髪屋で髪を買った話
「人生を豊かにするには、まず身の回りから」という言葉を聞いたことがあった。
社会に出て、人生を豊かにする余裕など忘れかけていたある日の事だった。
その日の仕事終わりは、いつもと違う道を歩いていた。
特に理由があったわけではなかった。
そしてふと見かけた『髪屋』に入った。
普段、髪を飾ることなんてなかったが店内に入ると色鮮やかな髪が売られていた。
黒髪、茶髪、金髪、珍しいピンク色の髪。
巻き髪、ツインテール、ボブ、その他にも僕の知らない種類の髪々があった。
僕はその中から少し緑がかったアッシュグレーのポニーテールを手に取った。
人生に彩りを加えたくなったのだ。
その日から、僕の頭にはポニーテールが飾られた。
まさか自分なんかが髪を飾るとは思ってもいなかったが、鏡で見ると殺風景な頭に綺麗なポニーテールがあるだけで、頭部が明るく見えた。
手入れも定期的にした。
店員に言われた通り、週に1度はトリートメントをした。
そうすると、髪にキューティクルが生まれ、毛先もしっかり開いた。
たまにはヘアゴムをアレンジして、まとめ方を変えて遊んでみたりもした。
職場の同僚からは「おっ、いい髪飾ってるじゃん。」などと話しかけられ、僕はすっかり髪の虜になったのだった。
それからは、髪屋に行く度に色んな種類、色んなカラーの髪を買って飾るようになった。
全体のバランスを考えながら、ポニーテールとツインテールと三つ編みを束ねてみた日には、まさに注目のまとだった。
後から聞いたことだが、その頃の僕は「頭がお花畑のやつ」と言われていたそうだ。
ありがたいものだ。
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