小説を書き始めて、変わったこと

CO2

第1話

金曜の夜、彼は渋谷のスクランブル交差点にいた。コロナの規制もあけ、週末を楽しもうとする楽しそうな笑顔と歓声に溢れていた。神崎直人はうつむき加減で歩いていた。IT企業で働く彼は、20代で経済的成功を収めたものの、心にぽっかり空いた穴があることに時折気づいた。そんな日、彼は部屋の片隅でひっそりとため息をつき、その虚しさに苛まれた。


ある日、直人は仕事帰りに小さな本屋に立ち寄った。棚を眺めていると、一冊の本が彼の目に留まった。表紙には、美しい風景が描かれていた。彼は思わず手に取り、中をめくってみることにした。


物語に引き込まれ、直人はその場で立ち読みを始めた。彼は登場人物たちの感情に触れることで、自分の心の穴が少しずつ埋まっていくような気がした。読み進めるうちに、彼は物語の中で描かれる様々な感情に自分自身が共感し、感情移入していくことに気づいた。


彼が書いた物語には、同じ時代を生きるさまざまな立場、職業、年齢層の登場人物が登場した。


物語の中で、看護師は患者に寄り添い、その痛みを共有し励まし続ける姿に、直人は優しさや思いやりを学んだ。また、中年のサラリーマンが家族や友人との関係を大切にし、困難に立ち向かっていく姿から、彼は人生の意味や価値を見つけることができた。


高齢の店主が自分の店を守り抜き、地域の人々との絆を育んでいく様子を見て、直人は年齢を重ねることの素晴らしさと、人々との繋がりの大切さを感じた。


物語を書くことで感情が豊かになった直人は、自分の周りの人々との関係も変わり始めた。かつては感情を表に出さず、他人と距離を置いていた彼が、同僚や友人たちとの会話を楽しむようになっていた。特に、彼の同僚である明美との関係は、物語を共に書くことで心の距離が縮まり、お互いを理解し合うことができるようになった。



彼は物語の登場人物たちの感情を共有し、体験することで、自分の心にも変化が訪れていた。その結果、直人は人々との繋がりを大切にし、感謝の気持ちを抱くようになった。


そしてある日、彼は部屋の片隅で改めてそのことに気づいた。以前は寂しさや虚しさに苛まれていた彼の心には、今では物語を通じて育まれた感情や人々との繋がりが溢れていた。彼は心から満たされていることを実感し、喜びに満ちた。


彼は自分の成長を明美にも伝えた。彼女は彼の変化を喜び、一緒にこれからも物語を書き続けることを約束した。直人と明美は、物語を通じて人々の心に届くメッセージを伝えることができると確信していた。


ある日、彼らは小説投稿サイトに作品をアップロードすることにした。初めは誰もが緊張したが、次第に彼らの物語は評価され、多くの読者からのコメントや応援が寄せられるようになった。それを見た直人は、自分の人生が充実し始めたことを改めて実感し、喜びに満ちた。


「直人くん、おめでとう。君の小説、本当に素晴らしいよ。これからも書いてね。」


明美の言葉に照れながらも、彼は感謝の気持ちを伝えた。かつては自分にとって遠い存在だった彼女との距離が、物語を通じて縮まっていくことに心から喜んだ。


彼の小説が評価されるにつれ、彼はさらに多くの読者と繋がり、その交流を楽しむようになった。彼は初めて、自分が生きているという実感と幸福を感じたのだ。


彼は部屋でひとり、その日の出来事を振り返りながら、濃厚な抹茶とクリーミーなミルクが見事に調和した、魅惑の抹茶ラテを目の前にした。彼は一口飲むと、その独特な苦みとまろやかさが舌を刺激し、一度飲んだだけで病みつきになるような味わいが心地よく広がった。彼は思わずもう一口と手を伸ばし、ほっとする瞬間を楽しんだ。


そして、物語を書くことで自分の心が豊かになったこと、人々との繋がりが深まったことに改めて感謝の気持ちを抱いた。


彼は小説投稿サイトにお礼のメッセージを書き込み、自分の感謝の気持ちを伝えた。これからも物語を書くことで、自分自身が成長し、人生がさらに充実していくことを信じていたが、同時に他人の喜びや苦しみに寄り添い、彼らの成長にも貢献できることを願っていた。


次の物語を書くため、彼は新たな登場人物を思い描いていた。


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