま~す」
「え?」
◇◆◇◆◇◆◇◆
「どうしてこうなった……」
俺は今、行衣(滝行とかで着るあの白い服)を着て何故か女湯に居る。
「ほら~喋ると泡が入るよ~」
しかもとても上機嫌な真白に、頭を洗われている。
「痒いところは無いですか~?」
(その台詞は泡が口に入らないような状態でしてもらいたいんだけど!!)
とりあえず大丈夫なので指でOKマークを作る。
「良かった! それじゃあ流していくからね~」
上手に頭へ水がかけられ泡が流されていく。
「ふぅ……さっぱりした、ありがとう真白」
そう言うと、同じ様に行衣を着た真白が笑う。
「どういたしまして、それで翔君はトリートメントとかしない派?」
「うーん、いつもはするけど……流石に悪いし」
「いいよ~それくらい。じゃあやっちゃうね……」
そう言ってささっとトリートメントを髪に馴染ませていく真白、ついでにマッサージもしてくれてるので非常に気持ちが良い。
「いやー気持ちいいなぁ~」
「フフフ……良く檸檬ちゃんにも最高と言われる私のハンドテク、堪能したまえ!」
◇◆◇◆◇◆◇◆
「さて、それじゃあ洗い流そうかな~っとおぉ!?」
「危ない!」
蛇口へ手を伸ばした真白が大勢を崩す。
それを庇う様に片手で真白を引っ張る。
「「うわあぁぁぁぁぁあ!!」」
軽い衝撃と共に、柔らかい感触が顔を覆う。
「「!?」」
「いでええええええええ!?」
トリートメントが目に入り目に染みる、腕の痛みは催眠術でごまかしてるけど目の方は痛くて仕方ない。
「わわっ、翔君待って! っひゃう!?」
なんか触っちゃいけない感触をまさぐりながら蛇口を探す。
そうしてお湯を出して顔を洗う。
「ひゃああああ!?」
「ゴメンまし……ろ……」
視界が戻り真白の方を見ると、ずぶ濡れになって色々と、見てはいけないものが見えている真白が居た。
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