第31話 いや図鑑コンプとか夢じゃん!

「ディレウルフ、でございますか」

「そうなんだよ、ルーク」


「まああやつなぞ頭が二つあるだけのただの狼で」

「え?」


「コホン。あ、いえ、申し訳ございません。ディレウルフだけではなく、魔物全般の知識を得られる方が今後有効かと思われます。少々お待ちくださいませ」


「相変わらずルークはすごいなあ。そうだよね、特定の魔物だけの対処法じゃなく魔物全般の知識を持っておく方がいいよね」

 出されたお茶を飲みながら独り言ちる。


「タイチ様。こちらを数冊チョイスいたしましたが」

「ん? なにか問題が?」


「はい、少々申し上げにくいのですがタイチ様の図書券スキルがまだ上がっておりませんので、こちらの魔物全集がコンプリート出来ていない状態でのお渡しになってしまいます」


「なにそれ、めっちゃおいしいじゃん!」

「は?」


「いや、レベルが上がると図鑑が埋まっていくとか? その魔物を倒したらそのページに書き込まれたりとかってことでしょ?」


「左様でございます」


「すばらしい!!! あ、ごめんなさい。いや、ルーク、それ最高じゃない。図鑑をコンプリートしていくなんて、面白いよね、きっと!!」

「タイチ様がよろしければ」


「いいよ! 絶対その方がいいよお!!」

「安心いたしました。私、まだまだタイチ様のことが理解できておりませんでした、申し訳ございません」


「いやあ、ぜんぜんだよ。ルーク、これからもよろしくね」


「はい、タイチ様。ところでタイチ様、これまでにお出しした図書の感想などお聞かせ願いますか?」


「感想?」


 まず最初が沈殿槽、それから食料に関する本、魔獣と戦うための本か、ここまでしっかり読み込んだ本もなかなかないし、しっかりとルークに感想を聞かせた。


「タイチ様。おめでとうございます! 図書券レベルが上がりました」


「お? そうなの?」

「はい。そしてレベルアップボーナスとして選択できる図書の種類が増えました。さらに『速読』スキルが追加されました」


「おおっ!」

「ではさっそくこちらの魔物大全と基礎魔法Ⅰになります」


「ん? 基礎魔法Ⅰ?」

「はい、前回お渡ししましたものは単独の魔法書でいわゆるスクロールというものでございます。レベルも上がりましたことですし、タイチ様には魔法の基礎から学んでいただくほうがよろしかろうと考えます」


「あの辞書みたいに分厚い本、そっか、あれ使ったら一枚ずつ無くなっていくタイプなのか。あ、うん、そうだね。ありがとうルーク。しっかり勉強するね、はい、じゃあ図書券!」


「ありがとうございます、タイチ様。ディレウルフごとき、タイチ様の魔法で問題なく対処できると存じます。どうぞまたそのお離しもお聞かせください」


「うん! じゃあまた来るね! ありがとうルーク」

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