第37話:勉強会の提案
ちゃこ先輩に教えて貰った翌日、中庭での昼食のとき、大欠伸をしていた。
「翔君? 大丈夫?」
「うん、思うより勉強がはかどってね……」
「そうなの?」
「しょーって、そんなに点数悪いのぉ~?」
「あーうん赤点ラインじゃないけど、出来ればいい点数とりたいなぁって」
「へぇ~やるじゃん、向上心は良い事だね」
ニヤニヤとしながら檸檬がからかってくる。
「檸檬は余裕そうだよね」
「まーねぇ~こう見えて私、特進クラスに入れるだけの実力はあるんだよ?」
「マジか……元々勉強できるのは知ってたけど、まさかそこまでは……」
「まぁ、真白や蕾には負けるけどね~」
「そ~だねぇ~体育以外なら私は大丈夫だよぉ~」
「確かに、あの走りを見たら体育のみが心配になるな」
「それに~真白は~次席だからねぇ~」
「マジか……凄いな真白」
「でもでも! 藍那ちゃんのが凄いんだよ! 藍那ちゃん主席だし!」
「いえいえ~そこまででは~元々いた学院の授業の進みが速かったので~」
少し照れながら答える藍那、そう言えば元々の学校、偏差値かなり高かったな。
「なんなん君ら……頭良すぎだろ……おれの仲間は雨音だけだ……」
「あーすまん、翔……その結束は果たされない……」
雨音が残念そうな顔をして言って来る、まさかお前も……。
「そうね、雨音のヤツこう見えて、学年上位に入る頭の良さなのよ」
弓場さんがしれっと俺を絶望に落とす。
「このブルータスめ……」
「すまんなカエサル」
ここには頭いいのしかいないのか……。
「そういや、先輩も頭良かったなぁ……」
机に突っ伏して溜息を吐く……くそぅ。
「先輩? って翔、お前上級生に友達なんて居たのか?」
雨音が不思議そうに聞いてくる。
「あーうん、最近というか昨日? 友達になったというかなんというか……」
「へぇ……何年生だ?」
「いや、この学校だけど、あっちだよ」
大学校舎を指差して答える。
「ほうほう、それでどこで知り合ったんだ?」
「先輩が俺の近所にあるコンビニのアルバイトをしててな、実家も同じ学区内で近所だったんだ」
「へーほーふーん、それでその先輩は女性か?」
雨音がそう言うと空気が一瞬、凍り付いた……様な気がする。
「まぁな、昨日も夜までみっちり教えてくれたんだよ、お陰で寝不足だ」
「女子大生のおねーさんかぁ~いいねぇ~」
「そんなんじゃ無いよ? 昨日も部屋で勉強してたけど特に何も無かったし」
――――ガタガタ!!
「ん? どうしたんだ皆?」
「い、いやぁ~特に何もぉ!?」
「そそそ、そうだねっ! 特に何も無いよ!!」
「そ~だよぉ~何も無いよぉ~」
「あぁ、特に何も無いぞ?」
いや、藍那はおかしいだろ。
「いやでも、藍那は裏人格が……」
「そ! そうだ! ちょっと虫が飛んで来てな!!」
「そーそー! 蜂! 蜂がネ!!」
「びっくりしたよぉ~」
「いや、大丈夫じゃ無いだろ……」
「大丈夫! もう飛んで行ったからな!」
「そうそう! 物凄い勢いだったね!!」
なんか皆が慌ててるが、大丈夫ならそれで良いか……。
「そ、そうか……飛んで行ったのなら大丈夫だね……」
「そ、そうだ! ジュース買って来るから! 先に戻るね!」
「あ、私も!!」
「そうだな! たまには庶民の飲み物を味わわなければ!」
なんか藍那さん、嫌な貴族みたいなこと言いだしてません?
「そうか、じゃあ俺も……」
「翔の分は私が買うから! この間のお礼って事で!」
檸檬が大慌てで割り込んでくる、まぁ良いか。
「わ、わかった……じゃあミルクティーを頼む」
そう言うと女子達が大慌てで行ってしまった、なんなんだ?
「なぁ、雨音。俺嫌われるような事したか?」
「はぁ……マジかコイツ。いいや大丈夫だ、じゃなきゃジュースを買ってきてくれる訳無いだろ」
「確かにそうか……」
「まぁ良い、戻ろうぜ」
「そうだな……」
首を傾げながら、俺は雨音と一緒に教室へ戻った。
◇◆◇◆◇◆◇◆
私達は自動販売機の前で作戦会議をしていた。
「まさか、翔君から女子大生の事が出るなんて……」
「そうだね……迂闊だった。まさかテスト期間中に……」
「大穴だったねぇ~」
「そうだな、思わず驚いてしまった」
ともかく私達の協定としてこれ以上は踏み込めない、仕方ないので提案をしないと……。
「ねぇ皆、ここは手を組みましょう」
「そうだね」
「あぁ、その方が良さそうだな」
「そーだねぇ~」
◇◆◇◆◇◆◇◆
「という訳で、勉強会をします」
「勉強会?」
「そうきたか」
「妥当ね」
「そう! 皆で翔の勉強を見るの、それに私と真白はよくやってるから、皆もお互いの苦手部分の解消に良いかと思ってね」
「それは確かにありがたいが……良いのか?」
「翔、そう言ってやるな……皆お前が勉強したいって言ってるからなんだぞ?」
隣で聞いていた雨音が心配したように言って来る。
「そうね、私も良いかしら?」
「ひとみんもいいよ~皆で勉強した方が効率も良いだろうし!」
「それじゃあ、頼むわね」
「それに~テスト明けに皆でお祭りに行く予定だし~」
檸檬がニヤニヤしている、というか良いのか? 部活とか……。
「あぁ、部活なら問題ないぜ。夏休み前の最後の息抜きって、お祭りのある週は練習時間も短めになってるからな」
「そうなのか、なら夏休み前に皆で遊べる機会だし頑張るか……」
「わーい!」
「頑張りましょうね、佐伯君」
「マジで頑張れよな……」
なんか雨音だけトーンが違うが、そこまで心配しなくて良いのに……。
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