第44話:かき氷

なにやら、ちゃこ先輩に連れられて皆が戻って来た、時間にして20分位の時間だったがかき氷を買って来る合間に終わっていたらしい。


「やー佐伯君、ご苦労ご苦労~」


「全く……先輩は人使い荒いですね……」


「良いじゃないか~それに皆、ただ待っていただけじゃないんだよ」


「そうなんですか?」


「あぁ、なんとこの神社の御祈祷を受けて貰ったのさ!」


「へぇ……何か変わるんですか?」


「まぁ、運が良くなる位だね。深い意味はあまりないよ」


あっけらかんとして言う先輩、でもこの神社って縁結びだよな?


「まぁ、女子には人気でしょうからね」


「そうなんだよ~全国から人が来る位だからね」


「それは、凄いですね」


「そーなんだよ! でも皆黙っちゃっててさ~」


「あはは……それはまぁ……」


なにやら端に固まってぶつぶつ言っている、周りの人も若干引いている感じがするが触らぬ神に祟りなし、ちょっと遠巻きで見ておく。


「それで、かき氷、どれ食べます?」


買ってきたかき氷を見せると、先輩は悩み始める。


「そうだねぇ……私的にはブルーハワイが推しなんだけど……今日はいちごにしようかな!」


「まぁ味は全部一緒って言いますけどね」


「もー! そういう野暮は言わないの!」


そう言いながらいちご味を取っていく先輩。


「ほら皆! かき氷来たよ!」


そう言って皆の背中を叩いて行く先輩。


「ぴょ!? しょ、翔君!? いつの間に!?」


「いや、ついさっきだけど?」


「しょしょしょ翔!? 今の聞いてた!?」


「いや、何かぶつぶつ言っているのは聞こえたよ?」


「終わりだ……」


真白と檸檬が顔を抑えてしゃがみ込む、なんか真っ赤なんだけど。


「そ~だねぇ~どの味にしようかねぇ~」


いつの間にか復活してた蕾がかき氷を選んでいる。


「蕾はどの味にする?」


「それじゃぁ~メロンをお願い~」


「蕾はいつも通りか」


「そ~だねぇ~いつも通りだよ~」


めっちゃ手震えてるけどな……。


「せんぱーい」


「ん? どうしたんだね?」


「ちょっと持ってて下さい」


そう言ってトレーを渡す。


そう言って片手はかき氷、もう片手は蕾の手を取って手の上に置く。


「ぴょ!?」


「ほら、しっかり持たないと落ちるぞ?」


なんか小さな声が上がったと思ったら蕾が固まっていた。


「おーい、大丈夫か? 手を放すぞ?」


すると復活した蕾がわたわたともう片手で器を抑えた、俺の手ごと。


「あのー蕾さん、それだと俺の手が離せないんだけど……」


「おぉ!? そうだねぇ~」


「なら手を放してくれ……」


いつもなら見せない位の素早さで蕾の手が離れた、なんかそこまでされると悲しいな……。


「ともかく、落とすなよ?」


「はーい」


かき氷をやっと手渡して、先輩からトレーを受け取る。


まだしゃがんでる二人を尻目に、先程から難しい顔をしている藍那へ声をかける。


「藍那、どうした?」


「えっ、あぁ翔さん。どうかなさいましたか?」


「かき氷を買ってきたから食べるかなぁって」


「かき氷ですか! 私、屋台のかき氷初めて食べます!」


「そうか、なら味はどうする? いちごとブルーハワイとレモンしか無いけど」


「じゃあ、ブルーハワイがいいです!」


トレーを差し出すとブルーハワイの器をスッと取る。


「奇麗な青色ですね」


「香料が違うだけだから味は一緒みたいだけどね」


「そうなんですね、翔さんは何にするんですか?」


「んー残ったやつかなぁ……」


「だったら、一口交換しましょう。私初体験なので、そちらの味も楽しみたいのです」


「わかった、じゃあ配り終わったら少し食べていいよ」


「それならぁ~、私も一口いいかい~?」


とことこと蕾が寄って来る。


「良いけど蕾は食べた事あるんじゃない?」


「でも~少しは他の味も食べたいじゃんかぁ~」


「そうですね、あんまり食べ過ぎるとお腹痛くなってしまうでしょうから、少し交換しましょうか?」


「わ~い、じゃあ藍那ぁ~一口どうぞぉ~」


蕾ちゃんが藍那にあーんをする。


「ん~メロンの味ですね♪不思議です!」


「だよねぇ~」


「はい、では蕾さん、あ~ん」


「ん~美味しい!」


うん、女子二人の食べさせ合いは良いものだ。


「それで二人は、どうするんだ? 溶けちゃうから選んで欲しいんだけど」


「うっ……」


「これはどっちを選んでも私達の負けだよね……」


負け? 何が負けなんだろう?


渋々残りのレモンを真白が、いちごを檸檬が取る。


「ねぇ翔……翔の一口……」


「いや、真白と同じ味だろ? なんでさ?」


「あはは~だよね……」


「うぅ……良いもん一気食いしてやる!」


ががっと真白が掻っ込む、案の定痛みに悶える。


「ぐおおおおおお~」


女の子が出しちゃいけない声してるけど良いのだろうか……。


「ほら真白、こっち向け」


「ふぇ?」


こっちを向いた真白の額、に残りの分の俺のかき氷を当てる。


「少しは、良くなるだろ?」


「ひゃ、ひゃい……」


「無理に一気に食べるなよ。頭痛くなるし」


「ひゃ、ひゃい……」


そう言った直後真白が残りを掻っ込んでしまった。


そしてまた悶えるので食べてる途中だけど、頭に当ててあげる。


「あぁ、ほら。言わんこっちゃない……」


そんな事をしていると檸檬がジト目で見てきた。


「ど、どうした檸檬?」


「いーや、なんでもないですよ〜」


檸檬がぷいっとそっぽを向く。


(あ、まさか真白が全部食べちゃったから?)


「あ、そうだ、檸檬」


「何?」


スプーンでひと口分を掬って檸檬に向ける。


「はい、あーん」


「!?!?!?」


「ん? どうした、食べないのか?」


「え? ちょ!? ええっ!?」


「ほら、ひと口あげるから、ひと口くれない?」


「えっ? えっ?」


「あー重い……早くしてぇ……」


「えっ? えっ?」


「は〜や〜く〜」


そのまま空いた檸檬の口に突っ込む。


「んん!?」


「どう? 美味しい?」


檸檬が真っ赤になってコクリと頷く、良かった良かった。


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