第57話 山賊狩り

 翌日。解放した元騎士団の方々と一緒に山賊の討伐に向かっている。


 エガンさんから聞いた話では、この辺は昔、森に囲まれた肥沃な土地だったが、水害後、森の様子が一変し、そのせいで魔物が多く出没し、村も困窮、さらに山賊が出没するようになり、このままでは村は壊滅してしまうという。


 山賊たちはもともと他の村の住民だった者も含まれるが多く水害後に他所の地域から流れてきたのだという。


「あの水害はこの地域を中心に大きな被害を出しましたからね」

「そうなんですね。で、山賊の勢力はどうなっているんです?」


「勢力的には三つ。ゴンバ団、ジャブガ団、それから我々だ。我々とて言えた義理はないが、両団とも口に出せぬほどの悪行を重ねている」


「なるほど。では、作戦通りに動いていただけますか?」

「いや、タイチ殿。その作戦がうまくいくとは思えぬのだが」


「あははははは。そうですよねえ、まあ失敗した時は力押しで行きましょう」


「なあアリア殿」

「あら、どうされました? キメナ様」

「あ、ああ。タイチ殿はいつもあのような?」

「え? ああ。そうですねえ。あんな感じです。面白いですよね。渡り人なのに全然威張ったりしない、そして村やこの地域の人のために動いてくれています。我々は感謝しかありません」

「そうか。あ、アリア殿。私に対して敬称は必要ない。今はただの山賊だ。呼び捨てで構わんよ」

「うふふふ。キメナ様も相当に変わってらっしゃいますね」

 ニコニコしながら返事をし


「大丈夫です。タイチさんが立てた作戦が失敗したことはありませんから」

「全幅の信頼を置いているのだな、アリア殿」

「ええ。タイチさんですから」


「なあタイチ、せっかく捕まえたのになんで逃がしたんだよ、しかも食い物まで持たせてよお」

「作戦ですから。ロイさん、いつまでもそんなに言わないでくださいよ」

「だってお前、俺の朝飯だよ。俺が楽しみにしていた朝飯だよ」

「ロイさん、しつこいですよ、終わったらちゃんと食べさせますから」

「ほんとうだな?! 本当だな!!」

「はいはい」

「あるじい。わたしも?」

「ああ、シャーリー。もちろんだよ、終わったらいっぱい食べようね」

「うん! シャーリーはがんばるぞ!」


「さて、じゃあそろそろ行きますか」

 討伐隊を前にして声をあげる。

「これより元騎士団長キメナさんの部隊とともに山賊の討伐を行います! 皆さん、よろしくお願いします!」


「よし! 行くぞみんな!」


「「「「「「おおー!!!!」」」」」


「タイチ」

「はい、なんでしょう、キメナさん」


「威勢よく声はかけたが私たちは山賊を捕まえるための罠を仕掛けるだけで戦わないんだよな?」

「いやまあ、そうですね。ただ作戦が失敗した時には戦うことになりますから」


 納得のいかないキメナだった。

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