第13話:買い物デート②

全員が合流してショッピングモール行きのバスへ乗る、休日って事もあり車内は満員だ。


それもあってか俺、真白、蕾の三人が先に乗ることに。


「真白……蕾……大丈夫か?」


「あはは~大丈夫だよ~」


「はわわわわわ……」


奇しくも腕を突っ張って、なんとか空間を確保している状態だ、そのせいもあって真白に対しては壁ドン状態になっている。


「ごめんな、恥ずかしいだろうから、下を見ててくれ……」


「いっ、いえ! 大丈夫です!」


その時、大きなカーブで体重がかかって来た。


――ドンッ!


「おわぁっ」


「ぷぎゅっ」


「!?!?!?!?」


突っ張りがずれて肘立ての様な状態になってしまった。


必然的に真白の顔が、前面に迫り豊満な胸が俺の鳩尾辺りで形が歪む、だがそれよりもヤバい事が。


「おい、蕾。生きてるか?」


俺と真白にサンドイッチされた状態の蕾へ声を掛ける。


「いふぃてるよぉ~(いきてるよ~)」


「お前、それ苦しくないのか?」


「ふぁいじょーふ(大丈夫)! ふぁひろのおおはは、いいふっひょんふぁから~(真白のお腹が、良いクッションだから~)」


「ちょ!? 蕾ちゃん!?」


真白のお腹に顔を当ててもごもご言う割と大丈夫そうだ。


「もし辛くなったら早めに言ってくれ」


「わふぁっふぁ~(わかったぁ~)」


一つ目の問題が解決したのは良いが次の問題だ……。


(さっきから真白のおっぱいが俺で潰されて、その度に真白が艶めかしい声を上げるんだ……)


しかも顔の距離も15cmあればいい方で、少し真白の方を向いたら息がかかる距離である。


ふとこちらを向いた真白と視線が交差する。


「あ、また翔君がエッチなこと考えてる顔してる……」


そのタイミングで小さく呟かれた言葉と息が耳に届く、破壊力やべえぇ。


「すまん、言い訳出来ない……」


「へぇ~じゃあ皆に言っちゃおうかな~翔君が満員のバスでエッチな顔して私にもたれ掛かってたって~」


いたずらっ子の様に、ニヤニヤしながら小さく囁くような声で喋る。聞きなれない真白のささやき声に顔が熱くなる。


「それはやめてくれ……俺の高校生活が、変態として終わってしまう」


「仕方ないなぁ~」


そんな時、ニヤニヤしてる真白へ、カーブによってさらに背中を押し込まれた俺が近づく。


「「——っつ!?」」


先程迄15cmあった余裕は5cmまで小さくなった。


一瞬視線がぶつかり合い、気恥ずかしさから逸らす。


(やべえやべえやべえ……)


互いの心臓がバクバクしてるのか、俺の心臓が痛い程脈打ってるのかわからないが、ともかく先程からタップしてる蕾が俺を冷静にさせてくれた。


「ん゛ーー!! ん゛ーー!!」


「わわっっ、ごめん蕾ちゃん!?」


「大丈夫か!?」


「さすがにぃ~死ぬかと思ったよぉ~」


そうこうしてる間に、バスがショッピングモールへ到着した。


◇◆◇◆◇◆◇◆

「おまたせ~!!」


そうして後発の便に乗って来た檸檬達も合流して、オリエンテーションの買い出しが始まった。


「まずは、日用品から見ちゃおうか?」


「賛成」


「服とかは後で良いもんね~」


「そうだね~一番買う物多いからねぇ~」


「そうね、共通して買い揃えるものからが良いわね」


「俺は殆ど揃えちゃったからどこでも良いぜ」


「檸檬さんと密着、檸檬さんと密着ハァハァ」


真白の言葉に頷く皆、そして由愛は正気に戻れ。


「あでっ、お兄ぃ酷い!」


由愛の頭に軽くチョップを入れて正気に戻す。


「ほら、行くぞ、はぐれない様にな」


「はーい……全く、急に兄貴面して……」


由愛がぶつぶつ独り言を口にしながら、皆へ近づいて行った。


◇◆◇◆◇◆◇◆

とまぁ長々と現実逃避をしたが向き合わなきゃいけないよなぁ……。


と、いうのもワゴンセールの開始案内と共におばさま達に突き飛ばされた俺は、踏ん張りがきかず更衣室に突っ込みで絶賛下着姿の真白を押し倒してるからだ。


生憎、檸檬たちは。別フロアーにあるスポーツ用品店でラケットの試し打ちをしている、蕾は同じ店内にいるのだが……おばちゃんの壁でここには来れないだろう。


「しょ、翔君……そろそろどいてもらっていい?」


下着姿の真白が申し訳なさそうに言って来る、薄いピンクで少し豪奢ごうしゃなデザインだ、多分サイズ的に子供向けがあまりないのだろう。


「思考を遠い過去に飛ばして現実逃避をしていた……すまん」


「???」


まぁそんな顔になるよな……。


目を瞑り後ろを向く。元々広めの試着室なので二人は入っても大丈夫なのだが、カーテン一枚が無いとこんなにも気まずくなるのか……。


「ああっ……!!」


真白の軽い悲鳴と共に俺の左手に何か落ちてきた、それを掴むと、何か理解してしまった。


「しょしょしょしょ翔君!? それ返して!!」


「すすすすすまん!!」


何でパンツまで脱いでるんだよ!!


「あのあの! 最近下着もきつくなってきて……この際に一気に揃えちゃおうと思ったの! だからそんな全裸になる趣味とか持ち合わせて無いの!!」


早口で地雷原を駆け抜ける真白、何もそこまで自爆しなくても……。


「わかった……ともかく早く服を着てくれ……」


結局その後出れたのは、目の前のタイムセールワゴンが、すっからかんになった後だった。


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作者です!

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